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【結婚式】元平成のウエディングプランナーは、令和の結婚式を見て何を思うか
11月下旬。晴れ。
寒空が澄み渡る土曜日に、
いとこの結婚式に参列してきた。
なんと、私、約10年ぶりの結婚式参列。
久しぶり過ぎて、何を着たら良いか悩む。
気づけば40歳。
クローゼットにしまってあった、膝上10cmのノースリーブワンピを着れる歳ではなかった。
パンツドレスをZOZOで手に入れ、朝からヘアセットをお願いして、意気揚々と結婚式に出向く。
結婚式。
そう、結婚式。
私が大好きなもの。それは結婚式。
何を隠そう、
私は元ウエディングプランナーだ。
新卒でブライダル企業に就職し、黒パンツスーツに黒ヒールで、胸元にはインカムを付けて4階建ての会場を走り回っていた。
長女を出産するまで、横浜のハウスウエディングの会場で、休みもなく早朝から深夜まで、どっぷり働いた。最後の担当パーティは妊娠6ヶ月の時だった。膨らんだお腹をさすりながら、ペタンコ靴で頑張った。
たった数年のウエディングプランナー人生。
それなのに、あまりにブラックであまりにきつく、あまりに幸せで濃い時間だったので、いまだにあの頃の感覚を忘れられない。
退職してからも、兄やいとこの結婚式も手伝わせてもらった。若い頃の私は、とにかく誰かが結婚式をするというと、手伝いたくて、口を出したくて仕方なかったのだ。
しかし月日は流れ、あの時おなかにいた長女も、今年15歳になった。
プランナーを辞めてから長女を産み、双子を産み、北海道に移住し、実家のコンビニや母のギャラリーを手伝いながら、気が付いたら、私は英語の先生になっていた。人生なんだかよくわからないものである。
結婚式とは縁遠い生活。
その間、結婚式に参列することは数回しかなく、最後に参列したのが10年程前の幼馴染の結婚式。あれが最後か。
そして、今年。
元ウエディングプランナーの私が10年ぶりに結婚式に参列する。ワクワクしない訳がない。
今回結婚するのは3歳上の従兄。
11月に式があるらしいという話は聞いていた。
招待されたらうれしいな、とは思っていた。
そんな、ある日、ピコン!と
従兄からLINEがきた。
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え??
もしやこれが、招待状?
LINEで?WEBのリンクから登録!?
うそだろ!すごい。
令和の結婚式、こんなんなってんのか!
これはびっくりした。
しょっぱなから、元プランナーは度肝を抜かれた。
私がプランナーをしていた当時、
招待状はとても大切なアイテムだった。
招待状の打ち合わせ、略して「招打ち」がまず最初にあって、「本来なら手渡しするのが一番丁寧な方法です」とか「あて名は必ず手書きの筆耕にしてください」とか「投函するなら大安にしましょう」とか新郎新婦に説明してたもんだ。
実際、当時はそれが常識だったし、もし「宛名をパソコンで印刷してきました~!」なんてお客様がいた時には、プランナーは大慌てでお客様にそれが失礼にあたる可能性を説明して、先輩プランナーに「お客様が恥をかくのは担当プランナーの責任だ」とこっぴどく怒られたもんだ。
それが、LINEで出欠が主流になるとは!!
時代の流れが速すぎて、三半規管がクラクラする。
でも、よく考えたら、それで全然いいよな!
「手書きじゃないと失礼」とか誰が言い出したんだろ。パソコンで印刷だって全然いいじゃん。
これは、大いなる時短とコストカットの革命だ。
コロナ禍以降、オンラインで済むものはオンラインで済まそう!という考え方が広まったあの時のように。
やらなくていいものはやめていこうという風潮が、多くの古臭いしきたりに固められていた「結婚式」という最後の砦にも、ついに風穴を開けたのだ。いいじゃないか。最高!
あの頃。
20cmの厚さのデザインカタログを抱えて打ち合わせに出て、数あるサンプルから、パール付きだのリボン付きだのと招待状のデザインを選んでもらい、何度も文面を校正にかけてはお客様に確認してもらい、やっと校了したかと思ったら「やっぱり字間違えてた!」なんてこともあったあの一連の作業が、もう不要という事か。いい時代だ。今の時代のプランナーになりたかった。
「宛名の筆耕は手書きじゃないと…」なんて、今そんな事言ったら、もう、老害だよな。あぶないあぶない。
それでいいよ。いや、むしろこれがいい。
今回の結婚式は、とにかくそんな
「むしろこれがいい。」の連続だった。
今日は、元ウエディングプランナーが感じた、結婚式の変化とその是非について語りたい。
①人前式が主流になっているらしい
今は人前式が主流らしい。いや、もちろん前から人前式はあった。でも、やっぱりキリスト教式の方が多かった気がするなー。「神父さんは外国人にしてほしい」とか希望が出たりさ。
宗教も多様性が叫ばれる今、人前式はすっごく「今」っぽい気がした。だってゲストにも色んな宗教的背景の人、いるもん。
ちなみに、今回のいとこも人前式。シンプルで本当にいい式だった。40歳過ぎて思う。演出なんてそんなにいらんのだ。シンプルが一番その人が出る。そして、心に残る。
②披露宴の乾杯ドリンクを選べた
私がバイトしていたホテルでは、有無を言わさず大人には全員シャンパンを注いでいた。飲めない人も車で来た人も関係なかった。ハウスウエディングはどうだったけ。これは時代なのか車社会の土地柄なのか。今回「シャンパンが良いですか?ジンジャーエールにしますか?」と初めて聞かれた。これも、飲まない人を配慮してのことだろう。一種の多様性だ。驚いた。そうよな。スマドリでええねん。
ちなみに、お酒がめっきり弱くなったのに、こういう時に実力以上に飲みたがる私の父(74歳)のシャンパンは、乾杯のあと、本人がよそ見してる間に叔母がジンジャーエールに取り換えた。ミッションインポッシブルのトム・クルーズみたいな鮮やかな手さばきだった。当の本人は全然気づいてなかった。ちなみにビールも途中からノンアルを注いでた。全然気づいてなかった。さすが、違いのわからない男だ。よかったよかった。
③その後のドリンク注文がモバイルオーダーだった
飲食店でよく見かけるようになったモバイルオーダーのサービス。卓上にQRコードがおいてあり、披露宴中のドリンクも!?と、びっくりした。
ただし、モバイルオーダーが面倒くさい人はサービスのスタッフに声をかけても良いらしい。
ドリンクを頼もうとした兄が、スタッフを呼ぼうと卓上のピンポンを押した。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/163117233/picture_pc_46682d5d6fc5d89a1ce99c185772c507.jpg?width=1200)
ピンポンじゃないよ。
それ、パンに塗るやつだよ。
しかもあなたが指突っ込んだそれ、私のだから。
④メイン卓(新郎新婦の席)がなかった
びっくりした。「高砂(新郎新婦の席)」はあっても、二人のテーブル、いわゆる「メイン卓」がなかった。私がホテルでバイトしてる頃なんて、高砂はゲストより20cmくらい高い段の上にあったけどな。時代だよな。
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確かに新郎新婦は披露宴の最中、料理をほとんど食べられない。だったら、テーブルいらないわな。その分「メイン卓装花」もいらんもん。革命。そして、そのおかげでもっとゲストとの距離が縮まる。アットホームな雰囲気が出る。あと、ドレスやタキシードも下半身までしっかりと写真に写る。
「メイン卓なくてよくない?」って言った最初の人、天才だと思う。
⑤主賓挨拶と乾杯挨拶がなかった
いらんいらん。どっちもいらん。
ゲストにしてみたら、知らないおじさんの長話、いらんもん。
今回のいとこの結婚式は、新郎新婦二人が乾杯の音頭を取った。これもとても良かった!アットホームだし、緊張して言葉につまる真面目な従兄を新婦がフォローしたりして、二人の人柄がさらに伝わってきた。
この、主賓挨拶と乾杯挨拶がなかったのは、トレンドなのか二人の意向なのかはわからない。でも、個人的には大正解だと思った。こういう式、大好物。
⑥お色直しナシ、よって、中座ナシ
これも、最高。
ドレスは、1着でもいいよなー。
新婦が着たいドレスが2着あるなら全然いいけど、昔はそういう問題ではなく「みんな2着着るから」「カラードレスも着るのが普通だから」ってお色直ししてた気がする。
あと、プランナーからしたら、ドレス1着と2着じゃお見積もりが変わってくる。売り上げは少しでも高い方が支配人に褒められる。だからめっちゃ勧める。でも、ゲストは正直どっちでもいいよね。
今回の二人は、中座しない代わりに会場に長くいてくれたから、ゲストの卓を一つ一つまわって歓談の時間をしっかりとってくれた。やっぱりゲストとしては直接おめでとうが言えて嬉しかったし、私たちの卓までわざわざ来てくれたのは嬉しかった。
⑦キャンドルサービス的な演出なし
私がプランナーをしていた頃も、キャンドルサービスはすでに下火だった。キャンドルだけに。って、ちがうか。
その代わり、「卓まわり」と言われる他の演出をプランナーたちは頭をひねって考えに考え、なんならそれでより高い見積もりに出来るように「×卓数」ではなく「×人数」のキャンドルリレーだったり、光るキューブだのをいろんなロマンチックな理由をつけて提案したものだ。
でも、これも大事なのは「二人がテーブルまで来て皆で写真を撮る」が出来ればいい訳で。演出は二の次ですよね。
今回の二人は、写真だけ撮りに来てくれました。それで充分。ゲストも、ヒゲのついたストローみたいなアイテム持たされたり、なんか色々やらされるよりは、これがいいよ。大賛成。
前回、私は自分がいかに「違いのわからない女」なのかについて書いた。
そんな私が「違いのわかる」数少ないもの。
それが結婚式。
私は大学時代から、結婚式だけはたくさん見てきたのだ。
「違いがわかる」とは「良いものと悪いものを見分けられる」という事である。
結婚式の場合、ここがむずかしい。
結婚式はおめでたい。
結婚式は二人の門出をお祝いするものだ。
その結婚式において「悪い点」なんて見つけちゃいけないし、違いが分かったとしても、絶対に口に出してはいけない。
でも、私には結婚式の違いがわかる。
わかってしまう。気づいてしまう。
自分でも嫌だけど、二人が何にお金をかけて、どこを削ったのかもわかる。
だって、毎日、何組も何組も色んな二人と出会い、打ち合わせして、数えきれない程見積もりを作ってきたから。
正直、会場名を聞いただけで、新郎新婦が何を優先して式場を決めたのかなんとなくわかるし、式に出れば二人とゲストとの関係性がわかるし、披露宴を見れば二人の人柄がわかる。
そんな私は、結婚式に参列するのが大好きだけど、怖いのだ。
お二人の人生最良の日に、人の嫌な部分に気づいてしまう自分がキライなのだ。
だから、実は今回楽しみでもあったけど、怖くもあった。自分の勘よ、鈍っていてくれ、とも思った。
勘は鈍っては無かった。
でも、だからこそ気づけたことがある。
今回いとこの式で感じられたのは、
二人の「良さ」ばかりだった。
これはお世辞じゃない。本当の本当に。
あの挙式を見ればわかる。
二人が家族から友人から、どれだけ愛されているか。本当にあたたかい人前式だった。
披露宴を見ればわかる。
あの二人は、自分のことは二の次なのだ。
お色直しや演出なども最小限で、自分のやりたいことよりも、はるばる来てくれたゲストとの時間を一番に考えてくれたのだろう。ゲストが心地よく過ごすことを優先してくれて、ゲストに感謝を伝えたいという二人の気持ちが心底伝わってきた。
正直、お料理もおいしかった。私はメニュー数とメイン料理を見ればある程度のランクがわかってしまう。本当に美味しいお料理だった。自分たちはほとんど食べれないお料理。でも、ゲストが一番楽しみにしているお料理。そんなお料理にお金をかける二人に、悪い人はいない。
すっごくいい式だった。
いい披露宴だった。
まじめで優しく気遣い屋さんのいとこの人柄も伝わってきたし、おちゃめでかわいくて気の利く新婦が、どれだけみなさんに愛されているのかも伝わってきた。
いい結婚式だったな。
やっぱりいいな、結婚式って。
私がいまもう一度結婚式が出来るのなら、
こんな式にしたかったな。
いろんな結婚式をみて、
一周まわって、そう思う。
ちなみに、私の結婚式。
現役プランナーとして働いていた24歳の時、自分の会場で式を挙げた。担当プランナーは当時の支配人だった。私がやりたい演出を盛り込みまくった上に、支配人の「これ、一度やってみたかったんだよな~」という演出まで、取引先の協賛で組み込まれた、お開きが1時間以上押すやりたい放題の式だった。
今思えば、あれは、ホントにひどかった。
支配人には今でも感謝しかないけど、ゲストへの想いは二の次だったと、正直に白状する。若かったんだ。だから許してほしい。あぁ、穴があったら入りたい。
もし、もう一度結婚式が出来るなら。
今回のみたいな式にしたいな。
シンプルで、あたたかい結婚式。
とりあえず、
もう一度結婚式をする予定は、
今のところ、ない。
ま、あったら困るか。