9月25日は「骨董の日」
骨董市はこの神社で奇数月の第一日曜日に開かれる。
なんでも歴史が古いらしく、お宝が紛れているとコレクターの間では有名だ。僕はというと……百均で売っている皿と百年前の皿の見分けもつかない素人だが、今日の目標は掘り出し物を見つけて、インターネットのオークションサイトで高く売ることだ。
皿や壺、何に使うものかも分からないとにかく古いものが、それぞれの店に並べられている。店といっても神社の境内なので敷物の上に無造作に置かれていた。
この中に、きっとお宝があるはず……。目を凝らしながら様々な店を見て回ったが、これがさっぱりでいったいどれが高く売れるのかがさっぱり分からない。そんな時、一つの壺が目にとまった。両手で抱えられるくらいのシンプルな壺で何かの葉の絵がいくつか描かれていた。
店のおじいさんが僕に気が付いて声を掛けてくれた。
「おにいさん、どうだい? 安くしておくよ」
「あの……この壺の絵はなんですか?」
「この壺の絵は『シデ』の葉だよ。知ってるだろ四手だよ」
僕はシデの葉を知らなかったが「あぁ、あのシデですね」と見栄をはった。
「それから、この壺はちょっと変わった壺で、手をいれると、すくうことができるんだよ」
「え? 何をすくうことができるんですか?」
おじいさんは笑いながら「さぁ、何かなと」と言った。
僕は直観が大事だと思い勢いでその壺を買ってしまった。値段は相場が分からないので高いとも安いとも言えなかったが、1万円が数枚消えた。
さて、大事に家まで持って帰り、ぐるりと壺の周りを見渡した。何度見てもいい壺だなと思い、このまま家に置いておこうかなとも思った。まさか自分が骨董品に目覚めるなんて思わなかった。
しかし
あの言葉が頭から離れないでいた。壺に手をいれるとなにかを、すくえるというあのおじいさんの話を。
僕は緊張しながら壺に右手を入れた。壺の中は夜のように真っ暗だった。
そして……「ぎゃ!」
手を出すと手にはなにやらベトベトした黒いものが付いていて、匂いも相当にひどかった。しかし、もしかしたらこのベトベトの奥に、なにかお宝がと思うと、その後何度も手を入れてすくってみたが、何度やってもベトベトとした黒い塊しかとれなかった。
はー、もうやめよう。おじいさんが言っていたすくえるものって、こんなベトベトの汚いもののことだったんだろうか。
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その時、遠く離れた海の座礁したタンカーから漏れた重油が、空から突如として現れた大きな手によって、何度もすくわれて重油は海からなくなった。現地で作業をしていた人々からは神のおかげだと喜ぶ声が上がった。
付近は海洋生物が多く生息する地域で多くの生物が救われた。
そう救われた
9月25日は「骨董の日」