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汐街コナ・ゆうきゆう『「死ぬくらいなら会社辞めれば」ができない理由』(あさ出版)を読んで

 この記事に目をとどめていただき、ありがたうございます。
 今回は、私が読んだ本について思つた書きますので、どうか最後までお付き合ひ下さい。

 かつて私は朝7時出勤の20時退勤で、土日も月上限3,000円の手当で出勤しなければならない組織に勤めてゐました。毎月の残業時間は、余裕で100時間を超えました。ひどい時では、月に2日しか休みがありませんでした。
 なほ、当時のストレス解消方法は、過食と浪費でした。貯金はできないし、体重も過去最大に増えました(その後、糖質制限とウォーキングで体重を三年かけて元に戻しました)。
 結果、十月一日の未明に救急車で運ばれました。よくわからない背中の激痛。休みたい。しかし、翌日も仕事があるので休めない。深夜に退院して、結局いつもと同じやうに働きました。何も無かつたかのやうに。ちなみに、内臓の病気でした。
 そのことは職場の人には言ひませんでした。仮に、この状態を上の人に話したところで、

「みんな同じだから頑張れ」

と言はれるのが見えてゐました。

 これは今から、八年前のことです。ある地方の私立学校で本当にあつた話しです。私は、あの時、「もう無理」とは言へませんでした。辛くても耐へ、苦しくてもひたすら我慢し続けました。それが正しいこと、当たり前のことだと思つてゐたからです。それでも、わづか一年で雇ひ止めになり、東京に帰りました。ちなみに、雇ひ止めの通知は八月の末に受けました。
 やがて転職し、給与も休日も某地方の私立学校よりもはるかに恵まれるやうになりました。有給も取れます。しかし、今度は適応障害になつてしまひました。


 辞めるといふのは勇気の要ることです。安定を求めて心配する親のこと、自分の仕事を引き継ぐ人のこと、お祝ひをしてくれた人たちのこと…考へれば考へるほど、思考は狭まります。

「みんな頑張つてゐるのだから」

と自分に言ひ聞かせて、耐へる。耐へ続ける。耐へるのも、時には必要なのでせう。そして、それが人間的な成長をもたらしてくれる、かも知れません。

 しかしながら、その結果、自分の心が壊れてしまつたら本末転倒です。私は、耐へたら強くなると思ひ、どんなに辛くても耐へる選択をしました。しかし、強くなるどころか、ますます仕事が怖くなる。その結果が一度目の適応障害でした。
 続ける、辞める、どちらも勇気の要ることですし、その判断はとても難しいところです。かくいふ私が今、この立場にゐるからです。やりたいことをやつて、食べて行ける保証はなく、今辛い思ひをして続けてストレスフルの状態であり続けるのも苦しい。人はさういふ状態に居続けると、思考が狭まり判断力が鈍ります。
 本書を読み、心が何度も揺れました。


 似たやうな体験に、とても共感しつつ、同じやうに辛い状況にありながら耐へてゐる人もたくさんいませう。さうした真面目で心優しい人たちにとつて、本書は大きな光になるでせう。実際、私も本書によつて励まされました。
 多くの苦しんでゐる人が「自分なんか生きてなくて良い」、さう考へてしまふ前に、本書によつて救ひがもたらされることを願つてゐます。

 そして、多くの会社員が努力しても報はれない状況が三十年続いてゐるといふ現実も異常であるといふことを私どもは忘れてはなりません。現代人は努力が足りないわけではないのです。むしろ、日々、精一杯生きてゐます。まづは、そのことを認めてあげて、自分にとつて悪意ある他人の言葉に左右されないやうにしたいものです。
 本書から、私はこのやうなことを考へました。
 併せてお読みいただけたら、幸甚です。

 最後までお読みいただき、ありがたうございました。

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