8月2日は「パンツの日」
僕のパンツが飛ばされたのは、8月2日のことだった。
そのパンツはブリーフで、洗ったばかりで真っ白で、ベランダに干されていた。そのパンツには僕の名前がきちんとお名前ペンで書かれていた。
お母さんからの衝撃的な一言に僕は持っていたプラレールの新幹線を畳に落とした。その衝撃で700系のパーツが取れた。
「パンツがないの。風が強かったから飛ばされたかもしれない。あとで買い物のついでに探してみるね」
お母さん今すぐ探してほしい、なんなら警察に電話して捜索してほしい。警察犬を出動させてほしい。僕の名前がフルネームでしっかりと書かれたパンツが行方不明なのだ。
ここにきて油性のお名前ペンで真面目に名前を書いた自分を呪った。油性のお名前ペンは洗濯してもお名前が落ちないのが利点。きっと僕のパンツには今でもしっかりと僕の名前が書いてあるはずだ。
まさか……風に飛ばされて学校まで行ってはいないだろうか? 明日学校に行ったら全校朝会で校長先生のお話の中で、
「えー、昨日大変に風が強かったですね。実はわが校にパンツが飛ばされてきました。日直の先生がたまたま発見して、パンツを確認したところきちんとお名前ペンで名前が書いてありました。これはとても素晴らしいことです。持ち物には名前を書くことはとても大切です。そしてその素晴らしい生徒はなんとこの学校の生徒というではありませんか。教頭先生と一緒にびっくりしました。これは大変に誇らしいことです、ではこれから名前を呼びますので取りに来てください。えーっと……」
そのタイミングで想像の中の僕は貧血でぶっ倒れていた。
いやいや校長先生、全校生徒の前では勘弁してください。その日から僕のあだ名はパンツマンになります。
僕のパンツはいったいどこに飛ばされたのか? 名前が書いてあるから道に落ちていたら交番に届けてくれるだろうか?
お昼ご飯の大好物のチャーハンも手に着かない、7歳の僕です。
8月2日は「パンツの日」