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7月3日は「ソフトクリームの日」

「あの二人カップルですかね?」

「おい、早く仕込みしろよ」先輩は言う。

「いや、あのベンチの二人とも美男美女で女の子は特にかわいいんですよ。ほら見てみてくださいよ」

公園内の売店では、開店の準備をしていた。季節は夏が近くなり公園を訪れる人たちも日々増えてきている。

「ソフトクリームの準備しとけよ」さらに先輩からの指示。

「はーい」

まったく。言われなくても今やろうとしてました。

ソフトクリームの機械の準備をしていて、カウンターから目をはなしていたが、その時カウンターから声がした。

「あのーソフトクリームって買えますか?」

「はーい、少々お待ちください」そう言い、すぐにカウンターに向かうと。

なんとさきほど噂していたカップルの女の子だった。

「ソフトクリーム一つください」と女の子言った。

「はい、ソフトクリーム一つですね。300円です」

そう聞くと女の子は首からさげた、がま口財布を見た。一時停止し、そっとがま口財布をしめた。

「あの、200円になりませんか?」女の子はそう言った。真面目に。

ソフトクリームを値切る人をはじめて見たので、驚き「いや、300円です」と馬鹿正直に言ってしまった。あー馬鹿野郎。100円くらいまけてあげてもよかったのに。あんなにかわいい子がソフトクリーム食べたがっているのに。

「ですよねー」と女の子は良い。くるりと後ろを向き大きな声でベンチに座る男に言った。

「お兄ちゃんーお金が足りなくてソフトクリーム買えない!」

その声にビクッと反応し、早足で女の子に近づいてくる男。全身黒い服を着て、背が高くひょろっとしていた。

「そんな大きな声で言わなくていいから」とその男は女子に言った。

「だって本当にお金足りないんだもん。お兄ちゃんお金だして」

「分かった分かった」

そういうとお財布から300円を出した。

アイスクリームを無事にゲットした女の子は走ってベンチに戻る。

「おいーミナミ転ぶぞー」

すると女の子はまた急いで戻ってきて「妹って呼ぶって約束忘れたの?」と謎の言葉を言って二人でベンチに戻って行った。

兄と妹だったのか。あとで先輩に教えてあげようと店員は思った。

7月3日は「ソフトクリームの日」

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