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【夏の連続厚顔無恥小説】第9回「泣ぐ子はいねがー、怠け者はいねがー」

前回のおはなし


秋田に向かう機内では、なまはげたちはそれぞれ「泣ぐ子はいねがー、怠け者はいねがー」などのバリエーションの練習をしていた。

その中で僕は何故かなまはげたちと同じ飛行機に乗り、まもなく秋田に到着しようとしていた。

秋田に到着してからやっと、近くにいたなまはげに事情を説明して、桶を返すことができた。そしてせっかくだからとなまはげたちが暮らす、なまはげの村まで案内され、そこでなまはげの歴史や、実際のなまはげの活動を見せてもらった。

そして勧められるままに、体験コーナーでなまはげの面を付けさせてもらった。そこから僕の人生が大きく変わってしまった。いいや、羽田空港で桶を見つけたときから、もう人生は変わっていたのかもしれない。

面を付けた瞬間に、なまはげとしての様々な記憶や伝承の思いが身体に直接流れ込んでくるよう伝わってきた。そして自然になまはげになっていた。言葉の通りなまはげになっていた。そこには僕はいなく、一人のなまはげいた。

他のなまはげは大変に驚き、まさに救世主が現れたと驚き同時に喜んだ。

のちに奇跡の血を持つなまはげと呼ばれる若者が誕生した、まさにその瞬間だった。

8月29日は「秋田県の記念日」

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「太陽のような明るい笑顔が素敵です」
【夏の連続厚顔無恥小説】最終回「どんな人にも幸せを」8/30をお楽しみに

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