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切迫早産での長期安静による筋力低下。痛みもメンタル低下も起こる。

切迫流早産での長期安静を経験されたことがある方、パートナーの方がそうだった、という方もたくさんいらっしゃると思います。

切迫早産に限らず、長期で安静にしていた方って、若かろうがなんだろうが廃用による筋力低下が本当にすごくて、人によっては


立つと自分が地面に突き刺さりそう

って表現される方も見えるし


宇宙から帰ってきたみたい…
体がずどーーんと重くて
体を前に倒したら起こせなくなるほど

と言われるほどの方も見えます。
PTなら、なんとなく「廃用による筋力低下だろうな〜」と想像がつくものの、一般の方や、医療者でも他職種の方からはあまり理解されず、


若いんだから動きなさい
筋力なんて動けばつくんだから!
もっと動かなきゃ!!!


と言われてしまうことは少なくないみたいです。

■筋力低下の定義が違う

一般的な感覚では、筋力低下ってひ弱で力がなくてダンベルが持ち上げられないような人というイメージなようで、いわゆる重力に抗した動きができるのは当たり前という認識なのかな〜というのが印象としてはあります。

若いのに、そんなことある??
みたいに思われてしまう中での生活は、そりゃご本人的にはつらいですよね…


■育児はすごい負荷量

生まれたばっかりの赤ちゃんでも、約3kgはあるわけで、自分の体を抗重力位の中で保っておくこともできない人に、いきなり3kgの負荷は、そりゃ酷な話ですよね…

しかも赤ちゃんにはそんな親の都合など関係ないわけで、どんな状態だろうが「抱っこしてゆらゆらしてくれないと、寝れませんけど〜!!!」みたいに泣いてくるわけですし、やっと寝たと思っても、ベッドや床にそ〜っと下ろすという動作がいかに体幹や股関節の筋力の必要な動作か…


■痛みも出やすい

妊娠すれば腹横筋や骨盤底筋、大殿筋は割と多くの方が使いづらくはなるので(臨床的な印象ですが…)、それだけでも十分体を支えておくことが大変です。

でも、廃用っぽくなってる方って、そこに加えて腰背部も股関節やら大腿部も足部も本当に全身のあらゆる部分で支えになるものがないので、ちょっと立ってるだけとかちょっと座ってるだけでも仙腸関節が激痛!!!!っていう方、実際にいらっしゃるんですよね…

痛いと訴えても、意外と産前産後の体の変化に理解があって仙腸関節痛をちゃんと見てもらえる場所って少ないようで、見てもらうこともできず…だんだん座ってることも苦痛になり、立ってるのも辛くなり、寝ていても痛くなり…

そんな悪循環になってしまっている方も…


■そりゃメンタルも低下しますよね

どんな状態でも痛いし体は重いし、でも赤ちゃんは待っててくれないし、他人からは理解もされず、どこで見てもらったらいいのかもわからず…

そりゃ…メンタルにもきますよね…(涙)

痛みが出てくると、体をどう動かしたらいいのかもわからず、歩くことも大変だし運動したくてもどうしたらいいのかわからない。でも他人からは「動かないから筋力がつかないんだ!」みたいに言われる…


■予防ができるなら予防が一番…

切迫早産で安静にしている方もみんながみんなそうというわけではありませんよね。人によって安静度合いは違いますし…
でも、実際にそうやって産後に困っている人もいるわけで…

ただ、妊娠中は赤ちゃんがお腹の中にいてくれるというのが一番優先されるべきこと。そのためにママたちはみんな頑張ってる。

切迫早産の医療的な管理は、医師の方針によっても異なると思うんですが、もし安静期間が長くなるようなケースがあるなら、状態を評価しながら動かせる範囲で動くためにどういうことをしたらいいのか?を伝えることができる理学療法士の介入って予防としては大切な介入なんじゃないかな〜ってやっぱり思います。


■産後の介入ではフィードバックが大事

産後ってそもそも寝る時間も少ないし、赤ちゃんが待っててくれるわけじゃないから、ただでさえ過酷ですよね。

正しく評価して少しずつ体感してもらえるようにPTを進めていくとやっぱりちゃんと状態はよくなっていきますが、廃用度合いがすごいほど、どうしても体が重い感じはしばらく続きますし、その間に赤ちゃんは重たくなっていって、なかなかよくなった実感って持ちにくいのもあったりします。

メンタルにきていると、特に「できない自分」ばかりをせめてしまうこともありますし…

私がこういう方に接する時に、すごく大事だな〜と思うのは、「できるようになっている部分の変化量をご本人がちゃんと自覚できるように、適切にフィードバックすること」です。

体の変化が体で実感でき、それこそが事実だと頭でも認識できると、それだけ前を向くことができる。

理学療法士は体を変化させるお手伝いしかできないけど、適切なフィードバックは、私たちにできるメンタルケアなのかもしれないな〜って思います。


とはいえ…
そもそも産後の体のケアに対する医療的な受け皿が少ないというのが、やっぱり問題かもですよね…もっともっと増えていくといいな〜って思います。


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近藤カナ@産科の理学療法士
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