とあるサポの惚気:Es ist Magie.
どなただったか詳細は忘れてしまったのだが(セレッソ大阪の選手だった気がする)、とある日本人選手がドイツに移籍した際、そのプレーを讃えて紙面を彩った言葉がそれだったと思う。
『Es ist Magie.』
直訳すると、『それは魔法だ』
ここ数年の高木善朗選手のプレーを見るたびに、私の脳内を踊った言葉でもある。
高木選手、親しみを込めてヨシくんと書かせていただくが、ヨシくんが新潟に来てくれてからもう何年だろう。5年目か。ありがてぇ…。
J2に落ちた初年度か。もう5年もたつのか。時がたつのは早いな、と思いつつも、ヨシくんほどの選手がよくこんなに長くいてくれているな、という気持ちもあって、時間間隔がいろいろごっちゃになっている。短いようで長い、みたいな感じか。違うか。
J2に落ちてからのシーズン、楽しいことばかりじゃなかった。辛くて、悲しくて、やるせなくて。そんなときもいっぱいあった。
私は、サッカーにかかわらず、応援する気持ちというものは緊張の糸と似たようなものだと思っている。張りつめて、それだけに集中すれば熱中出来ていいこともあるけど、辛いことがあると一瞬でその糸が切れてしまう可能性もある。少し緩ませて。応援だけを趣味にしないで。そうした方が長く続くんじゃないかな、と思っている。
少し論点がズレたが、J2に落ちて辛い時、その糸がもろくなる時だってあった。去年も結構きつかった。
何がきついって、クラブを、選手を、信じられなくなる時がある。勝てないよりなにより、それがつらかった。
そんなときでもヨシくんは、下を向いた私の目を、ピッチに向けてくれた。
美しいパスで、巧みなボールさばきで、熱いディフェンスで、しぶといランで。
『顔を上げて!』
何度、彼のプレーから力をもらったか。瞼を熱くしたか。拳を握りしめ、掌を打ち付け、彼の力になりたいと願ったか。
数えきれないほどの感情を、彼にもらっている。
だからこそ、私にとって彼のプレーは魔法なのだ。
そして今年、その魔法は頂を目指す大きな一助になっていた。
開幕当初、少し調子が上がらなそうに見えたのが嘘のようだ。今のこの成績に彼の影響が大きいことは明らかだ。
だからこそ、あのシーン。
ヨシくんが首をひねったあのとき、頭によぎった不安を、見ないことにした。
リリースを見て絶句した。
余りにも辛い。悲しい。ここまで、あんなに頑張ってくれたヨシくんが、なぜここで離脱しなければいけないのか。
……けど、その次にわいてきたのは、決意とか覚悟とか、そういうものだった。
『まだ5試合ある』『油断できない』じゃない。『昇格したい』じゃないんだよ。
『私たちは昇格しなければならない』んだ。
連れていく。待っている。彼を。私たちの魔法使いを。
次にその華麗な、泥臭い、熱い、ワクワクする、大好きなプレーを観るのはJ1の舞台だ!
待て、しかして希望せよ。(急なモンテクリスト伯。浮かんだから仕方ない)
それは、魔法だから。
(これ書いている間ずっと頭の中で平井堅さんの「POP STAR」が流れていたので私の中のテーマソングとしました。)