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対話型鑑賞@諏訪市美術館
先日、諏訪市美術館にて行われた対話型鑑賞のワークショップに、ゼミ生数人とともに参加させて頂いた。
このワークショップでは、同館の収蔵作品展「身近にあるもの」、そして常設展から3作品をとりあげ、ファシリテーターの方のもと参加者6人と会話をしながら作品を鑑賞した。
対話型鑑賞について
対話型鑑賞、という言葉を聞いて私がまず思い浮かべるのは、川内有緒さんの著作『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』 (集英社インターナショナル, 2021) だ。
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目の見えない白鳥さんとアートを見にいく | 集英社インターナショナル 公式サイト
私は普段ひとりで展示を見に行くことの方が多いのだが、この作品を読んでからは、「誰かと一緒に鑑賞すること」をとてもポジティブに考えるようになった。今回の機会は初対面の「誰か」とも会話するというものであり、どのような経験が得られるのかとても期待しながら参加させて頂いた。
細川宗英「男と女のマスク」の鑑賞
今回の鑑賞で見た3作品のうち、細川宗英「男と女のマスク」の前では、最も議論が盛り上がった。
今回の対話型鑑賞の際は、鑑賞中はタイトルや作者などの情報が一切隠されていたため、まずは作品と一対一で向き合い、じっくりと観察するところから鑑賞が始まる。キャプションがなく、作品を読み解くヒントがひとつ失われたなかでの鑑賞は、利き手を使うことを封じられているような不思議な心もとなさがあった。自分が普段、いかに文字情報に頼って作品を見ようとしているかがよく分かる。
一通り作品を鑑賞した後に、この作品がどう見えるのか、各々の見え方を話し合った。
ふたりの顔の穏やかな表情に注目し、「夕日を見て寄り添い合っている恋人同士に見える。」という人。
右側の男性の顔だけが崩れかかっている(溶けかかっている)ような表現になっていることに着目し、「戦争かなにかで傷ついた男の人が、女の人のもとへ帰ってきたときの様子に見える」という人。
同じように男性の表現に着目しつつも、「穏やかな表情の女性は自分の死を受け入れているが、男性はその悲しみに執着し続けている」という解釈をする人。
同じ作品を見ているのにも関わらず、着目する表現やその受け留め方には非常に大きな幅があり、他の人の解釈を聞くたびに「そんな視点もあるのか」という驚きと発見があった。
鑑賞を経て
対話型鑑賞では、その場で感じたことを発言することが求められるため、「どう見えるのか」「何が見えるのか」「何を感じたか」ということについて、自分の言葉を編みながら鑑賞をすることになる。
作品を見て感じたことを素直に人に話すことは、自分の頭の中をさらけ出すようで少し気恥ずかしい気持ちもあるが、こうして人に「伝える」、そしてそれを「共有する」意識を持ちながら鑑賞をすることは、自分の鑑賞体験をより豊かにしてくれるのではないかと感じた。(清水梨沙子)