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6月25日は「住宅デー」
出席番号1番のあんどう君からスタートした。
「あの赤い屋根の家は、この町から少し行った丘の上にあります」
という作文の発表を聞くボクたちの教室は、なかなかの暑さで9月でこの暑さということはいわゆる残暑というやつだ。大人っぽく言うと。
地球温暖化で今大変だと社会で習った。
でも今ボクのひたいからポツリと落ちる大粒の汗と、汗が落ちた自分の作文用紙と、本当はいけないんだけどみんなやっているプラスチックの下敷きでパタパタとうちわ代わりに、微風を発生させている少しかったるくなってきた右手などを前にすると、大変申し訳ないけども、地球さんの温暖化の心配よりも、我が教室の温暖化の問題のほうがずっと深刻だった。
とりあえず我がクラスの温暖化対策のため、早急に冷房をつけてほしかったが、担任のかねこ先生は地球と猫には優しいという特徴をもっているので、クーラーがONになることはない。
その代わり、窓は全開で、この前なんてその全開の窓からセミが教室内に侵入してきて、授業中の教室はパニックになった。
かねこ先生が無事に捕まえてすぐに静かになったが、理科の時間地球上の様々な生き物の特徴を教科書で勉強していた僕たちが一番驚いたのは、教科書に書いてある見たこともない動物の生態系より、暴力的な生命力で突然教室に侵入してきた生きたセミだった。
窓際のボクの席は、外からの風でカーテンがゆれてバタバタとなる。それで黒板がよく見えなくなる。けどボクはこのカーテンが好きだ。
お父さんと観た、ボクが生れる前の古い外国の映画に登場した女の人のスカートに似ていた。その女の人は美しくて強かった。
そのスカートとカーテンは色も似ていて、何色ですか? と聞かれても不思議なクリーム色としか答えられない。
風になびくスカートは、かねこ先生 生徒30人(ボクを含む) セミ
の中で一番生命力があると思う。次にセミかな。
それ以外は死んだ目でもって、かねこ先生は徳川幕府の話をして、聞く生徒は徳川幕府はどうでもいいから今どうやって生きればいいのか教えてほしいなと思いながらノートを書いている。
教室では誰も聞いていない、あんどう君の夏休みの作文の発表が続いている。
あの赤い家には幽霊が住んでいるとの噂はこの学校の生徒なら誰でも知っている。
本物の幽霊に会ったなら、生きてるボクらは死んだあなたから見たらどう見えますか? と質問をしたいな。
幽霊はなんて答えるだろうか。いやあのセミならなんて答えるだろうか。いやスカートに似たカーテンならなんて答えるだろうか。
気が付いたら、あんどう君の発表は終わっていた。
6月25日は「住宅デー」