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{ 25: 夢の続き }

{ 第1話 , 前回: 第24話 }

その日の夢は、いつもとちがった。家族ともども穴の底で焼き殺されるのにちがいはないが、その後の話だった。春樹は、悪夢の続きを初めて見た。短い一幕だった。

春樹は、穴の底で横たえていた。春樹を焼きつくした火はすっかり消えて、真夏のあせばむ夜でも土は冷たいくらいだった。父、母、弟……かつて春樹の家族だった三つの炭は、すでに土よりも黒く、冷たくなっていた。水分を失ったせいで、みんな人形のように体が縮んでしまった。

白い装束の女が、春樹を見下ろしていた。暗がりの中では顔もよくわからないが、血だまりのような赤い眼球だけは、雲のない夜の月と同じに見えた。

「ここにとうを建てろ」
 女は言った。

「とう……?」

「大きな大きな建物だ。そいつをこの穴の上に建てるんだ。できるだけ高く、雲さえもこするほどに。限界をえても、なおその上を目指せ。何百年かかってもいい。千年かかったところでかまわない。どんなに月日を要しても、必ず建てろ。それまでお前さんは死ぬことができない」

「わかった」
 春樹は言った。

「よくぞ!」
 女はけたたましく笑った。
 その声を聞きつけて、村人たちが起きてこないか春樹は心配だった。
「よくぞ言ってのけた!」

女が足をあげた。何をするつもりだと思う間もなく、女の裸足はだしが春樹にせまった。女がつぶすと、春樹の頭が陶器とうきのようにこわれた。春樹は、なにも見えなくなった。

「お前さんは、死ぬことができない」

最後に女はそういい捨てて、その場から立ち去った。夢は、それで終わりだった。


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