見出し画像

s.o.s


“いい気味だと思ってるでしょ?”

倒れて動けなくなったわたしにあなたがキスをする。ただ黙ってご飯を作ってくれた。

“今日が最後”

そう言われた日から、
泣いて泣いて感情をぶつけた日から
何ヶ月経ったんだろう。

“あなたはそうは思わないかもしれないけど、自分はずっとあなたたちから離れないよ。一生側にいる。そう決めてるんだから”

何も言わないで話だけ聞いてくれる。
何も感じない。じゃあそれで向こうの女と別れたら、あなたはまた何食わぬ顔で戻ってくるの?わたしに男がいなくなったら、それで嬉しそうな顔をするの?

あなたにつけられた傷は消えないし、あなたのことは好きじゃないし、でも打算とか関係なく、人に優しくできないあなたがわたしのSOSを聞いて急いで駆けつけてくれる。


SIGMA dp1 Merrill ISO100 -1ev


“子どもたち連れて映画行ってくるよ”
“いまひとりになると死にたくなるから”


誰もいないショッピングモールの屋上から電話をかけた。寝起きの声がする。

“よく眠っていたの分かったね”
“なんでも分かるよ、あなたのことなら”


警備員が、金網に寄りかかるわたしに近づいてくる。死ぬ時に連絡するのはただ1人、あなたなんだと思う。



©︎2024 OHO KANAKO all rights reserved.



いいなと思ったら応援しよう!