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【藝術日記2024】旧開智学校

3年半の工事期間を経て、11月9日に再開館した旧開智学校へ行ってきた。


3年半に及ぶ耐震工事

展示室には工事中の作業の様子や工事のための解体作業で分かった事など、映像とパネルで一部展示されている。
この趣ある外観の見えない中身をみることができる。
和紙を5枚貼り重ねた紙天井は100年もつと言われるそうだ。映像で見ると想像以上に大変な作業。

解体工事の校舎内はYouTubeにもアップされているので、こちらを見てから行くと文化財である建築の保存について実態が分かる。

正面のモチーフ

旧開智学校の正面

開智学校のトレードマークとも言える、正面の天使のモチーフは東京日日新聞の表題錦絵からの引用と言われている。
愛くるしいフォルムと日本人顔の表情に惹かれる。

東京日日新聞 太田記念美術館のX投稿より引用

天使、というと勝手にキリスト教を連想するが、その下にある龍は元々浄林寺にあったものとされる。浄林寺は旧開智学校の移築前に隣接し、廃仏毀釈で廃寺になった後は開智学校の支校として使われていた。
天使といっても西洋文化の象徴としての天使のようで、しかも私には日本人顔にしか見えないその表情で文明開化を感じさせる。

旧開智学校の外観、その細かな装飾や塔屋から立派な学び舎として松本の象徴になったのだろうと思いつつ、この建築に当時どれだけのお金がかけられたのだろうとつい考えてしまう。
建築費用・資金面に関する議論も展示室では詳しく紹介されている。
松本城も旧開智学校も今まで残され、国宝として保存されているのも、とある時代の松本市民が頑張ったからなのか…と思うと、今の自分たちが残すべきものは何なのだろうと考える。

展示室

旧開智学校は特別展示室も含め全部で14の展示室(一部休室中)が一階と二階にある。
各展示室のもともとの使用用途も書かれているので、教場では当時の学び舎の情景を思い浮かべることができる。

浄林寺から貰ったらしい桟唐戸。飛竜、対は波しぶき。
印象的な色ガラスと照明。講堂にて。
床はみすず細工!職人の技を感じます。
八角塔へのドア

再開館された旧開智学校。
明治文明開化から日本の教育、松本市における”開智学校”というブランドについて紐解く学び舎である。

参考資料

・旧開智学校 まるごと博物館HP

・東京日日新聞画像引用元

余談

旧開智学校の耐震工事にも関わった信州大学工学部建築学科准教授梅干野先生の講演会「松門文庫から紐解く松本の近代建築史」を聴講した。

12月3日 18:30-20:30
会場:松本市立博物館 1階 講堂

浅間温泉本郷2丁目に所在する「松門文庫」。
松門文庫から話は長野県内、松本市内における近代建築に開かれる。

擬洋風建築と西洋建築。
その違いは大工の見様見真似か、西洋の建築を学んだ建築家が設計しているか。言われてみれば全然違うのに「雰囲気のある古い建築」という一括りにして見ていた気がする。
松本市内だけでも多様な近代建築を見ることができて贅沢な環境にいると改めて思う。
国宝旧開智学校、旧制松本高等学校、旧三松屋、そして松門文庫。
他にも数えきれないほどある。今回の講演でも沢山の建築について触れられた。
私は毎年冬に開催されているマツモト建築芸術祭で、普段は足を踏み入れる機会の少ない松本の近代建築を知ったが、梅干野先生のお話を聴くと街中の建築の見え方が変わるかもしれない。特に擬洋風建築は松本が開化する歩みをそのまま形として観ることができることが興味深い。それが後にどう捉えられようと残されていることで歩み自体を留めて、これからの街づくりを考える上で重要なものになるのだろうと思う。 (前田紗希)


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