チョコレート フレーバーホイール FRUITY
1IICCTフレーバーホイールとは
チョコレートテイスターとして味わいを記録する場合、共通のシートがあるほうが便利ですよね。チョコレートの世界では各クーベルチュール原料メーカーや、チョコレートブランドが独自のフレーバーホイールを出していて、そのどれもが違うので、何を基準にしていいかわからないという声も聞きます。
International Institute of Chocolate & Cacao Tasting (頭文字をとってIICCT)は、国際的なチョコレートとカカオの風味を研究してきた機関であり講習会を開いています。こちらが公開しているフレーバーホイールを今日は見てみたいと思います。
様々な風味をマップ上に表していますが、その味わいの系統によって、4つのゾーンに分類しています。また中心から外側に向けて楕円形の層が広がっているような形をしています。
2.それぞれの素材の味を探求しよう
このマップの中心にフレーバーがくるものは味わいのバランスがとれている基本のような風味で特にベネズエラのフレーバービーンズにはその特徴が現れますが、最もチョコレートらしいその味わいをCHCOLATELYという表現でセンターに置かれています。本来はカカオ産地、欧州、などそのエリアで多少はフレーバーホイールの中身を共通のわかりやすい食材に変更するほうが、そのエリアでの実際の使い勝手は良いかな?と思いますが、共通認識のもと、データを収集していき、その総合的な数値からありとあらゆる食文化、食歴の人の官能評価による評価を編纂していけるとも思うので、まずはこのホイールを使い慣れてこのホイールで評価していく、と自分で決めてやってみる、ということにしてみてはどうかと考えます。
日本国内だけでも、例えばぶどうを毎日のように食べていて、食べただけで品種を当てられる人もいれば、ぶどう=何をたべても単にぶどう、と表現しちゃう人まで様々にいると思います。どこまでも細部にこだわった表現は可能ですが、共感を得づらくなってしまうと思うので、私自身はあまり難しい表現をしないように普段は意識しています。誰でも食べたことがある、イメージできる言葉を探しています。それでもピンとこないと言われることが多数あるので、味覚の共通認識は意外に難しく、味覚体験というのはパーソナルなものなのだなぁと実感します。
順番に素材を見ていくと、日本に住む私たちにはなじみのない素材もあります。特にそういう素材については知るチャンスがあるときにぜひ味わってみてほしいと思います。そしてその味わいを記憶のページに書き込んでいく。共通言語を使うための準備体操ですね。
意識して食べるのと無意識で食べるのではこの記憶の倉庫の入れ方が違うのでちょっと意識して食材と向き合うということをチョコレート以外ともやってみましょう。
3.一番つかみやすいFRUITYから
比較的チョコレートの味の中で誰もがすぐに感じることができるのが酸味だと思います。この酸味を持つFRUITYのフレーバーマップからせめてみましょう。
酸味があるというと食べず嫌いで「酸味がないものがいい!」と言われることが多いのですが、実際に試食をすると「美味しい」と言われるお客様も多いです。食べず嫌いで酸味は嫌いと思わず、さまざまな種類の酸味があることを体験していただくといいかなと思います。特に私たち日本人が一番慣れ親しんできたのはガーナ産のカカオを使ったミルクチョコレートだと思います。一般的にアフリカのカカオは酸味が少なくボディ感のあるタイプが多く深煎りローストのコーヒーでカフェオーレを作るごとく、ミルクチョコレートにぴったりでした。その味わい=チョコの味という風に食歴から喚起する方が多いのでチョコ=酸味?と違和感を感じる方が多いのです。(もちろんすでにチョコレート愛好家の方はチョコの美味しい酸味をご存知かと思います。)
他の食品の酸味の例えがわかりやすいと思います。例えば御酢を原液のまま一気飲みすることはできませんね。砂糖・醤油・出汁で割った三杯酢でいただく酢の物は美味しいと感じる、とか、レモン果汁ストレートは酸っぱくて飲めないけど蜂蜜レモン水は甘酸っぱくて美味しい!とか。意外と味の要素が複雑に構成される中に酸味があるものは皆さん大好きだったりします。
酸味+アルファから連想されるもの=果実が多いのでそういったものが中心にフレーバーマップに並んでいます。味は厳格に言えば酸味の量と質で分類しているとも言えますが、難しいことはいったんここでは置いておきましょう。なんとなく酸味と香りのバランスで味の感じ方がかわるのだな、ということが理解できれば〇です。
CITRUS (柑橘)なんといっても登場回数が多いのはこちらでしょうか。柑橘系の酸味。私はここはクエン酸の酸味と考えています。レモンの酸味を連想してみてください。実際に味わってみるのもありです。
BANANA(バナナ)濃厚な甘みに実はほんの僅かな酸味があります。濃厚な甘み、でもフルーツからくる甘みだなぁという味わいの時にバナナを連想します。
SOUR CHERRY(サワーチェリー)酸味の強いチェリーの総称ですが、日本のサクランボは甘いものが多いですよね。海外のチェリーは色も濃く酸味が強いものが多いと思います。缶詰のように甘く煮たものではなく生のチェリーのイメージです。酸味の他に少し皮にある渋みなんかも感じるような味わいで甘みが少なく感じるようなものをサワーチェリーの用途表現しています。
PLUM(プラム)すももですが、キュっとくるような酸味はおだやかで皮の部分に香りがとてもあります。ただ酸味がないわけではなく、桃に比べると酸味があるのですももという名前になりました。アプリコットに近いです。すももも最近は様々な品種が流通していますが、海外の方と味わいの認識を共通させる意味で食べたいのは海外出身のすももたち。ソルダムはぜひテースティングしてみましょう。熟していると私は花のような香りを感じます。これを書いている今(8月)はプラムがたくさん出回るのでぜひ食べてみてほしいです。
LYCHEE(ライチ)最近は旬になると日本でも生のライチが出回るようになってきました。中国やベトナムが原産といわれていますが甘みと酸味のバランスがよく、独特の香りがどこかオリエンタルなイメージ。これは食べないと表現できないですよね。
CRAMBERRY(クランベリー) こちらも日本ではあまり生では見かけない気がします。クランベリージュースは時々見かけるでしょうか?サワーチェリーよりは酸味が少なく、ラズベリーより甘みも少ない。
MELON(メロン) メロンは甘さと酸味どちらもありますが、ウリ科だけに少し野菜のような青い香りも感じます。
GUWANABANA (ワナワナ)このフルーツが一番体験しづらいのですね。この香りを特徴として感じるカカオもあるのでチャンスがあれば味わっておきたいものです。他の名前は、チリモヤと呼ばれたり、バンレイシと呼ばれたりカスタードアップルとよばれたりするものもこのフルーツの仲間です。一部の日本の温かい地域でも栽培しているようですが一般的には流通していません。台湾やベトナムな暑い国の市場ではよく見かけるのでチャンスがあれば食べてもらいたいところです。カスタードアップルという言葉はまさにという感じですが、カスタードのような濃厚なクリーム状の風味にアップルのさわやかな酸味のような感じがまざっている、、そんな果物です。
RASPBERRY(ラズベリー) 冷凍のものやフレッシュのものがケーキの上にトッピングされていたりするので食べたことがあると思います。甘酸っぱいという表現になりますがその中でも比較的甘みあ強く感じられます。
PHYSALIS(フィサリス)ホウズキです。日本でもここ最近生のほおづきを目にすることも多くなりましたが、中南米の市場ではよく見かけます。酸味と少しトマトにも似た青臭さや苦みを感じます。最近の品種のものは甘みが強いものがありますが、特徴としては強い酸味とこの青臭い風味が他の果実との違いかなと思います。
STRAWBERRY(ストロベリー)ラズベリーと同じく「赤い果実」の総称であらわされることも多いですが、ラズベリーよりは酸味が少なく甘みを強く感じる果物として認識しています。
BLACKBERRY(ブラックベリー)日本ではこちらもあまりメジャーにスーパーには並ばない果物だと思いますが、ラズベリーと同じ仲間です。ラズベリーよりは酸味が穏やかでどちらかといえば甘みと渋みを感じます。
今回は右上ブロックの解説をしました。右下のブロックにもフルーツが含まれていますが、そちらはDARK SWEETの説明の際に!
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