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🇺🇸の母乳育児の歴史 #読書記録

少し資料が古いが、日本の母親の約9割は、生後1ヶ月の赤ちゃんに、母乳のみ、または母乳とミルクの混合という方法で授乳をしているという。

ただ、このグラフをみると、一時期昭和40年代ころ、母乳のみの授乳の割合が低下し、

人工乳つまり粉ミルクだけでの授乳が増えたことがわかる。

平成10年頃から、母乳育児の割合が少しずつ盛り返してきた、という感じだ。

**読んでくださっている方は、男性でも女性でも、お母さんは自分にどんな授乳をしていたのか、話をきいてみたことはあるだろうか?

そんな写真や思い出は残ってはいないだろうか。**

『出産革命のヒロインたち アメリカのお産が変わったとき』マーゴット・エドワーズ/メアリー・ウォルドルフ著 河合蘭訳 1997年初版

第3章は、母乳育児の衰退と復興、というテーマだ。

アメリカの母乳育児の割合については、母乳育児を始めたか、始めていないか、という割合のグラフがある。

日本よりもやや、早い段階で、母乳開始率が、がくっと低下し、そののち盛り返してきたことがわかる。

妊娠出産、産婦人科医療についての専門的な言葉も多いが、なるべく平易にまとめたいと思う。

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本を読み、1900年からのアメリカの母乳育児の歴史は

【1】昔からの知恵・方法・受け継がれた伝統の衰退

【2】科学!新しい技術!専門家!が絶対的!

【3】昔からの知恵や方法をきちんと裏付ける、科学的発見や研究がすすむ

といった流れであることがわかった。

まず、【1】【2】をまとめようとおもう。

20世紀まで、もし母親が授乳しないという選択をしたばあい、『もらい乳』が当たり前だった。

戦国時代の歴史などでよく出てくる『乳母』という存在は、まさに乳を与える女性という意味である。江戸時代には、乳母という職業もあったらしい。アメリカでは『ウェット・ナース』と呼ばれたらしい。

母乳育児は、母と子の愛情を育む大事な相互作用があると同時に、とても母親に負荷を与えるものだ。数時間おきに、夜間も、授乳をし、睡眠時間も減り、自分の栄養を分け与える。

裕福な女性はとくに、そのような負荷を避け、落ち着いた産後を過ごしたいこともあり、乳母を雇っていたといわれる。

しかし、産業革命を迎えた20世紀、アメリカでは母乳育児率が低下する。

その理由は大きく3つだ。

① ミルク企業の自由競争の激化。

初期の粉ミルクは、栄養も、衛生面も、保証されておらず、使用した赤ちゃんが細菌で下痢をしたり、水で薄められすぎたことで栄養を十分にとれなかったりといったこともあったという。

しかし企業は開発をつづけ、完全に密封、清潔、栄養も赤ちゃんに合わせたもの、簡単といった商品を売り出し、

とくに母乳育児に悩む母親たちの不安と不便を解決するような売り文句で、販売を展開した。

母親が栄養を十分に取れない場合、母乳の栄養も不足する。

そのため、貧困層や、発展途上国では母乳よりも粉ミルクのほうが、赤ちゃんに良い、という宣伝のもと、積極的な市場展開がなされた。

②女性たちが、伝統的な智恵を受け継ぐタイミングを逃したこと。

「科学的方法」が権威にあった時代、女性たちの中で、女性が伝えてきた伝統的な知恵に対しての強い偏見と、拒絶がうまれたという。

それは、社会の中で抑圧されてきた女性蔑視からの解放のひとつの運動でもあったのだけど、そのなかに母乳育児もふくまれた。

育児の専門家である偉いお医者様が教えてくれたことがあるの、近所の子育て経験豊富というおばさんのアドバイスなんていらないわ、ということである。

しかも、消毒され、自身の体を傷めることなく、いつでも好きな時に、赤ちゃんに栄養を与えることのできる哺乳ビンは、近代の技術の象徴で、良い自由のシンボルになった。

③女性の社会進出がすすんだこと。

アメリカでは1980年代前半、出産した女性の4人に一人が、4ヶ月以内に職場に復帰したという。とくにシングルマザーであれば、母親が稼がなくてはならなかった。

授乳は、赤ちゃんのそばにいて、赤ちゃんが望んだ時、に行う必要がある。働きに出る母親にとって、長時間赤ちゃんのもとを離れる間には、ミルクを与えることで栄養を与えられる、という選択ができることは助かっただろう。

そのような理由で母乳育児離れがすすむなか、母乳育児と科学を結びつけた研究者たちがいた。

**【3】母乳育児の利点、方法を、科学的に裏付けるという試みである。 **

科学、とは研究と統計に基づくものだ

心理学者のナイルズ・ニュートンという女性は、母乳に焦点をあてた初めての研究を行った。

牛乳を搾乳する動物の研究をもとに、

射乳反射という、赤ちゃんが乳房を吸うことで、母親の乳房の神経は刺激され、脳からオキシトシンというホルモンを放出させ、母乳がでるようになることが、人間の女性でもあることが発見された。

このオキシトシンというホルモンは、授乳だけではなく、産後の母親の感情や身体にも良い影響を及ぼすことが後々わかった。

また、母乳には、赤ちゃんを守る抗体がたくさんふくまれることも、研究からわかった。

このような数々の研究は、決してミルクを、またミルクを求める女性を否定するものではなく、ミルクの登場によって

抑制されていた母乳育児の魅力に、再び焦点があてられるきっかけになった。

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しかし、一度忘れられた、伝統的な知恵、方法は復活するのが難しい。

この章のなかで、こんな文章がある。

『1940年代当時、女性たちはすでに2世代も哺乳ビンで子どもを育てていた。違った方法を見せてくれる生きたモデルは、もはや存在しなかった。...古い智恵や、逸話や、方法を覚えている人は誰も残っていませんでした。』

そのように誰も、くらいまで言い切ることはできない気がするけれども、

自分のことを置き換えてみるとわかる気もする。

私は多分助産師いう仕事をえらばなければ、自分が妊娠出産するまで、授乳のことをなにも知らなかっただろうと思う。

街の中で、身の回りの人で、一番近くて母親でも、授乳している姿や、その方法を、自然に示してくれる人や、場所はない。

母乳育児の有無、方法については、今もネットを検索すると、様々な意見が出てくる。

私は助産師として、きちんと科学的根拠に基づき、目の前のお母さんと赤ちゃんにより良い方法で授乳ができるような支援をできるようになりたいと思う。

その道は遠く、複雑で難しいかもしれないけど...

参考資料http://www.skepticalob.com/2013/08/does-breastfeeding-matter.html

江戸の乳と子ども いのちをつなぐ

http://www.yoshikawa-k.co.jp/smp/book/b253162.html

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