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9月16日は「マッチの日」
「トウブ」が燃えていると聞くと、東部が燃えていると思って心配になり実家が東部の方は急いで電話をかけるかもしれない。
「もしもし、あ、オレだけど。なんかそっちで火事とか起こってない? 大丈夫?」
「なんだ、あたらしいオレオレ詐欺の電話か! 警察に通報するぞ!」
普段からコミュニケーションをしっかりとっておきましょう。という教訓が図らずも生れました。
「トウブ」は「頭部」と漢字で書きます。つまりは人間の頭です。そう今この文章をお読みになっているあなたの目の上にある、頭です。そちらが燃えております。
もしも頭部が燃えている方がファミレスに入店したら、こうなるだろう。
「いらっしゃいませ。お客様一名様ですか?」
「はい、どう見ても一名です」
「おタバコお吸いになられますか?」
「いいえ、タバコは吸いませんが、頭が燃えていて多少の煙がでるので喫煙席でお願いします」
「喫煙席、一名様ご案内でーす」
子供のころのあだ名は「マッチ」だった。もちろん近藤真彦のことではなく、頭が燃えていることを揶揄して付けられてあだ名だ。
このあだ名は、彼の細い体形とあいまって、非常にしっくりとくるもので、彼としては気に入っていたのだが、いじめにつながるとしてPTAが働きかけて、結局誰も彼のことを「マッチ」と呼ばなくなった。
何度も言う。彼は、割とそのあだ名を気に入っていた。
よく彼は「頭熱くないですか?」と聞かれた。だから彼はいつもこう答えていた。
「最近の東京の夏の暑さよりましです」
その答えを聞いた8割の人が、ヘラヘラといやらしい笑いをしてその場を立ち去り、2割の人がそれは温室効果ガスの排出が問題で……といかに人類が地球に迷惑をかけてきたかを説き、残りの1割は「頭が燃えているお前に言われてたくないよ」と言って笑った。
彼は1割の回答が一番好きだった。笑いは世界を救う。そう信じていた。人間、目の前に頭が燃えている人が本当にいた場合は、本人には面と向かって言いずらいのかもしれない。ヘラヘラといやらしく笑う人々の中にも、本当は一年中頭が燃えているお前に言われたくないという思いをもっている人が大勢いるはずだ。
つまりは、彼の頭は燃えていて、パリは燃えている。みたいに頭は燃えている。であり、それは近年の東京の夏の暑さとは無関係であるということは断言できた。
9月16日は「マッチの日」