4月23日は「しじみの日」
あさり しじみ かき はまぐり さざえ あわび ほたて
この中でどれがいいですか? 丸をつけておいてください。それで決定です。
というメモが台所のテーブルの上に置いてあり、そのメモが飛ばないように重石にはコショウの小さいビンが置かれていた。あさりから声をだして読んでみた。これだけ連続して、貝類を呼ぶことは今までなかった。おそらくお寿司屋さんでもなかった。
1年貝組の出席を取っているようだ。
「はい、あさり」
「はい!」
「はい、しじみ」
「……」
「今日、しじみはお休みか?」
「せんせーしじみは今日具合が悪くてお休みです」
「お、さざえありがとう。そういやお前ら家が近かったな」
それにしても、このクラスは人数が少ないな。7人しかいない。あ、いや7貝か。7貝しかいない。それでやっぱりベタだけど、あわびの家はお金持ちなのかな。そして、さざえは不良なんですよ。トゲトゲしてるからね。
そんな貝組のことはどうでもよくて、メモには続きがあって、どれがいいか丸をつけなくてはいけない。
子猫が家に来たのは先週。子猫というだけあって恐ろしく小さい。少しでも強い力が加わったら壊れてしまいそうだ。ぬいぐるみのほうがよっぽど強そうだった。仲良くしてね、ひこにゃんのぬいぐるみ。でもさ、心配なの。その角さ、子猫が来る前は全然気にならなかったけど、今思うとすごい尖ってるね。怖いね。子猫をささないでね。
名前をどうするかという議題は、同居人とすぐ食卓にあがった。それぞれ良いと思う候補を考えてお互いプレゼンする方式にしようと決まり、僕は子猫の名前を考えていた。そして今日帰ってみると、貝の名前から子猫の名前を選ぶという方式に変わっているらしい。それで決定です。らしいです。
僕が丸をつければ子猫の名前が決まるということだ。緊張する。
子猫を抱っこして、あさりから順番に呼んでみることにする。特にどの貝類にも興味はないようで、エサをはやくくれという顔をしている。
色々と悩んだ結果、一番小さいけど一生懸命出汁を出しているからという理由で「しじみ」と名付けた。じみーとあだ名で呼ぶことが最近多くなった。
4月23日は「しじみの日」