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徹底分析:劇団ノーミーツ 「門外不出モラトリアム」をNYから観劇した感想。
エンタメ業界やソーシャルメディアで話題になっている、オンライン演劇。
わたしもダンサーを志すものとして、なにか今後のわたしにとってもヒントになるものがあるかもしれない、きっとこの試みはいま観ておくべきだろう、と思い観劇することにしました。
劇団ノーミーツを立ち上げた広屋さんとは、じつは一度だけニューヨークでお会いしたことがあります。
本日は、NYのエンタメを見尽くす旅をしている広屋さん@hiroyayuki とお会いしました!
— Kanami Kusajima (@khainnaamtia) January 15, 2019
お寿司を食べながら、広屋さんの今までのエンタメ企画戦略のお話などたくさんお聞きしました🔥
さとしさん@satoshi_gfa18やトシさん@goemonfromjapan と親しいと聞いてびっくり!やはり世界は狭いですね! pic.twitter.com/wo3HHgCLM3
今日はありがとうございました!
— 広屋佑規 / 劇団ノーミーツ (@hiroyayuki) January 15, 2019
ダンス留学で4年生大学に通うなんて行動力が本当に凄いなと…!こちらこそニューヨークのダンス業界事情知れて楽しかったです!
ぜひまた、次は一緒に企画出来たら良いですね! https://t.co/4Uy5nGUK4A
ニューヨークのエンタメをじかに見て勉強し、日本のエンタメに生かすのだと、その熱意はとても印象的でした。その後、屋外ミュージカルのアウトオブシアターなど、日本でさまざまな企画をされていて、いつも陰ながら応援していた矢先での今回のオンライン公演。やっと広屋さんのつくるエンタメがみられる...!と、さらに楽しみになりました。
ということで、今回は観劇の流れに沿って、オンライン演劇の体験について書いていきたいと思います。
<開場~開演前まで>
24日、21時からの千秋楽のチケットを購入。NYと日本の時差はいまは13時間なので、あさの8時から開演という計算...寝坊はできないと思い、余裕を持って7時に起床。
メールで送られてきた動画配信サイトのリンクへいくと、開演前の注意事項などが流れています。通信状況が悪くなったときの対処法や、バッテリー充電の呼びかけなど、配慮が行き届いていました。
不思議な感じ。朝ごはんを食べながら開演を待つ演劇なんて、今までだれが想像したでしょうか。笑
開演直前には、登場人物の一人である学長さんから、あらためて注意事項と通信トラブルの対処法などについてアナウンスが入ります。ここで改めて思う。これって本当にライブなのだなぁと。
<前半 (開演~休憩まで)>
いよいよ未知の領域、完全オンライン、リモート演劇が始まりました。
演者さんたちが演じる場所は、文字通りzoomの通話画面。それを観客は動画配信サイトのライブ機能を使って見守ります。
始まってすぐに、オンライン演劇ならではのおもしろさを実感。
劇を観ながら、常時コメント投稿ができる。
飲食OK、なんなら飲酒も喫煙も完全に自由。
写真撮影、スクリーンショットだって自由。 (※動画撮影はNG)
そして、演者さんが劇中でinstagramのストーリーをリアルタイム更新している... (役柄の一環として。)
...なんだこれは。
なんなんだこれは!!!
...ほんとうに、舞台で観る演劇とは何もかもがちがう。
いや、ちがうということはもちろん分かっていたはずなのですが、頭でちがうと分かっているのと、実際に体験するのもまた、全然ちがう。なんとも言えないおもしろい感覚です。
演出も、細かいところまで気が配られていて素晴らしかった。
場面が変わると、部屋の洋服やカレンダーが変わっていたり。
昼の場面と夜の場面では、窓から入る光の明るさがちがっていたり。
衣装や小道具も、季節感や場面の状況に忠実に合わせられていたり。
せまい部屋の中でできることは限られているだろうけれど、それを感じさせないくらいに場面転換がしっかりできていたと思います。
<休憩 (5分間)>
中盤になったところで、開演前のアナウンスをしてくれた学長役の演者さんが再び登場。
ここでお手洗いに行ったり、休憩したりできますが、学長さんは流れてくるコメントに反応しながらノンストップで喋り続けてくれますので、引き続き画面の前で待機している方たちも退屈することはありません。
(わたしは学長さんの声を聞きながらぱぱっとお湯を沸かして、お茶を入れました。笑)
いくら家でリラックスしながら見れるとは言っても、やはりこうやってちょっと目を休ませたり、席を立ったりできるの、観劇する側としては助かるなぁと思いました。(個人的には、ここの休憩10分くらいあってもよかったかな、と。)
<後半 (休憩~終演、カーテンコールまで)>
5分間はあっという間、すぐに後半が始まります。
前半と同様、細部に至るまでたくさんの工夫が。
たとえば、それまでは友達同士で呼び合うようなカジュアルな名前 (メグル、りょーいち、シンタロウ 、etc.)がzoom上に表示されていたのですが、大学の入学式の場面に戻ったときには、全員名前が漢字のフルネーム表記に変わっていました。
すごい、ちゃんと入学式のかしこまった雰囲気、緊張感が再現されている。なんだか感動してしまいました。(感動するポイントが細かすぎたかな。笑)
役者さんの、場面ごとの演じ分けも素晴らしい。
この脚本ではけっこう時間があちこちへ行ったり来たりするのですが、同じキャラクターを保ちつつも場面によって雰囲気が全然ちがう。カメラとの距離や角度も、ものすごく研究されたのだろうなぁと想像します。
紆余曲折を経てフルリモートの大学生活を送ったキャラクターたちが無事に卒業式を迎えたところで、劇は幕を閉じます。
映画のようなエンドロールが流れた後には、カーテンコール。一人ずつ役者さんが画面に映り、役名と名前を紹介してくれました。
そして、ライブ配信が終了。
新しいオンラインエンタメの千秋楽は、大成功で幕を下ろしました。
【千秋楽ありがとうございました!】#劇団ノーミーツ の旗揚げであり、Zoom演劇の長編生ライブ配信『#門外不出モラトリアム』。
— 劇団ノーミーツ (@gekidan_nomeets) May 24, 2020
見届けてくださりありがとうございました!
たくさんの応援、ご感想をいただき感謝でいっぱいです。おかげさまで最後まで駆け抜けることができました。 pic.twitter.com/jT397tdgdp
<まとめ:オンラインエンタメの可能性>
日本とは時差もあるし..と躊躇して、観劇を決めたのはけっこう直前になってからでしたが、観ることができて本当に良かったと思っています。
わたしもダンサーとして、舞台に立ってお客様に直接ダンスを届けられない状況下でもどかしさを感じる日々。限られた環境の中で自分になにができるかを考える上で、今回の劇団ノーミーツさんの挑戦は、わたしにとって大きなヒントになりました。
オンラインでは、呼吸や体温、空気感、気配、そういうものは伝わりきらないかもしれない。
それでも、工夫次第で可能性は無限に広がるわけで、生の舞台とは別物の、おもしろい何かを、オンラインならではの方法で届けられるかもしれない。
そしてこのオンライン演劇をきっかけに、劇場でも演劇をみてみたい!と興味を持ってくれる人だって増えるかもしれない。
ダンスという世界の中で、自分が今回の経験を具体的にどう活かすかについては、まだまとまっていませんが(いくつか案はあるけれど)、考えて、探し続けて、私もできるだけ早く、行動に移したいなと思っています。
最後に。
非常事態宣言が、全国で解除されたと聞いています。くれぐれも油断せず、みなさま安全にお過ごしください。ニューヨークより、引き続き日本にいるみなさんの無事を祈っています...!