9月15日は「ひじきの日」
ひじき狩りに向かう前日に、テレビでいちご狩りの様子を見た。無邪気にいちごを食べる芸能人が羨ましかった。コンデンスミルクをたっぷりと付けたいちごは、見ているだけでよだれがでた。
しかし、わたしは明日人生ではじめての、ひじき狩りに向かうのだ。どんなふうにひじきを狩るのか全然知らないけど、てかひじきって何だろう? 海藻なのかな……ってことは海に行くんだ。楽しみだな~。
翌日朝早くに家族で車で出発!
目指すは海……と思ったが、海とは反対の山の方へと車は進む。運転するお父さんに聞いてみた。
「ねぇ、お父さん。ひじき狩りって海に行くんじゃないの?」
するとお父さんは「何いってるんだよーひじき狩りは、畑に行くんだよ。あ、そうか行くのはじめてだったもんな。驚くぞー」と言って笑った。
車で2時間ほど走り、目的地らしい畑に到着した。周りは見渡す限り永遠と畑で、人もまったくいない。
車を専用の駐車場に止め、車から降りて歩くと、車からは見えなかったのぼり旗が見え、そこには「新鮮! ひじき狩り」と書いてあった。
本当に畑でひじきが取れるんだ。もしかしたら、わたしの知っているひじきとは別のものなのかもしれないとこの時思い始めた。
そのまま、ひじき農家さんたちがいる小さな小屋に行き、それぞれカゴをもらった。どうやらこのカゴがいっぱいになるまでひじきを取ってもいいらしい。
お母さんと競争しようと約束して、さっそく畑に入った。
そこには、畑一面におじさんが埋まっていて、ちょうど頭だけが土から出ている状態だった。お父さんとお母さんは「新鮮ね」と言いながら、様々なおじさんの頭を観察し、これというおじさんの頭の髪の毛をぶちっとむしり取った。
わたしはその時点で怖くて怖くて帰りたかった。なんでおじさんが埋まっているのだ。意味がわからん。
そして近くのおじさんの頭を見てみるとそこには、髪の毛ではなくひじきがついていた。なるほど、こうやってひじきってなっているんだね。ってなるほどじゃねーよ。なんでおやじの頭からひじきむしり取らないといけないんだよ!
そうこうしているうちに、お父さんとお母さんはどんどん畑の奥に行ってしまった。
「ねぇー待ってよーなんでこんなにおじさんばっかりなのー怖いんだけど」
「奥に行くほど、出世してるからいいひじきがとれるぞー。そこらへんはまだ平社員だ。狙うなら部長以上だな」
お父さん、もう何を言っているかわからないよ。
その後も、おじさんの頭に怯え、一握りのひじきも採ることができず、あっという間にひじき狩りの時間は終わった。
そして、お父さんとお母さんのカゴはひじきでいっぱいだった。
ひじきを見るたびに、わたしは思い出すだろう。あの畑の光景を。
9月15日は「ひじきの日」