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ガンマ関数を無限級数で表したい

今回は積分表示されがちなガンマ関数を、級数(厳密に言うと関数項級数?)で表現したいと思います。
今回紹介するガンマ関数の級数表示は自分で発見したので、またも厳密じゃないとこが含まれるかもしれません。
また、最後が重要なので読み切ってください。

方法

流れは前回の記事と同じで、積分の代わりに和分、微分の代わりに差分を使って、階乗を一般化することにより、ガンマ関数に繋げていきます。

前回の記事を読まないと結構わかりにくいかもです、、!

和分差分

和分とは、数列を足し算していくこと。
積分の記号がインテグラル「$${\int}$$」なら、
和分の記号はシグマ「$${\Sigma}$$」ということ。

差分とは、数列の、隣り合う2数の差。
$${\Delta_{k}a_{k}=a_{k+1}-a_{k}}$$
微分を$${\frac{d}{dx}}$$で表したように、差分では$${\Delta_{x}}$$を使います。

「積分の微分は元の関数」のように、
「和分の差分は元の数列」が成り立つ。

準備

和分差分が微分積分の代わりになるとはいっても、完全に同じものというわけではないので、成り立つ公式と、どこが変わっているのか紹介し、確認する。

部分和分

部分積分のような、2つの数列の積を和分するときに役立つのが部分和分。

$${\displaystyle\sum_{k=a}^{b}(f_{k})\,(\Delta_{k}g_{k})}$$
$${=[f_{k}g_{k}]_{a}^{b+1}-\displaystyle\sum_{k=a}^{b}(\Delta_{k}f_{k})\,(g_{k+1})}$$

ところどころ引数が1増えてることに注意。
証明は 差分の定義式に注意して展開する のみなので省略。

x^n  っぽいもの

微分において、
$${\frac{d}{dx}x^{n}=n\,x^{n-1}}$$
が成り立っていたが、差分に置き換えてでは明らかに成り立たない
しかし階乗の一般化のためにはこのような関数、

$${a_{n}(x+1)-a_{n}(x)=n\,a_{n-1}(x)}$$

が欲しい。まあ結論を言うと x個の順列の数 が求める関数になっている。

$${{}_{x+1} \mathrm{P}_{n}-{}_{x} \mathrm{P}_{n}=n\,{}_{x} \mathrm{P}_{n-1}}$$

言われたら、「あ〜」って感じ。
組み合わせの、二項係数の有名な漸化式からでも導ける。

導出

やってることは前回と同じ。
まず、部分和分の式から、差分される方を$${{}_k\mathrm{P}_{n}}$$とする。

$${\displaystyle\sum_{k=a}^{b}{}_k\mathrm{P}_{n}\,(\Delta_{k}g_{k})}$$
$${=[{}_k\mathrm{P}_{n}g_{k}]_{a}^{b+1}-n\,\displaystyle\sum_{k=a}^{b}{}_{k}\mathrm{P}_{n-1}\,g_{k+1}}$$

ここで
$${\Delta_{n}g_n=-g_{n+1}}$$
を満たす数列を選べば、左辺の総和を$${G(n)}$$とすることで

$${G(n)=[{}_k\mathrm{P}_{n}g_{k}]_{a}^{b+1}+n\,G(n-1)}$$

きた。階乗っぽい。
そのような$${g_n}$$を求める。

$${\Delta_{n}g_n=-g_{n+1}}$$
$${g_{n+1}-g_{n}=-g_{n+1}}$$
$${g_{n+1}=\frac{1}{2}g_n}$$
$${g_n=g_0\,2^{-x}}$$

よって、あとは $${g_0[{}_k\mathrm{P}_{n}2^{-k}]_{a}^{b+1}}$$ が0となればいい。
$${{}_k\mathrm{P}_{n}}$$も結局は多項式オーダーなので
前回と同じ要領で、$${n\in\mathbb{N}}$$ならば
$${(a,b)=(0,\infty)}$$となる。

代入する。

$${g_0\displaystyle\sum_{k=0}^{\infty}{}_k\mathrm{P}_{n}2^{-k}}$$
$${=n\,g_0\displaystyle\sum_{k=a}^{\infty}{}_{k}\mathrm{P}_{n-1}2^{-k}}$$

$${n=1}$$で1になって欲しいので

$${g_0\displaystyle\sum_{k=0}^{\infty}k\,2^{-k}=1}$$
$${2g_0=1}$$
$${g_0=\frac{1}{2}}$$

完成?

整理すると、

$${n!=\displaystyle\sum_{k=0}^{\infty}\frac{{}_k\mathrm{P}_{n}}{2^{k+1}}\qquad n\in\mathbb{N}}$$

これで階乗を級数表示できたので終わり。



いーや、そうは問屋が卸さない。と思ったあなた。

なんとこの式、階乗を求めるために階乗(順列)を使ってる。
これじゃ意味なくね。

はい。そうです。数値計算には向いてません。

さらに、

これ、定義域拡張してもガンマ関数と一致しない

そう。$${{}_{0}\mathrm{P}_{n}}$$は$${n}$$が自然数の時のみ0なので、総和の上端下端を決めた時に自然数に制限していた。

ガンマ関数との関係

上記の通り、この関数は非負整数で階乗になってるだけで、ガンマ関数ではありません。
グラフに書くと、

赤が今回の級数、点線がガンマ関数

正の範囲では若干ぐにゃぐにゃで、
負の範囲では極が消えている。

でもなんとかガンマ関数に繋げたいので、式変形していく。

本来の漸化式はこうであった。

$${G(n)={}_{0}\mathrm{P}_{n}+nG(n-1)}$$

変形すると
$${G(n)=\frac{1}{(-n)!}+nG(n-1)}$$

これをもう一回適用すると、

$${G(n)=\frac{1}{(-n)!}+\frac{n}{(1-n)!}\\ \qquad\qquad+n(n-1)G(n-2)}$$

約分して
$${G(n)=-\frac{1}{(-1-n)!(n)}+\frac{1}{(-1-n)!(n-1)}\\ \qquad\qquad+n(n-1)G(n-2)}$$

もう一度適用すると

$${G(n)=-\frac{1}{(-1-n)!(n)}+\frac{1}{(-1-n)!(n-1)}\\ \qquad\qquad-\frac{1}{(-1-n)!(n-2)}\\ \qquad\qquad+n(n-1)(n-2)G(n-3)}$$

これを無限回適用することを考える。
右辺の、$${G(x)}$$が含まれる項は極限を取ると消える。よって、

$${G(n)=-\frac{1}{(-1-n)!(n)}+\frac{1}{(-1-n)!(n-1)}\\ \qquad\qquad-\frac{1}{(-1-n)!(n-2)}+\frac{1}{(-1-n)!(n-3)}\\ \qquad\qquad -\frac{1}{(-1-n)!(n-4)}+...}$$

シグマを使ってかくと

$${G(n)=-\frac{1}{(-1-n)!}\displaystyle\sum_{k=0}^{\infty}\frac{(-1)^k}{n-k}}$$

階乗があるが、逆数になってるので、
相反公式

$${(-x)!(x-1)!=\Gamma(x)\Gamma(1-x)=\displaystyle\frac{\pi}{\sin(\pi x)}}$$

より、

$${G(n)=\Gamma(n+1)\displaystyle\frac{\sin(\pi n)}{\pi}\displaystyle\sum_{k=0}^{\infty}\frac{(-1)^k}{n-k}}$$

ガンマ関数きたー
つまり、今回の級数は階乗に余分な関数がくっついた形であった。

完成

$${n\in\mathbb{Z}_{\ge0}}$$  のとき

$${n!=\displaystyle\sum_{k=0}^{\infty}\frac{{}_k\mathrm{P}_{n}}{2^{k+1}}}$$

$${n\notin\mathbb{Z}}$$  のとき

$${n!=\Bigg\lparen\displaystyle\frac{\sin(\pi n)}{\pi}\displaystyle\sum_{k=0}^{\infty}\frac{(-1)^k}{n-k}\Bigg\rparen^{-1}\displaystyle\sum_{k=0}^{\infty}\frac{{}_k\mathrm{P}_{n}}{2^{k+1}}}$$

綺麗だとは言えないが一応級数表示された。

浅い考察

まぁでも階乗を使っちゃってるから、
この式が日の目を浴びることはあるのか、?

和分差分を細かくしたやつでもできそう。
その極限とったら積分表示になる。

非整数バージョンの逆数のほうの級数は、色々調べてみる(研究)と奇数の逆数の交代和が関係していた。

ここまでです。ありがとうございます。

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