6月17日は「砂漠化および干ばつと闘う国際デー」
久しぶりに帰った故郷は、子供のころから見慣れた光景とはずいぶんと変わっていた。一面に豊かな自然があったはずなのに、今や砂漠と言われてもうなずける。
「驚いたかい?」村長は遥か彼方を眺めながらそう言った。しかし、村長の目の焦点はどこにも合っていなかった。
「はい。たった一年でここまで変わるとは……正直驚いています」
自然の豊かさが最大の魅力だったこの村は、その自然と共存するように静かに、そして、人々はたくましく生きてきた。遥か昔から、そしてそれはこれからも当たり前に続くと思っていた。
「この一年で、どんどんと植物や木は枯れ、大地は乾燥し、我々が植えた植物も根をつけなくなった」
「いったい何がこの土地の起きているのでしょう。このままいけばこの辺りすべての土地が干上がってしまうのでしょうか?」
「わしにも分からん。ただ、最近少し変わったことが起こっているのだ」
真剣に考えるよう少し間をおいて、村長は話しはじめた。
「毎日、一回から二回ほど雨が降る。そしてどちらかの雨の間にあの謎の泡が降ってくるというのは変わってはいないのだが、それ以外になんとも不思議な液体が空から降ってくるようになったのだ」
そんな話を聞いたのはもちろん私もはじめてで、慌てて聞いた。
「いったいどんな液体が降ってくるのですか?」
「うむ。村人の安全のため、例の泡が降ってきたら念のため外出禁止にしているのは知っていると思うが、何やらそれに近いもののようで、その不思議な液体に降られた者は、目が痛くなり体中がヒリヒリとしたそうだ」
「なんとも不思議な液体ですね」
「それで、例の泡と同様に液体が降ってきた場合は屋内に退避させることにしたのだ」
「ちなみに、液体はいつ頃降ってくるのか決まってはいるのですか?」
「そうだな、最近では夜の雨が降り、その後例の泡が降り、その後また雨が降り、あたたかい風が吹いたあとに、決まって謎の液体が降り注ぐなぁ……」
「そうですか……なんとも不思議な現象です」
その後、村長と様々な意見を交換したものの、村の砂漠化を根本的に防ぐ手立ては思いつかなかった。
「山本ー!、3番に岡崎建設の寺内さんから電話ー」
「はーい」
「もしもし、お世話になります。山本です」
「はい……はい、現在調整中でして、はい……ではまたこちらからお電話いたします。はい、失礼します」
「おい、山本! おいってば」
「なんだよ、今忙しいんだよ」
すぐ後ろの席の同期の佐藤が話しかけてきた。
「山本お前やばくない?」
「何がだよ。急にやばいって」
「髪だよ、髪!ストレスか? やっぱり」
まったく、佐藤は痛いところをついてくる。最近気にしているのに……
「は? 何が?」
「何が? って入社した時より確実に薄くなってるって、色々やったほうがいいよ? 育毛剤とかさ」
「うるさいなー余計なお世話だよ。まったく」
そう言いながら、最近では夜風呂上がりに毎日育毛剤を使っているのだ。はぁ、髪の毛よ! なんとか生えてくれ! 頼む!
6月17日は「砂漠化および干ばつと闘う国際デー」