真本音とは何か(3/5)
前回のインタビューでは「真本音度合い」が高まると人生の納得度が高まることについてお話を聞いてきました。今回は素質について詳しく聞いていきます。
6.成熟には素質の発見が必要だから
岡山:真本音度合いを高める必要がある理由の1つに「成熟には素質の発見が必要だから」があるとのことですが、「素質」とは何でしょうか。
竹内: 私は能力や才能を「素養」と「素質」という言葉で明確に区別しています。まず、「素養」についてはPCスキルや英会話など継続的な努力の末に手にした後天的な能力と定義しています。
一方で、「素質」は生まれた時から元々持ち備えている先天的な能力と定義しています。他の言葉では「才能」が近しい意味合いでしょうか。
しかしながら、個人や組織のサポートを行う中で、自分の「素質」を認知し、理解できている人は極めて少なく、さらに「素質」を活用できている人はほぼいませんでした。
英会話やプログラミングなどの画一的なスキルの習得が求められる現代では、「素質」を伸ばすのではなく、「素養」を身につけることに躍起になる方が本当に多いです。
その結果、組織や環境とのミスマッチが生じ、本来望んでいた生き方とは違う人生を歩んでいる人が多く見られます。
自分の歩んでいる人生に納得するためにも、まず自分自身の「素質」が何かを発見し、どの組織や環境が適切かを理解し、適材適所で輝くことが重要だと考えています。
6-1. 自分そのものへの確信が持てるから
岡山:「素質」を発見するために必要なこと何でしょうか。
竹内: 「素質」を発見するためには「真本音度合い」を高めることが必要です。「素養」は外部からの刺激への反応として蓄積されていきます。一方で、「素質」は準備が整うまで、自分自身の中に隠れている傾向が強いです。
「真本音度合い」が高まると本来の自然な状態の自分に戻るので、何が自分自身の「素質」なのかを感覚的に認知できるようになります。
「素質」を認知できると、どの組織や環境が当てはまりやすいかを落ち着いた状態で理解することができます。また、ミスマッチしている組織や環境に「反応本音」に囚われて合わせることが無くなっていきます。
このように段々と落ち着き、焦りが無くなっていくと自分そのものへの確信を持つことができるようになります。
「素質」は元々持っているものなので、少ない労力で伸びるものです。さらに「素質」と「素養」を一致させると、驚くほど成長していくものと考えています。
6-2. 自己理解と言動が一致するから
岡山:「成熟には素質の発見が必要だから」とのことですが、「素質の発見」と「成熟」はどう関係しますか。
竹内: まず「素養」を中心として生きている限り、「膨張」にあたる「成長」しかできないと考えています。本来持ち備えているものではないので、どうしても「成長」に限界があると考えています。
一方で、「素質」を中心として生きていくと、少ない労力でどんどん力が発揮されていくので、どこまでも「進化」にあたる「成長」、つまり成熟していくと考えられます。
ただし、ここで重要なのは自分の「素質」と当てはまりやすい組織や環境を自覚した上で、現実に活用していくことです。
「自己理解」が重要であることは、今の世の中で段々と認知されてきたかと思います。一方で、「自己理解」のみで満足してしまい、現実に活用することがない方も残念ながら多く見られます。
大切なのは「素質」を理解した上で、現実に活用していくということです。現実が変わって初めて、そこから何かしらのフィードバックを受け取り、次の進化に必要なことは何かということが分かります。このサイクルを繰り返すことによって、人は成熟していくのだと考えています。
なお、「成熟」とは「もう成長し尽くして熟れた状態」ではありません。真の「成熟」とは「自分の未熟さを真に悦べる状態」であると考えられます。
岡山:就職活動においても自己分析が重要視されるようになったと思います。しかしながら、自己分析をしても組織や環境とのミスマッチが起きてしまうことがあるのが現実ではないでしょうか。就職活動における自己分析に基づいた自己理解と真本音に基づいた自己理解の違いは何でしょうか。
竹内: 過去を振り返ること自体は悪くないと考えています。しかし、多くの学生さんは「反応本音」レベルで振り返ってしまっているようです。
「反応本音」は「真本音」よりレイヤーが低く、狭いレイヤーで自分を分析しているので、表面的な自己理解に留まりやすいです。
ある企業の経営者にコーチングを実施した際に、「今までの自分を打破したいけど自信がない」と話されていました。過去にすごく囚われていると感じたので、「真本音」ベースに振り返りをしてもらいました。
そのことによって、囚われていると感じていた過去についての見方が大幅に変わったことがありました。
自己分析において、過去の共通項を「反応本音」レベルで見つけるのではなく、この瞬間に「真本音」で何を感じるのかが大切だと思います。
また、過去を振り返るというより、「今この瞬間を生きましょう」と提唱していくのが真本音理論です。「真本音」で次の一手をどうするかが最も重要なことだと考えています。
次回の第4話は、「真本音度合い」が高まることによる周りへの影響について詳しく紹介します。