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8月16日は「電子コミックの日」
最近、電子コミックのレンタル店が、世界で一番流行っている仮想現実世界の『Mooma(ムーマ)』に新しくできたと聞き行ってみることにした。
友達と待ち合わせをして行くはずだったが、リアル世界で急用ができたらしく、仕方なく一人で行ってみることにした。
広大な「Mooma」の世界では、細かくアドレスポイントと呼ばれる住所のようなものが設定されていて、その数値を入力すると瞬時にその場所まで行くことが可能だが、ほとんどのユーザーが「Mooma」の世界観を大切にしているので、バイクや自動運転車、空を移動するスカイラインなどに乗り移動している。
目当ての店はログインしたアドレスポイントから近かったので、バイク型の乗り物スキッパーで向かうことにした。
「Mooma」にログインしているといつも思うが、バイクに乗り風を感じたり、街を歩き友達と話をしていると、しばしばどちらが仮想の世界かどちらが現実の世界か分からなくなる。
それだけ「Mooma」の世界はリアルなのだ。
大通りをしばらく走り、ナビの案内通り細い道を左折した。そこには巨大な店舗があり大きな電飾が付いた看板が目立っていた。店の前は賑やかで、他の店に比べるとやはり流行っているようだ。
店に一歩入ってみると、その広さに驚いた。見渡す限り広いフロアには、ぎっしりと本棚が置いてあり、まるで図書館のようだった。その棚には本と同じくらいのサイズの電子コミックが並べられていた。
すぐ近くで本棚の整理をする人工AIの店員がいたので話しかけてみた。
「ここのコミックって、Moomaの中で読めるの?」
すぐさま振り向き、笑顔で店員は答えてくれた。
「いらっしゃいませ。この店にある電子コミックはすべて第三世代型のものとなっております。したがいまして、すべてMooma内でインストールしてご自身でコミックの世界を体験していただくことが可能です」
ほぉ、今まで珍しいと言われていた第三世代型の電子コミックがこれだけ揃っているなんて……そいつはぜひ体験してみたじゃないか。
勇者にも正義のヒーローにも、そしてモテモテの人気者にもなれるのだから。
早速広い店内の本棚を物色しながら歩き回った。
不思議なもので、電子コミックを選ぶということは、椅子に座って画面を見ながらでも可能だ。なんだったらリアル世界でもできる事。しかし、こんなに広い店の中で歩き回って探すというのは、ワクワク感がまるで違う気がする。最近「Mooma」の世界で実店舗が続々とできているというのは納得だ。
最終的に選んだのは少し前に流行った王道の冒険ファンタジー。そしてコミックを持って次に向かうのはインストール端末だ。
そこにも親切に人口AI店員がいて、インストールのサポートをしてくれた。
「これ、インストールしたいんだけど」
店員にそう伝えると「はい、かしこまりました。お選びいただいたコミックをお預かりいたします」
店員はインストール端末にコミックをセッティングした。
「それではお客様の個人情報を読み取ります。恐れ入りますがどちらかの指を端末にかざしてください」
ここ「Mooma」では共通疑似通貨が使用されており、何かを買ったりサービスを受ける際には、キーフィンガーつまり、人の指が身分証明書となる。
言われた通り端末に指をかざした。
「ありがとうございます。確認しました。指を離していただいて結構です」
早くコミックの中身を体験したくてうずうずしていると、店員は申し訳なさそうにこう言った。
「お客様申し訳ございません。ただいまお客様は1作品電子コミックをご利用中でございます。そちらをアンインストールしていただかないと、新しいコミックをご利用いただけません。
ちなみにご利用中のコミック名は『Mooma(ムーマ)』です」
8月16日は「電子コミックの日」