9月9日は「カーネルズ・デー」
暗い倉庫で見る「カーネル・サンダース」の像は、真っ白いスーツ姿の明るい雰囲気が台無しで、その顔は少し寂しそうに見えた。
「闇取り引きされているカーネル・サンダースは少ないんですよ」
この倉庫に案内してくれた組織の担当者は静かに言った。普段の街中では聞き取りずらいくらい小さな声だったが、我々二人以外に誰もいない(いやカーネル・サンダースはいるが)夜の倉庫での話声の音量としては最適だ。
「現存するだけで十数体と言われています。状態がいいものだと数体。いくつかは海外に流れたとも聞いています」
補足情報としていくつかのことを説明してくれた。わたしが見るに今目の前にある「カーネル・サンダース」は状態がいいものだと暗い中ではあるが分かった。
「ここに来た経緯は、ご存じなんですか?」わたしは遠慮気味に聞いた。どこまで聞いていいか分からなかったからだ。
「そうですね。とある国内のコレクションからこちらに回ったとだけ言っておきましょう」と担当者は言った。
そうか、国内から移送されここにいるのか。こんなに状態がいいものを間近で見るのははじめてだったので、裏に回ったり必要以上に細部まで観察してしまった。
静かな倉庫に男二人と、カーネル・サンダースで合わせて三人。これから話し合いが行われようとしている。
9月9日は「カーネルズ・デー」