
まだまだ出てくる土の行方---福島県の除染残土処理の話
東日本大震災で原発の被害を受けた福島県。放射能汚染の報道が多かったころ、「除染」といって汚染された土や葉っぱなどを取り除いていたのを覚えているでしょうか。
除染の作業自体は終わりましたが、まだまだこの問題は終わっていません。
お話を聞かせてくれるのはこの人!
福島県の建設会社で働くしーちゃんです。
【ライター向け講座の中でお話を伺いました。】
ーーさっそくですが、どんなお仕事か教えてください。
福島第一原発の事故で放射能の被害が出ましたよね。そのときに「除染」といって放射能で汚染された土をどこかにどけていたのを覚えている方も多いと思います。
その汚染された土って未だにどうにもなっていなくて、現在、各自治体で「危なくない」ところに移す作業をしています。
私の会社は、郡山市の依頼で、おうちの庭とかに埋まっている除染で出た土を掘り起こして、市の指定する墓地に運んでいます。土を掘り起こすときとトラックに積み込むときに、確かに作業した証拠となる写真を撮るのですが、私はその写真を管理をして、市に提出する報告書に載せる作業をしています。
【ちなみに郡山市はココ。Google Mapより。】
ーー写真はどのくらいの枚数があるんですか?
今は、平成30年~令和元年の間の移送400件くらいを処理しているところです。多い時は1日5件掘り出しています。
1件の写真の枚数はまちまちなので、何枚かは…
現場の様子
ーー写真はどうやって撮るのですか?
現場作業チームが作業しながら撮ります。私は現場には行きません。忙しく作業しながらなので、報告書には使えない写真もけっこうあります。
ーー使えない写真って?
まず、写真に必ずトラックのナンバープレートが写っていなければならないので、写っていないものは使えません。
あとはコンプライアンスに引っかかるものですね。
作業員に放射線の被害が出ないように、作業するときは必ずマスクと手袋をしなきゃいけないのですが、暑いので、作業員が外しちゃうんです。
外したまま写真を撮って素手が写りこんだりすると、報告書に載せるわけにはいきません。
ーー重労働ゆえの裏事情。
また、過積載の写真も使えません。
掘り出した土は1.5tずつ袋詰めするので、2tトラックには1袋しか積めないのですが、うっかり2袋積んだ写真を撮っちゃうとダメです。
ーー過積載は往復するのが大変だからでしょうか。
そうですね。
土の量は埋めている土地の広さにより様々なのですが、広いところだと180袋になります。3tトラックに2袋積んでピストン輸送するので、90往復です。
ちょっとまとめたくなっちゃう。
ーーわかる気がします。使えない写真はどうするんですか?
トリミングしたり、撮り忘れとして処理します。
ちなみに写真は90往復なら90回とも毎回撮ります。
ーー毎回だとすごい手間ですね。仕事で面白いところを教えてください。
各現場チームの写真の撮り方が面白いです。
現場チームはだいたい3班動いているのですが、3つの班それぞれ違う撮り方をしてきます。写すものなど規則がきっちりあるのに、個性が出る。
ただ、面白いんですけど、なんでこんな撮り方したかなってなることもあります…
土のその後
ーー掘り出した土はその後どうなるのでしょう。
郡山市指定の墓地に運ぶのですが、それは仮置きです。環境省がどこかに持っていくらしいですけど、私たちは知らないんです。
せめて福島のどこに持っていくよとか知らせてほしいですね。
福島の外に出すと、行き先の町が迷惑しちゃうのも気になります。
ーー報告書以外で土の行方が発信されることはありますか。
ありません。
近所の人に、汚染土があるんで掘り起こしますよってアナウンスするくらいです。
ーーそうなんですか...。作業の終わりって見えてます?
まだ2、3年は続くんじゃないかな。自治体によります。
地域により2年くらい前から土の移送が始まって、郡山市は去年の12月から。それまでずっと埋めっぱなしでした。
今さら土掘ってどうするんだろうなという感じがあります。
福島の状況
ちょっと福島の話をしていいですか。
ーーどうぞどうぞ。
ニュースで天気予報とか流すじゃないですか。福島県はそんな感じで放射線情報が流れます。まだやっています。
公園とかに行くと、放射線量を測る機械がおいてあります。
ーーそもそもしーちゃんのお仕事も放射線のためですものね。
私は震災当時は学生で神奈川県にいました。当時、福島県が除染の残土を埋めたという情報は全然知らなくて、ただ、土を集めて保管しているとだけ聞いて、そうなんだーと流したくらいでした。
ーー私もそうだったのですが、福島県外の人が触れた情報はだいたいその程度と思います。
この仕事に就いたとき、まだ汚染土を動かしていて震災の仕事があるってことにびっくりしました。
ーーきれいさっぱり解決する日が来ることを祈るばかりです。ありがとうございました!
残土処理の報告書という、ちょっと特殊なお仕事のお話を聞かせていただきました。
残土がどこに行くかはわからないことが、お話を聞き終わってからだんだんと怖くなってきました...。
いつのまにかうやむやにならないよう、気を付けていきたいものです。
しーちゃん、ありがとうございました!