相手を好きになれば自然と褒めることができるのか。
毎朝起きると優しく顔を包んで、鼻と鼻でチュー。
「よし、今日もちゃんと鼻先湿っているね、合格!」
ペチャペチャと水を飲んでいると、静かに見守る。
「たくさん飲んで偉いね、尿結石にならないようにね。」
風が柔らかくそよぐ、ベッドの上で寝ているとき。
「気持ちいい場所見つけたね。さすがだね。ゆっくりおやすみ。」
ネコといると、独り言が増える。
ネコといると、褒め上手になる。
返事はないし、興味も持たれないけれど、いつもいつも話しかけている。
この、無駄に思えるようなふとした時間を、とても愛しているのだと思う。
「立派なおひげですね。ネコ界随一の感度の高さ!」
「ふわふわですね。大変素晴らしい毛並みをお持ちで。」
「肉球は優秀ですね〜。狭いところでも落ちないね。すごいね。」
「しっぽピン!は親しみの証拠ってほんとかな?ご機嫌だね。」
「首筋からチョコレートの匂いがするよ。かわいい上に美味しいの。」
「おしっこよし!うんちよし!いいのでたね!その調子〜。」
「眠い?眠いね。ネコは寝子だから、寝るのが仕事。お仕事ご苦労様。」
私、バカみたいにいつもいつもネコに話しかけて、下手したらネコへの熱い想いを自作の歌にして歌って、延々とネコを撫で続けて毎日遅刻しそうになって、会えない時はスマホの画像のストックを永遠に眺めて震え続けている。
こんなにも私を狂わせる存在は初めてで、狂える対象ができた私は幸せだなと思う。
「いい子だね。かわいいよ。素敵だね。ふわふわね。頑張ったね。すごいね。」
ネコ、生きてるだけで、そばにいるだけで、自然と褒めてしまう存在、すごい。
人もそうなのかな。
好きになれば自然と褒めることができるのかな。
「存在するだけで価値がある」と、認めていける優しい世界になれないのかな。
わからない、人はやっぱりもうちょっと複雑だ。
ネコを見つめながら思う。
小さなことなど気にせずに、もう少し人にも優しくしてみようか。
ネコは神。
世界の真理を教えてくれる。
まだまだ学ぶことがある。
一生崇拝する。