【夏の連続厚顔無恥小説】第6回「虹の橋はどこまでが虹?」
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しゃちほこが気になったが、僕は献血ができて幸せな気分だった。ただし、ポン酢を誰に輸血するのかが疑問だが。
気分がいいので、タクシーで行きつけの店まで行くことにした。少し早いが一杯飲もうと考えたからだ。
「渋谷までお願いします」
タクシーの移動は久しぶりだったが、平日のせいか道は空いていた。順調にいけばもうそろそろ到着してもいいころだなそう思ったとき、
「虹の橋を通りますが、よろしいですか?」
虹の橋? はて、初めて聞く橋の名前だ。
「そんな橋ありましたっけ?」
「えぇ、間もなく通ります。よろしいですか?」
渋谷に行くのにそんな橋を通るのかと疑問があったが、間もなくというので通ってもらうことにした。
気が付くと窓の外は空だった。現在虹の橋を渡っているということは、虹の橋をはじめて渡った人でもすぐに分かった。まるでマリオカートのように、綺麗にかかる虹の上を黒いタクシーは移動していた。
運転を少しでも誤れば、橋の下に落下してしまう恐れがあったが、ベテランの運転手さんは迷うことなくハンドルを握っていた。ただ、運転手さんは橋の途中から所謂駄菓子のよっちゃんイカを食べ始め、車内はよっちゃんの匂いで充満していた。
まるで夏休みに小学生が読む児童書のおはなしのような体験はあっという間に終わり気が付くといつもの知っている道に戻っていた。しかし、現実の世界に戻ってもよっちゃんの匂いは消えず、あの橋は現実だったのかと考えさせられた。
目的地に到着し、料金を支払い下車するとき、運転手さんはよっちゃんイカを一袋、おつりとともにくれた。
よっちゃんイカを食べると、あの虹の橋を思い出すだろうか。
8月26日は「レインボーブリッジ開通記念日」
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よっちゃんを持っていただけなのに、トホホ……男はつらいよ。
→【夏の連続厚顔無恥小説】第7回「よっちゃんと不良とそれからと」8/27をお楽しみに