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メメちゃんの冒険。



毎日、のんきに暮らしているのだけど、今日はとても楽しい一日だった。
私のこと、本当に人懐っこい猫ちゃんって、みんなが言うのだけど、
正直、どういう意味なのかよく分からないの。
私の家は、城下町から、車で30分くらい山奥へ入った場所にある。

クマゲラが鳴いたり、イノシシや猿が、時々畑に遊びにきたり、人間以外の生き物の気配がとても多い場所なの。
私の家族は、おばあちゃんとみんなに人見知り猫と言われる、クロちゃん。去年までは、とても長生きな猫生をすごした、片目のジャック君もいて、とても賑やかだった。
おばあちゃんは、まだどうしても、ジャック君とお別れできなくて、小さな箱の中でまだおうちにいるの。
今日は、朝からインターホンが鳴って、カッコいいおにいさんと、なんだかあわてんぼうな感じのおばさんがおうちに入ってきた。
朝の挨拶が終わったかと思ったら、すごい勢いで、なにか運んでた。
大きな機械や、バケツ。工具箱や、薬品。ブラシや雑巾が入った箱。

クロちゃんは怖がっていつも隠れる場所に行ってしまったけど、
私は、いったい何が始まるのか見たくてたまらなかったの。
ひとしきり、荷物を運んだあと、かっこいいおにいさんと、あわてんぼうのおばさんは家の中に入って、なにかやっていたみたい。

でも、わたしは、その頃、なにをやっていたか知らないの。
だって、私ったら、なにがはじまるのか見たくて近くにいったときに、びっくりして、おうちの外に出てしまったの。
おばあちゃんは、あわてんぼうのおばさんとおしゃべりに夢中で、私がいなくなったのに気づいていない。

玄関のドアはもう閉まっていたし、仕方ないからお外で隠れていよう。
まだ小さかった時、お外に遊びに行ったら、誰かにかじられて、大怪我をして帰ってから、いつも必ず、お散歩はおばあちゃんとしているのに。

怖い。
どうしたらいいんだろう。
おばあちゃん、どうしよう。

わたしが、ドキドキしながら、おうちの裏の草むらに隠れていたら、さっきのおばさんが、バケツを持って歩いてきたの。
エアコンの室外機にバケツを置きながら、キョロキョロ誰かを探している。
私と目が合ったら、驚いた顔で、変な歩き方で、抜き足差し足、おうちに入っていった。
「キジトラちゃんがお外に!」って言って。

それにしてもへんなおばさんだった。

隠れて見ていたら、バラバラにしたエアコンの外側を、お外の水道で洗いながら、どうしようどうしようってずっと言ってるの。

車に轢かれたらどうしよう。
熊に食べられたらどうしよう。
キジトラちゃん、どこー?
って独り言を言いながら、洗ってる。

なんだか我慢できなくなって、1メートルくらいまで近づいてみたんだけど、全然気がつかない。
やっと目が合ったと思ったら、腰が抜けそうになってて、

「お願いだから、そこで待っててね。お願い。」
って言いながら、猫みたいに、地面に手をついて、四足歩行でそろりそろりと、歩いて行ったの。

私がどこかに行かないように、ああやって歩いているみたいだったけど、やっぱりなんかヘンだった。
言われたとおりに待っていてあげたら、おばあちゃんと一緒に戻ってきたの。
その時は、ちゃんと二本足で立っていたわ。

おばあちゃんの顔を見たら、なんだかすごく長い間離れていたような気がして、嬉しくなって、思わずジャンプして腕に飛び込んじゃった。
あのおばさんは、ちょっと泣きそうになっていて、何回も良かった良かったって言ってた。

でも、なんで泣きそうになっているのかしら。

1人でお外に行ったらダメでしょって、おばあちゃんにものすごく怒られたけど、なんだかすごい、冒険をした気分。

ちょっと、冒険が足りなかった。

あまりにも、楽しかったから、おうちに入ってからも、玄関の風除室から、お外でエアコンを洗っているおばさんを、ずっと見ていたの。

開けて開けてって、アピールしたけど、絶対に開けてくれないの。
「だーーーーめ!」て笑ってばかりいるの。

あんまり、私がにゃあにゃあ鳴くから、おばあちゃんはピンクのリードを持ってきて、久しぶりにお散歩に連れて行ってくれたわ。

やったぁ。

おうちの周りを一周。
大好きな草を食べて、私のリードと同じピンクのお花を眺めながら、お外の空気を吸って、おばあちゃんと歩いたら、すごく気分が良かった。
クロちゃんも来ればよかったのに。



 


メメ

「めめちゃんはどうしてそんなにおてんばさんなの。」

おばあちゃんは、いつもそういうけど、私も、クロちゃんも、ジャック君も、昔は保護猫だったから、おばあちゃんと安心して暮らせることが、嬉しくて仕方がないの。

私たち3匹は、全員性格が違ったけど、みんな平等にかわいがってくれるおばあちゃんが大好きなの。
私を、家族にしてくれてありがとう。

かっこいいおにいさんと、あわてんぼうのおばさんが、お仕事が終わって帰っていったわ。
おばあちゃんは、ずっと、私たちの事を、あのおばさんに教えながら、なんだかとても楽しそうだった。

笑っている、おばあちゃんを見るのが、私の何よりの幸せ。
今日は楽しい一日だった。
またね。




                     メメ。



これは、最近の出来事です。メメちゃん視点で書いてみました。
脱走した後、目の前まで来てくれた時は、本当にびっくりでした。
猫ちゃんのいるお宅では、搬入時の玄関の開けっ放しは、絶対にダメだと反省しました。懲りないメメちゃんは、めちゃくちゃ可愛かったです。


               ココ