企業のビジョンは次代を連れてくる
「やっちゃえ、日産」のコピーが耳に残る日産のCMが、矢沢永吉からキムタクになって、おおお。。!と目を見張ったワタシ。同時にロゴマークも新しくなって、久々に企業が描く新たな時代の姿にワクワクする広告だと思いました。
・アイコンタレントの代替わり
矢沢永吉やキムタクの好き嫌いは一旦置いといて、(私は2人とも嫌いじゃないですヨ。。)タレントとしての位置付けや存在感で見ると、この代替わりは上手いなぁと思うのです。何をやってもその個性が際立って、唯一無二。賛否両論ありつつも、ナショナルカンパニーの看板としては、それこそが相応しい王道感なわけです。で、キムタク、最近頑張ってるじゃないですか??同世代(ちょっとおねいさんだけど。。)としては、応援したくなるし、この世代が社会の中心となる時代であることは間違いないとすると、代替わりの重責感を共有するような気持ちさえ持ってしまうのは私だけかしら。。笑
しかも、ちゃんとカッコよくスマートに撮影されてますよね、見た目大事。。永ちゃんも良かったけど、若返った感あって、とても印象的!
・ムーンウォークが象徴すること
自動運転という、これまたキャッチーなテーマが、視聴者をスムーズにCMの世界に引きこんで行きます。室内に停められた車の隣でリモコンを手にムーンウォーク!!この流れるような動きとキムタクの表情が、運転というアクティビティを、今まで以上に軽やかでスタイリッシュなライフスタイルとして描いている。エンジン音、ガソリンの匂い、ハンドルの重み、俺が俺の手で運転しているぜ!という20世紀の車の楽しさとは、明らかに異なってますよね。もっとこう、スムーズで洗練されてて、軽やかで、それがこのムーンウォークの数秒間に込められていると感じます。音楽も軽妙でお洒落。口笛の音も、車と過ごす時間の気負いの無さ、楽しさを醸し出してます。それなのに衣装はスーツ!これが効いてるなぁ。。車は(特に自動運転の)もはや、手も服も何も汚れない、ひたすらに心地良い、まるで家電のようなツールなわけです。Fun to driveの、さらにその先の次元とも言えますよね。Driveすらしないわけですから、自分では。
・ロゴも刷新 フラットデザイン化
ロゴも変わりましたねー。やはり、フラットデザイン化の流れです。これについては別の機会に記事にまとめたいですが、デジタルデバイス上での見え方を意識して、あらゆるグラフィックデザインがフラット化する、いつの時代もデザイン様式の変化を生み出しているのは、テクノロジーの進化だと思います。でもこれがほんとに、軽やかで風通しの良い時代を感じさせるデザインです。好き嫌いは人それぞれで良いと思います。
・企業のビジョンとは
企業がビジョンを描く時、大きく2つのビジョンがあると考えます。
1. 自社の将来像
2. 自社が創る新たな社会像
1を語れる企業は多いですが、実は2を鮮やかに描ける企業は(特に日本は)意外と少ない気がするのです。
自社の事業を通して、この世界をどんな世界にしていきたいのか?いくつもりなのか?それを鮮やかにビジュアル化し、伝わる言葉も合わせて表現すること。これはとってもとっても大切な能力。特に現代のような超情報化社会において、このコミュニケーション能力が乏しい企業は、生き残りが難しいですね。。そういう意味でも、この日産のCMは15秒という時間で、次代のモビリティスタイルを表現していると感じます。タレント選びから選曲から衣装からロケ場所から、全てのディテールにおいて、考えられているわけです。
・ビジョンアウトが上手か下手か
社会において、企業の存在と役割は、働き方が多様化する時代でも、やはり大きなものです。特に、100年単位の大きな変化の只中にいる今、変化の先にある答えを日常生活の中で模索する消費者が見ているのは、企業自体の将来像の背景にある、次の社会の描き方だと思います。本来広告とは、その夢や美しさを表現するコミュニケーションであり、ポジティブなエネルギーを拡散し、社会を次代に導くメッセージであるべきだと、思うのです。それが伝わる企業の商品こそ、機能や価格の差を超えて、消費者を魅了するブランド価値を持っている。Appleが描く近未来のライフスタイルにワクワクするからこそ、みんなiPhoneを買うために行列を作るんですよね。サスティナブルなビジネス構造を持つ企業のサービスを選びたくなるのも、同じ理由だと思います。プロダクトアウトでもマーケットインでもなく、ビジョンアウトの時代。その表現やコミュニケーションスキルが、企業価値を左右することは明白なのです。
綺麗事と言われちゃうかもしれないですが、私は企業が見る夢に期待しています。美しい夢を見せてほしいし、その事で毎日をワクワクしながら前進したい。
クライアントである企業のコミュニケーションをデザインすることで、社会をより良い形に前進させるお手伝いをしていくことが、アンティー・デザインという企業自体のビジョンでもあります。がんばるぞ〜♪(ムーンウォークで口笛)