時間切れ!倫理 93 六師外道
プリントには自由思想家たちの登場とありますが、バラモン教から自由になって解脱の道を探った人たちと考えてください。これを六師外道(ろくしげどう)といいます。6人の宗教家がいましたよ、ということです。外道とは、道を外れた連中ということで、あまり良い表現ではありません。これは仏教側からの呼び方です。バラモン教ではない解脱の方法として、一番素晴らしいのは我々仏教だと仏教側は考えているので、仏教ではないやり方で解脱を試みたバラモン教以外の人々を、外道と呼んだのです。仏教側からの偏った呼び方なのだけれども、こういういい方しかないので、これで覚えておいてください。 六師外道のなかで最も有名なものにジャイナ教の開祖はマハーヴィーラがいます。別名ヴァルダマーナ。ヴァルダマーナは尊称で「勝利者」という意味です。「輪廻に勝利した」ということです。
ジャイナ教は現在もインドに信者がいます。ジャイナ教の教えを簡単にいうと、極端な苦行と不殺生です。生き物を殺すな、というのは仏教も教えますが、ジャイナ教は徹底している。ジャイナ教徒の写真があるのですが、必ずマスクをしています。息を吸って小さな虫を吸い込んで殺すことを恐れるからです。道を歩く時はほうきを持っています。ほうきで道を掃いて、蟻や小さい虫がいないことを確認しながら一歩ずつ進んでいきます。 しかし歩いているようでは、ジャイナ教としてはまだまだ甘い。ものすごいジャイナ教のお坊さんは歩きません。掃き清めて、地面の上に蟻がいないとしても、地面の下にミミズがいるかもしれない。自分が踏み出した一歩の重さで、地下のミミズが死んではいけないので、歩きません。座ったまま、一歩も歩かないジャイナ教の僧侶の写真を、見たことがあります。
どうやって生活をするのか。こういう極端な修行者がいると、インドでは村の人々がお布施をします。「お坊さんすごいですね、食べてください」と食事を持ってきてくれる。そういうお布施で生きていく。インドはそういう世界です。不殺生は絶対なので、当然肉も食べません。植物でもキャベツのような葉菜を切って食べることもありません。植物も命ですからね。食べていいのは木の実や穀物、実が成って落ちてくるもの、これは食べてもいい。
インドでは菜食主義者がすごく多い。本来は仏教もそうですが、肉を食べません。牛肉はもちろんですが、基本的には生き物を食べない人が多いのです。これは不殺生の考え方から生まれます。不殺生の基本は動物愛護ではなく輪廻ですね。輪廻を信じていれば不殺生になります。自分の腕に止まって血を吸っている蚊が、去年死んだおばあさんの生まれ変わりだと思ったらパチンと叩いて殺すことはできません。レストランで頼んだステーキが、5年前に交通事故で死んだ妹が、生まれ変わった牛かもしれないと考えたら、食べることはできませんね。これが不殺生の意味です。
このようにバラモン教ではないやり方で輪廻からの解脱を目指す宗教が様々生まれたのですが、その中の一つが仏教です。