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かなもと
2021年4月1日 19:18
あらすじ:月美は、木土往還宇宙船強奪事件に巻き込まれた。そして、犯人のユエが船内の空気を抜いたせいで、死にかけている。{ 第1章, 前回: 第64章 }◇どれくらい時間が経ったのだろう? 水面に落ちた羽虫のようになすすべなく宙を漂って、もうだいぶ時間が経った気がする。二、三時間はたっただろう。意識はうつろい、ぼんやりと覚醒しては、また朦朧としていくのくり返しだった。まだ死んではいない。
2021年4月11日 18:54
あらすじ:月美は、木土往還宇宙船強奪事件に巻き込まれた。{ 第1章, 前回: 第65章 }◇ふたり並んで階段をのぼりながら、月美はユエと話したことを彦丸にも話した。「ユエは操舵室にいるよ。」「だろうね。」「操舵室はどこにあるんだ?」「中庭の近くにあるエレベーターから行ける。」「そのエレベーターは止まっているだろう? ほかに道はないのか?」「あるけど、その通路も中
2021年4月17日 16:08
あらすじ:強奪された木土往還宇宙船で、月美は彦丸と再会した。強奪犯のユエをとめるため、ふたりで船の操舵室に乗り込もうとしている。{ 第1章, 前回: 第66章 }◇ハザードランプの赤い光が操舵室を錯綜し、警報ブザーがキれた赤ん坊のように鳴っていた。なにが起こったのかわからず、ユエはその場で固まった。「火災警報です。」というハルルのひと言で頭が真っ白になった。火事になるだなんて想
2021年4月18日 19:27
あらすじ:強奪された木土往還宇宙船で、月美は彦丸と再会した。強奪犯のユエをとめるため、ふたりで船の操舵室に乗り込もうとしている。{ 第1章, 前回: 第67章 }◇月美と彦丸は、中庭を抜けて操舵室の近くまでやってきた。エレベーターは止まっていたので、月美たちは階段と廊下を迂回して、ここまで来なければならなかった。不思議な道だった。さっき階段を昇ったというのに、別の階段を降りなければなら
2021年4月23日 18:56
あらすじ:強奪された木土往還宇宙船で、月美は彦丸と再会した。強奪犯のユエをとめるため、ふたりで船の操舵室に乗り込もうとしている。{ 第1章, 前回: 第68章 }◇彦丸が操舵室に突入すると、ユエはそこにいた。でも、そこは操舵室じゃなかった。「これはなんだ?」 彦丸は言った。真っ暗な部屋にユエがひとりで漂っていた。ユエがいる、それだけだ。「何も見えないぞ?」うしろをふり
2021年4月24日 20:12
{ 第1章, 前回: 第69章 }◇ネルソンは、滝の淵に立った。足元で川が唸り、水が真っ逆さまに落ちていく。ナイフでえぐったような谷があり、爆撃のような飛沫をあげる滝壺が、底にあった。見渡せば、乾いた大地に草木が生い茂り、それがどこまでも続いていた。草原に果てはない。ネルソンが本当にいる場所は、ルナスケープ社の会議室だ。滝は、仮想空間で再現しただけの映像にすぎない。でも彼はとても気に入
2021年4月25日 19:32
{ 第1章, 前回: 第70章 }◇彦丸と再会してからというもの、月美の時計の針は、加速しながら回転しているようだった。まるで誰かにいたずらされているみたいだ。でも楽しい時間ほど早く過ぎるのは、小さいころから変わらない真実だった。あの事件以来、月で過ごした日々は、月美にとって二番目に楽しいものだった。彦丸と会える機会は少なくなったし、いっしょに望遠鏡をつくっているわけでもないけど、それ