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4月27日は「ロープデー」
専門店に来るのがはじめてだったので、どのようなお作法があるのか分からなくて不安だった。店は静かな場所にあり、外からでは店内がどうなっているのかがよく確認できないようになっていた。一人で来る人が圧倒的に多いと聞いてはいたが……。
異様に重い扉を押して店内に入った。暗く静かな店内には、多くの商品が左右の壁一面に展示されていた。サイズやデザインが違う商品が並べられていて、店内の雰囲気と洗練された商品がマッチしていた。
店の一番奥には、映画のブレードランナーのレイチェルに似た人形のような人間がゆっくりと近づいて来た。
「いらっしゃいませ、どのようなものをお探しですか?」
なるほど、店員さんに詳細を伝えれば、それを出してくれるシステムなんだ。私は細かいデザインや素材をレイチェルに伝えた。
「かしこまりました、少々お待ちください」と言い、レイチェルは商品が展示されているある棚まで歩いていった。そこから一つの商品を取り出した。
「よろしければご試着されてみますか?」
せっかくなので、試着させてもらうことにする。
鏡の前に立つ私の横で、レイチェルはそっと商品を首にかけてくれる。その姿はとてもいけない物みているようで、鏡に映るその姿で少し安心する。鏡の自分は自分ではないように見えるから。しかし、現実の私の首にはどっしりと重みを感じた。
「いかがですか?」
「はい、サイズ感もよさそうです」
「こんな言い方は、こちらのお店にお越しいただくお客様に申し上げるのは失礼ではないかといつも思っていますが……よくお似合いです」
「ありがとうございます」
現実感のないレイチェルの隣で、鏡に映る私を見る私は、本当にどんな気分で今の状態を見ればいいのだろう。ただ可笑しいのはレイチェルに似合っていると言われて、うれしいという気持ちがあるということだ。
試着した商品を購入することに決め、レイチェルに代金を払う。袋に入れてもらった商品は首にかけた時とは違う重さを感じ、私は少し不安になる。これをもう一度、私は自分で首にかけることができるのだろうか。そのときはまたレイチェルにかけてほしいと思った。
4月27日は「ロープデー」