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{ 25: 夢の続き }
その日の夢は、いつもと違った。家族ともども穴の底で焼き殺されるのに違いはないが、その後の話だった。春樹は、悪夢の続きを初めて見た。短い一幕だった。
◇
春樹は、穴の底で横たえていた。春樹を焼きつくした火はすっかり消えて、真夏の汗ばむ夜でも土は冷たいくらいだった。父、母、弟……かつて春樹の家族だった三つの炭は、すでに土よりも黒く、冷たくなっていた。水分を失ったせいで、みんな人形のように体が縮んでしまった。
白い装束の女が、春樹を見下ろしていた。暗がりの中では顔もよくわからないが、血だまりのような赤い眼球だけは、雲のない夜の月と同じに見えた。
「ここに塔を建てろ」
女は言った。
「とう……?」
「大きな大きな建物だ。そいつをこの穴の上に建てるんだ。できるだけ高く、雲さえもこするほどに。限界を超えても、なおその上を目指せ。何百年かかってもいい。千年かかったところでかまわない。どんなに月日を要しても、必ず建てろ。それまでお前さんは死ぬことができない」
「わかった」
春樹は言った。
「よくぞ!」
女はけたたましく笑った。
その声を聞きつけて、村人たちが起きてこないか春樹は心配だった。
「よくぞ言ってのけた!」
女が足をあげた。何をするつもりだと思う間もなく、女の裸足が春樹に迫った。女が踏み潰すと、春樹の頭が陶器のように壊れた。春樹は、なにも見えなくなった。
「お前さんは、死ぬことができない」
最後に女はそういい捨てて、その場から立ち去った。夢は、それで終わりだった。