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7月1日は「建築士の日」
ほぼ毎日、高い所から落ちる夢で目が覚めた。
あまりにも毎日続くものだから、ネットで調べてみると、今の地位から転落するのを恐れているなどの夢診断の結果が出た。
役職もついていないサラリーマンが地位からの転落もなにもないものだとスマホの画面を見ながら苦笑した。
さて、休みの今日は念願の建築士に会いに行く日だ。建築士に会いにいくと聞くとほとんどの方は、家でも建てるのかとお思いになるだろうが、そうではない。
私が会いにいくのは「空想建築士」だ。
はて、空想建築士とは何か?
聞いたことのない方がほとんどだろう。広く一般的に知られた職業ではないし、空想建築士は紹介でしか客とは会わない。
都内某所。雑居ビルの3階にひっそりと事務所はあった。
約束の時間より少し前に事務所のドアをノックした。中から声がした。
「どうぞ」
真鍮のドアノブをつかみ、ドアを開けた。
事務所の中は、壁一面真っ白。そして部屋の中央に向かい合った椅子が2つ。そして部屋の窓をよけるようにして、4面すべてに棚が置いてある。そこに様々な建物のいわゆる「模型」が置いてあった。
部屋中央の椅子から立ち上がり、空想建築士はあいさつをした。
「はじめまして、空想建築士のキタです。こちらにおかけください」と彼の目の前の椅子をすすめた。
言われるままに私は、椅子に座る。机はないので初対面の人とかなり近い距離で座ることに少し緊張したが、空想建築士は慣れているようで、てきぱきとまずは事務的なことを質問してきた。名前等々。
では、これから色々とおはなしをお聞きします。その結果、あなたの深層心理に深く根付いているいわゆる「空想建築」の模型を私が作成します。
どんな建物ができるのかは人それぞれです。昔住んでいた家によく似たものができることもありますし、思い出の学校という方もいらっしゃいました。
説明が終わると、次はかなりプライベートなことを質問してきた。
何色が好きか? 何の季節が好きか? 好きな匂いは? 一人暮らしか? 等々。
それでは、これで質問は終わります。完成は3週間後です。
今我々が座っている部屋の中央つまりこの場所に、きっちり3週間後に模型を置いておきます。3週間後にお越しください。またその際は私はおりませんので、ご自由に模型を見ていただいて結構です。
変な夢のせいで夜中に目が覚めたりと寝不足が続きながら、あっという間に3週間が経過し、いよいよ再びあの雑居ビルに向かう日になった。
真鍮のドアノブをつかみ、ドアを開けた。
前回訪れた時とは違い、部屋の中央に椅子はなくそのかわり、木製の小さなテーブルが置かれ、そのうえには何やら建物の形をしたものが置かれていた。
あれが私の空想建築……
机の上には木でできた鳥が使うような穴があいた「巣箱」があった。
私はそのまま、事務所の窓を開け、3階から飛んだ。久しぶりの飛行だが夢とは違い、うまく飛べた。
7月1日は「建築士の日」