6月12日は「バザー記念日」
本棚を整理していると、お気に入りだった本が出てきた。
確か下北沢の古本屋さんで夏の暑い日に購入したような記憶があった。このタイトルもあの暑い夏にぴったりで、ウキウキしながら家に帰り、普段は買わないソーダ水を帰りに買い、家に帰ってから壊れた扇風機を回しながら、本を読み、ソーダ水を飲んだ。
あ、やば。先輩に返すの忘れてた。
と慌てて本を持ちながら、先輩を追いかけたがカフェテリアから出たすぐの道には先輩はもういなかった。あーぁ、次に会えるのはいつだろうか。
先輩にこの小説を借りたのは2週間前くらいだったはず。夏の青空が表紙で、夏にぴったりだよと勧められ、正直小説どうこうよりも、先輩にお近づきになりたくて、小説を借りた。
普段は小説いや本なんてまったく読まないけど、この小説は面白かった。はやく先輩に感想を言いたかった。
本棚は、これだけだから二人の本全部は入らないよ。
と、人間は酸素を吸って二酸化炭素を出しているんだよと同じくらい正しい感じで彼は言った。
仕方がないので、私は自分の本からお別れをする本を選ぶことにした。これはなかなか苦しい作業のような気がしたが、これからの彼との楽しい生活を考えると、自然と他の人に読んでほしい本を選んで、お別れしようと思った。その中に大学時代に買った懐かしい小説が出てきた。夏の空が表紙の私が好きだった小説。読んだだけで、あの夏の匂いや入道雲が見えそうな小説だ。
しかし、この本は本棚には並べないで次の読者に譲ろうと思う。それを思いついたのは、昨日ポストにバザーのお知らせのチラシが入っていたからで、来週の日曜日に近くの公園でバザーがあるというお知らせだった。
「バザーって色々なものが売っているんだね」とお母さんに言った。
「今日は、たこ焼き器を探すのよ」とお母さんは張り切っていた。
自宅でたこ焼きが焼けるのは天国だとお母さんは話していて、ついさっきとある店でたこ焼き機を見つけ、少しでも安くならないか値切っているようだ。
私はその間、暇だったので隣の店を見ていた。その店には本がたくさん置かれ感じにいいお姉さんがサンドイッチを食べていた。私はなんとなく本を見ていると、見覚えのある本を見つけた。昔お父さんの書斎で見たあの本だ。
この夏の空の表紙、それに書いた人も間違いないし、なによりタイトルに見覚えがある。
『あの夏からの距離』
そうだ、これは間違いなくお父さんが書いた本だ。
無事にたこ焼き器をゲットし、機嫌がいいお母さんにそのことを伝えると、お母さんは本を買ってくれた。そのときサンドイッチのお姉さんは、
「この本すごく面白いし、サイダーが飲みたくなるよ」と言った。
私は炭酸水が苦手で、飲めないがこれを機に飲んでみようと思った。お母さんは手にたこ焼き器を、私はお父さんの小説を持ち、家に帰ったらお父さんからの手紙は届いているかな? とそんなことを考えた。
6月12日は「バザー記念日」