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オワハラの本質を事実(データ)からまじめに考えてみた

こんにちは、かなけんです。

■冒頭

本日のテーマはこちら。
「オワハラの本質を事実(データ)から考えてみた」

エントリーシートやSPI、グループディスカッション、個別面接といった選考段階を経て、最後に内定に至る新卒採用。

どの選考段階の合否判断であったとしても、ご応募をいただいた1人ひとりに対する態度を変えるつもりはありませんが、私たち人事も同じ"人間"ということもあり、最終面接まで進んでいただいた方に対しては、特に”思い入れが強くなる”というのも正直な気持ちです。
 
「最終面接→内定→内定承諾」という段階において、たまに騒がれるのが"オワハラ"という問題。

オワハラという言葉自体は、「●●ハラ」という言葉が定着してきた最近に出てきた認識ですが、その行為そのものは、常に存在してきたものかと思います。

別のnote「内定の回答期限を設定するのはなぜか?」にて、期限を設定するのは”お互いの信頼関係を維持するため”と書きましたが、オワハラ行為は、”一方的”という印象ですよね。

ということで、このnoteでは、私のオワハラに対する見解をお伝えできればと思います。


■そもそもオワハラとは何か?

すでにインターネットにたくさん書いてありましたが、オワハラとは、”就活終われハラスメント”の略です。

(中略)企業が学生に対して就職活動を終わらせることを強要するということである。企業側が採用したいと思った学生に対して、現時点で就職活動を終わらせるならば内定を出すなどといった形で行われている。
(中略)この問題を受けて塩崎恭久厚生労働大臣は2015年7月31日に行われた記者会見で、企業に対してオワハラを行わないように呼びかけ、学生が納得しないまま就職しても学生と企業にとってよい結果につながらない可能性があると指摘した。
(中略) 一方、1980年代には一部の大学で「(志望の強弱は別にして、就職を希望したのだから)内定を取れたら以後の、大学からの推薦、紹介を行わない」としていた事例があり、就職を斡旋する大学も過去には誤った風潮があった。
※wikiから抜粋

ようは、会社が就職活動中の学生に対し、「内定を出すから他の応募先は断ってくれと、要求(強要?)すること」が一般的な解釈のようです。

ハラスメント(Harassment)という言葉が"人を困らせること、嫌がらせ"という意味のようですので、受け手にとって不快な対応をされること、と考えることが一般的でしょう。

そういう意味で「オワハラ=悪いこと」になりますが、私には少し違う見解があります。

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■オワハラはなぜ起きるのか

前提として、決して嫌がらせをしたり、困らせるような悪意はありませんが、私は「オワハラをすることは、時に学生の皆さんにとっての"成長の助け"にもなる」と考えています。

まず客観的なデータを見ていきますと、リクルートキャリア社のみらい就職研究所 就職白書2019版(P21~22)によると、2019年卒の1人の学生が獲得した内定は、"2.36社"だったそうです。(N数:1701)

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また、最初の内定を得てからも就職活動を継続した方は、"57.5%"とのことであり、継続した理由のTOP3については、以下だったとのこと。(複数回答)

■就職白書2019 「最初内定を得ても活動継続した理由」より

1 より志望度の高い企業の選考を受けるため( 70.6%)
2 内定取得先の企業でいいのか不安に感じたため(25.6%)
3 より多くの企業を知るなど社会勉強のため(17.4%)

このデータから率直に感じたことは、40%強の方は最初の内定で入社を決断される一方、60%弱の方は「志望度優先度の低いところから順に受けている」ということ。

もしくは、選考スケジュールが遅い大手企業が本命だから?、それとも志望度のない会社をあえて先に練習として受けている?、ということも考えられます。

志望度が低めの企業から"面接慣れ"をしていき、徐々に本命の志望度の高い企業の面接を受ける。

大学受験などでも”滑り止め校”を受けることがありますし、これは就活においても当たり前のことなのかもしれません。

”就職をしないという選択肢“が基本的にゼロである以上、”最低限、どこかに入社するための内定”が必要だ、という考え方もあるでしょう。

しかし、後に続く「最終的に内定を辞退した理由」のデータからは、”ある疑問”が浮かびます。(複数回答)

■就職白書2019 「最終的に内定を辞退した理由」より
1 業種が志望と合わなかった(25.3%)
2 職種が志望と合わなかった(20.0%)
3 勤務地が志望と合わなかった(20.0%)
4 給与水準が志望と合わなかった(20.0%)
5 勤務時間・休暇が志望と合わなかった(18.3%)

あくまで、2つ目、3つ目の内定した会社と比べて劣っていた、という相対比較の話かもしれませんが、TOP5だけじゃなく、TOP10までが「●●が志望と合わなかった」という理由となっていました。

はたして、1つ目の内定の会社は、”絶対評価”で見た場合、”最低限でも「入社したい」とは思えていた会社”だったのでしょうか。


また、別のデータとして、「面接人数に対して、会社が出す内定人数の割合と、その後の内定承諾や内定辞退の割合」もレポートとして出ていました。

■就職白書2019 「面接した人数100名あたりの内定数、内定辞退数データ」より
面接人数:100名

内定人数:25名(24.9%)

内定辞退人数:11~12名(11.5%)

分かりやすくいうと、面接をすると”4人に1人は内定に至る”ものの、内定提示後の内定承諾率は53.8%

仮にある会社の新卒採用において「採用予定数:100名」とした場合、その会社の内定を出す必要がある人数は「167.2名」まで膨れ上がります。

そして、その数の内定を出しても、最終的な内定承諾数は「90.6名」で着地した。というのが結果のようでした。(目標未達。涙)

皆さんはこの”数字(データ)”から、何を思いますか?

少し考えさせられますよね。

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■オワハラをしたくなっちゃうんです

会社側は、先々の内定辞退リスクを心配し、内定の”量”を追求せざるを得ず、「内定を出すための工数」が必要以上にかかった。また、「内定を出した方へのフォローや入社意思確認の工数」も同様に必要以上にかかった。

同じく、応募者の就活生の皆さんにとっても、最終的な結論は「志望と合わない(入社したいとは思わない)」と感じた会社でも途中辞退はせず、いったん最後まで選考を進め、内定を貰った。また、行く気がない内定先からの「内定フォロー(入社のラブコール)に都度、対応する面倒さ」や最後に「内定を断らないといけない手間やストレス」もかかった。

何だか、これっておかしい??と思いませんか?

当事者である一採用担当としては、”オワハラをしたくなる気持ち”も分からなくないです。


■オワハラを止めるのは誰か

先のデータを組み合わせてみましょう。

最初の内定をもらった方のうち、”57.5%”がその後も就職活動を継続する、とありました。

そして、継続する方の”内定を得た後も就職活動を続ける理由”としては、”70.6%”の方が”より志望度の高い企業の選考を受けるため”を挙げていました。

これらの割合を掛け算(0.57×0.70)すると、”約40%”の方が”志望度が高い企業がまだ先にあるから”と、一番最初の内定先の回答を保留するわけです。

これらを踏まえ、ざっくりとまとめると、以下の3つのパターンになります。

■まとめ(一番最初の内定を得た時の就活生の気持ち)
1 最初の内定先で入社を決断できる(42.5%)
2 最初の内定先は第一志望ではないので、まだ次を探したい(約40%)
3 最初の内定先でもアリだが、入社決断は迷う(約20%)

上記の2に該当する方(約40%)は、最初の内定先は、第一志望ではないとしても、”絶対評価”としては「入社したい!」とは思えているのでしょうか。

3に該当する方(約20%)は、他の就活の継続理由にある、「最初の内定で決めてよいのかという不安(約14%)」「もう少し多くの企業を見て社会勉強をしたい(約10%)」といった気持ちかと思いますが、すぐに解消せず、いったん寝かせていませんか。

2や3に該当する方の皆さん。最初の内定先に対して”入社意思の有無”をはっきりさせるための行動は起こしていますか。

具体的に、”不安の解消に向けた動きを取る”や、”具体的に社会勉強をどこまでやり切るかスケジュールを決める”は、できていますか。

私は、ここに”オワハラの本質”があるのではないか、と思うのです。

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■決断から逃げてはいけない

上記の1に該当する方(42.5%)は、最初にもらった内定先で入社する意思が持てたのは、はたして最初からずっと”第一志望”だったのでしょうか。私は、そのような方ばかりではないと思います。

きっと、会社説明会や面接段階での会社との対話を通じて、だんだんと「あ、この会社に入社したいかも」という気持ちを温めてきたのだと思います。

逆に「この会社は違うな」と思った時は、途中で”辞退”したり、優先度を下げて”保留”にしていたのではないでしょうか。

「入社したい会社」に絞って後工程を進めていった結果、「内定が出たらそこでもう決める」という”覚悟”があったと私は推測します。

一方、2と3に該当する方(約60%)は、就活を前に進める中で迫ってくる「1つ1つの小さなの決断(進める or 進めない or 辞退する)」を避けていたりしないでしょうか。

「不安はあるけど、とりあえず内定は持っておきたいから胸にしまっておき、内定が出てから後で考えよう。」
「内定が1つ出たけれど、他にまだ志望度の高い会社があるから、一旦寝かせてキープしておこう。」
「就活は多くの企業と接点が持てる貴重な機会だし、まだ選考がいくつか残っているから社会勉強のために、残っている企業は全部を受け切りたい。」

これらは、1つ1つの考え方自体は間違っていません。別に悪いことではないです。

ただ、”先に内定を出してくれた会社側の都合や配慮”を忘れてはいませんでしょうか。

そこまで入社する気がない会社でも、途中で辞退せず、何となく最後まで進めてませんか。

会社側にも採用計画人数や採用スケジュールがあり、他の応募者との兼ね合いをつけながらも、あなたを”優先”して内定を出したわけです。

その企業側の意図をくみ取った上で、”その内定をどのように扱うか”を考えていますでしょうか。

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■決断の連続、繰り返しこそ人生

ビジネスに限らず、”人生は常に判断・決断の繰り返し”です。

決断することは”怖い”ですし、”逃げたくなったり、先送りしたくなること”は誰もがあるはず。橋を渡る前に「割れないかだろうか…」と石橋を叩いてみたくなったりもするでしょう。

口コミ情報を見てみたり、親や友人に相談してみたり、”誰かに背中を押してもらいたい時”もあるでしょう。

どこに就職するかの意思決定は、当事者の「自己責任」である。

そんなことは、誰しもが分かっているわけですが、生まれてから学生時代までの間は、”自分で何かを決める”という機会は少なかった方が多いと思います。

なので、会社側としては、自分達の採用計画の都合だけではなく、”学生の皆さんが初めての決断をする”という瞬間に「できる限り寄り添ってあげたいな。」とも思っています。

もちろん、オワハラ問題として、表に出てきているような「決断を強制すること」「他社の選考を邪魔する」”100%悪”に決まっています。

けれど、”自分の人生は自分で決めるしかない”わけです。

オワハラ≒「決断から逃げてはいけない!勇気を出して!」という応援

捉え方によっては、こうなるのではないか。というのが私の見解です。

ある意味、人生の中で一番の決断になるかもしれない、最初の社会人としての第一歩である"1社目の内定承諾”

みんな応援しています。頑張りましょう。

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かなけん(金丸健人)@ディーバ人事(IT×会計)/キャリアコンサルタント
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