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ITSUDATSUとはどんな会社か(2/5)

前回のインタビューでは黒澤氏の経歴や人となりについてお話を聞いてきました。今回は組織人事コンサルティングの現状と課題について詳しく聞いていきます。

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2.組織人事コンサルティングの現状と課題について

2-1.黒澤がこれまでで感じてきた人や組織の課題

村松:今まで組織開発や人事を軸にキャリアを歩まれてきたとのことですが、その過程で感じた人や組織の課題について教えてください。
 
黒澤:違和感は大きく3つあります。まず1点目は、「外側から従業員をコントロールしよう」とし過ぎであることです。

多くの組織では人や組織を変えるには仕組み自体を変えなければならないと考えがちです。

本来は人間の心が大切であるにも関わらず、心の部分を置いてきぼりにし、従業員に動いてもらうために、「何が必要なのか?」と考えることが多いのです。

多くの場合、それは例えば分かり易いものでは、給料・福利厚生・綺麗なオフィス・フルフレックスなどです。つまり、従業員に気持ちよく働いていてもらうために、既存の仕組みに「足す」発想で考えます。
 
これは間違いではなく、昨今働き方も働く価値観も多様化しているので、大事な部分ではありますが、何か大事な部分が見落とされているのではないかと違和感を持ちます。

私は人材や組織開発において「心理学的経営」という本を今でも参考にしています。

この本は、昨今ようやく人的資本経営の重要性が注目されてきましたが、ずっと以前から「人間を人間としてどうあるがままに活かしていけばいいのか」について説いた、ビジネス本というよりも哲学書に似たものです。

しかし、そもそも人間の行動は、このいわばノイズとしてのムダな情緒や感情を基底に持つところのその本質がある。効率性と合理性を優先させる組織論は、人間存在の一方の重要な側面を無視しているのである。
 
人間には様々な欲望があり、日々様々な感情の狭間で揺れ動いている。
人によってつくられ、人によって構成される組織を動かすのに、合理性の原則や能率の論理のみに捉われていると、一人ひとりの個性などはどこかに葬り去られてしまう。心理学的経営の考え方は人間の現実をあるがままに受け入れ、捉えることを何よりも重視している。

個をあるがままに生かす 心理学的経営, 大沢 武志, PHP研究所より抜粋

そして、この本と竹内さんの「真本音」を起点とした組織活性化方法が特にリンクしました。

組織は人の集まりであるからこそ、人が活性化せずして、組織の活性化はあり得ません。そして、人には「心」があります。人の活性化には「心」の活性化が必須です。

そういった心が活性化された個人の集まりにより、そして、そういった人の相乗効果(シナジー)により、組織は本質的に活性化するのだという、個人を「内面的」から抜本的に活性化するアプローチが最も本質的だと思いますし、持続するものだと考えています。

ITSUDATSU社代表取締役 黒澤伶氏

2点目の違和感は、1点目と関連するのですが、仕組みによって「全員を」活性化しようと躍起になってしまっていることです。

もちろん、社員全員を平等に大切にしたいという考えを持つのは当然のことと思います。ましてや、社員の心や意見を大事にしたいと思う経営者であれば、なおさらそのような意見が出るのも当然でしょう。

しかし、これまで弊社は数百の組織活性化やコンサルティングの現場で「全員を救うための組織施策は結局、誰一人として救うことができない」という現実を目の当たりにしてきました。

仮に従業員が100人いたとしたら、100人を同時に平等に活性化するのではなく、100人の中で組織活性の要となるたった数%の人材を明確に設定し、経営資源を集中投資することが重要です。

そして、その要となる人材が成長することで、周囲の人材が影響され、活性化されていく・・・という道筋が最短の組織活性化戦略です。

重要なのは、感情論として「社員を大事にしたい」ということとは別に、組織を活性化させる要となる人材を選定及び発掘することです。

そして、他の人材とは人材育成の優先順位を明確に線引きし、その要となる人材の育成と定着に注力することです。

これが結果的に、社員全員の個人の活性にもつながり、社員を大事にすることと同義になると捉えています。
 
3点目の違和感は、2点目と関連するのですが、「誰」を引き揚げるのかを間違っているのではないか、という点です。

世界的に著名な戦略コンサルティングファームであるMcKinsey & Company社の調査によると、経営層の7割は社内で最も影響力のある人材を見誤っていると発表しているほど、実は誰を昇進されるのかは極めて難しいテーマです。

従来は結果やパフォーマンスのみに焦点を当てた昇格や抜擢が多すぎると感じました。

もっと「自律」的な焦点(つまり、先述した心が活性化している状態)での未来的な可能性を視野に入れた昇格や抜擢ができないのかと思います。それくらい、通常の企業は「人を見極める目」に自信がないのだと感じました。

 弊社の組織人事コンサルティングでは、上記の問題提起を基に、
①    一人の人間としての心の活性化に焦点を当てる
②    組織の要となる人材の活性化に焦点を当てる
③    要人材かどうかの基準は自律性に焦点を当てる

この結果として、組織活性化のティッピングポイントを超え、常軌を逸した逸脱的な成長を実現できるのではないかと考えています。

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村松:人や組織を変えるためには、泥臭く対話をし、人と向き合い続けることが大切だと考えています。一方で、人事の方や組織開発を担当されている方ほど対話をすることが苦手であったり、そもそも対話の必要性を感じていなかったりするような気もします。やはり人と真に対話し向き合い続けることは難しいのでしょうか。
 
黒澤:それほど難しさは感じませんが、「怖さ」は多くの経営者が持つことと思います。

「社員一人ひとりの個性を大事にしよう」と言っても、「それは理想論だ」と言うのが大方の反応だと思います。

それ自体は、私も経営者なので、お気持ちはよく分かります。社員の個性を軸とするより、いかに経営的な効率さと合理さを軸とした社員のマネジメントを行うかを考える傾向があると思います。

もっと激しい言い方をすれば、従業員を、利益を上げるための駒、あるいはリソースとしてのみ捉えているということです。

また、一時期社長の命令は絶対だという指揮命令系統のマネジメント手法が一気に流行ったように、従業員に主体的になってもらっては困るという考えもあると思います。従業員が指示や命令を聞かなくなってしまっては困るということです。

私は人を管理しようとすればするほど上手くいかないと考えています。

また、現代において、既存のオペレーションをただ回し続けるという手法は時代に合わなくなってきていると思います。

昨今では、ティール組織などの従業員の主体性を重んじるような考え方が徐々に出てきていると思いますが、従業員を主とする企業がもっと増えて欲しいなと願っています。

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2-2.組織人事コンサルティング業界の傾向ついて

村松:組織人事コンサルティング業界の傾向について教えてください。
 
黒澤:これは先ほど申し上げたことですが、組織人事コンサルティング業界では仕組みを変えることから始めるコンサルティング企業が圧倒的に多いと感じています。

具体的には、人事評価や組織体制を変えていくことやリスキリングの効果測定などが挙げられます。

私は外発的に何かを変えることは、人や組織が成長していく上で持続可能ではないと考えています。

クライアントさんの中には、福利厚生などを豪華にされて改革を進められた企業さんもいらっしゃいますが、それを進んで活用されている従業員の方はほとんどいないとのことです。

つまり、外発的に従業員をモチベートしたとしても、一時的に喜びは感じるかもしれませんが、それは反応本音レベルの喜びに過ぎません。

給料を上げたとしても、3ヶ月、いや2ヶ月で上がったときの喜びはどこへやら?・・・ではないでしょうか(笑)。反応本音レベルの喜びは持続可能なものではないです。

このような報酬制度や福利厚生を変えること自体はもちろん悪いことではありませんが、大切なのは、その仕組みに「人の心がついていけるか」だと思います。

カタチだけを変えても、人の心がついていかなければ、全て絵に描いた餅となるか、もしくはそれ以上のマイナスが起こるものです。

カタチから人を動かす、のではなく、「人が自分の想いに基づいてカタチを創り出していく」のが自然な流れだと思います。

また、制度を活用するために従業員の自律性を高めることが先決だと思います。

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村松:報酬制度や福利厚生などの外発的動機によって従業員の方々をモチベートすることを安易に人事の施策として実行してしまうのは、何故なのでしょうか。
 
黒澤:あくまでも私の考えですが、多くの経営陣や人事の方が外発的動機でモチベートする以外の手段でどう成果が出るのかが分かっていないことが理由として挙げられるかと思います。

また、人の心に焦点を当てて育成を行う内発的なアプローチの方が、成果は出やすいといった概念自体が浸透していないようにも感じます。

そもそも従業員の自律を促すような内発的なアプローチはどうしても時間がかかってしまいます。

一方で、企業では上司に説明責任を果たすことが極めて重要視されていますので、待つことができないことも理由として挙げられます。
 
村松:経営陣が成果を測定できない恐怖を捨て、企業が従業員の自律を促すような内発的なアプローチに舵取りするには何が必要なのでしょうか。
 
黒澤:私は「組織活性には混乱が必要」という考え方を最も大切にしています。私たち人間のカラダも新しい細胞に生まれ変わるためには、今までの毒素を吐き出す必要があります。

会社も同様に、組織が新しく生まれ変わるために、膿が出てくるのは必須のことだと思います。つまり「好転反応」ということです。
 
一方で、経営陣や人事の方は組織活性化によって混乱が生じることを恐れていると思います。本当の意味で組織を活性化するためには混乱が必要です。

混乱をコントロールしようとすればするほど上手く行かないですし、そもそも組織活性化の効果は定量化できません。

組織の本質的活性化とは、「想定外」を受け入れることにより成されるはずなのです。
 
村松:この「想定外」を受け入れるためには、何が必要なのでしょうか?
 
黒澤:この「想定外」の本質的組織活性化をするためには何が必要かは、やはり経営陣の組織への覚悟の度合いではないでしょうか。

したがって、まずは経営陣が真本音度合いを高めていく必要があると思います。真本音の度合いが高まると起きている混乱が「真本音の混乱」なのか、それとも「反応本音の混乱」なのかを見極めることができます。

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村松:別の話題ですが、近年では人的資本の開示やリスキリングなどがよく話題に上がります。こちらについてはいかがお考えでしょうか。
 
黒澤:人的資本の開示に関しては、ずっと昔から重要だとされてきた日本特有の考え方が、アメリカナイズされたマネジメント理論を経て、やっと原点回帰されたという印象です。

人を大切にし、成長していく良い会社が選別されていくメカニズムだと思いますので、この動き自体は喜ばしいことだと思います。

一方で、他社が取り組んでいるから自社も取り組まなければという消極的な姿勢で行われていることが多いように感じます。

あくまでもデータ等の情報開示に留まり(例えば、女性幹部比率を躍起に向上させようとするとか)、独自のユニークな組織や人事の戦略の取り組みを開示するレベルまでは至っていないかと思います。

我々が向き合うべきは、「情報」ではなく、「人」だと思います。


次回の第3話は、ITSUDATSUについて詳しく説明します。

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