【夏の連続厚顔無恥小説】第7回「よっちゃんと不良とそれからと」
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よっちゃんを片手に歩いていると、前からあきらかに不良グループと思しき人たちが歩いて来た。僕はできるだけ目を合わせないようにして、通り過ぎようとしたが、そうはいかなかった。
「おい、おめーその手に持ってるものよこせ!」
金髪の不良が声を掛けてきた。
僕が右手に持っているもの、すわなち先ほどもらったよっちゃんイカだ。どういう事だ、今巷ではよっちゃんイカのカツアゲが流行っているのか。知らずに右手で持っているなんて迂闊だった。
「おい、なんとか言えよ! そのよっちゃんイカよこせって言ってんだよ!」
やっぱり! 目当てはよっちゃんイカだった!
僕が何も言わずにもじもじしていると、不良のリーダーらしき人物が、
「おい、よっちゃんイカ好きか? 俺も好きだ。だから答えは簡単だ。そのよっちゃんイカを置いてさっさと失せろってことだ」
その時、僕と不良グループの間に男の人が割り込んだ。
「あんちゃんたち寄ってたかって、よくないねぇ。そういうの、よくないねぇ」
その姿、どこかで見た気が……渥美清? 寅さん?
「なんだおっさんやんのか?」
「あのなぁ、やる、やらねぇの問題じゃねぇよ。おたくらのその姿勢がよくねぇって言ってんだ。いいか? こんなことしてちゃ、田舎のおっかさんが泣くぞ。おっかさん泣かせちゃいけねぇ、そりゃなによりもいけねぇことだ」
その後も渥美清似のおじさんは不良グループに愛のある説教を永遠と行い、次第に不良グループも心変わりしたようで、最終的にはありがとうございました。と高校野球部のようにあいさつして帰っていた。
最後に僕に「あんちゃん、よっちゃんイカ大切にしなよ」と言って去って行った。
その背中を見て、男はつらいよと思った。
8月27日は「『男はつらいよ』の日」
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「無事によっちゃんを守り抜いた! だけど僕の冒険はまだ終わらなかった」【夏の連続厚顔無恥小説】第8回「道で声をかけられるのは不良か渥美清かそれとも……」8/28をお楽しみに