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不妊治療ヒストリー62~n回目の採卵~

【※不妊治療が保険適用になる前の話です。現在の状況と異なる部分があります】


採卵日当日の朝

7時半までに来てくれとのことなので、いつもより早起きだ。

腹ペコなのに朝ごはんはおろか水分すらとることができないのが辛い。
お茶を飲みたくなるのをぐっとこらえ、「採卵のためだ…」と呪文のようにぶつぶつ唱えながら家事をする。

バタバタと家事をしている横で一仕事(採精)を終えて夫が優雅にコーヒーをすすってるのが視界に入る。
いいな、美味しいもの飲めて…と羨ましい反面、募るイライラ。

入り乱れる感情を抑えようやく家事を終え、病院へ向かう。

夫とは待合室で一旦別れ、まずリカバリールームへ案内された。
置いてあるベッドがなんとも寝心地がよさそうである。
術衣に着替えたら採血と注射(点滴)の準備が整うまでくつろいでいていいと言われたので遠慮なくゴロゴロしていた。
うん、やっぱり寝心地がいい。

ウトウトしかけた頃に、看護師さんがやって来た。
会話をしつつもテキパキと採血を終え、注射(点滴)もサクッと準備して後は採卵の順番を待つばかりとなった。
私の他に何人かいるらしく、声が聞こえてくる。部屋の位置的に私がトップバッターのようだ。

待ち時間にお手洗いを済ませ、「みんな頑張ろうな」と謎のエールを脳内で送っているうちに名前を呼ばれた。

採卵室へ

採卵室の中に入るとやたらと広い部屋に内診台がポツンと置かれていた。

過去2軒とも手術台タイプだったので少し拍子抜けしたが、内診台の方が脚をアクロバティックなポーズにしなくてよいから嬉しかった。

あとはまな板の鯉である。

あれよあれよという間に準備はすすみ、先生もいつの間にか登場。
あとは静脈麻酔を入れるだけとなった。思えば静脈麻酔は2度目。
病院は違うけど終わった後の吐き気とだるさは変わらずキツイのかと考えていると、「今から麻酔入れますね。一緒にカウントしてくださーい」と看護師さんから声をかけられた。

いーち、にー、さーん、しー

そこから記憶がない。
「終わりましたよ。車いすに座ってくださいね」という声で目が覚めた。看護師さんに支えられながらふらつく足で何とか車いすに乗り、リカバリールームへ。

寝不足とまだ残っている麻酔の眠気には勝てず、寝心地が良いベッドで泥のように寝た。
途中飲みものを部屋まで持ってきてくれたようで、目が覚めるとテーブルの上にペットボトルが置いてあった。まだ少しだけぼんやりする頭で有難く頂いた。久しぶりの水分。体中にしみわたっていくようだ。おいしい。

さて、何個採れたのかな

採卵が終わってからおそらく3時間は経過しているであろう頃に待合室へ再度案内され、若干疲れ気味の夫と合流する。
採卵数と採精の結果を聞くために順番待ちをする。

が、どうにも気持ちが悪い。
絶え間なく押し寄せる吐き気を堪えながらトイレに籠城する。吐いたところで出るものは先ほどの水分だけだが、堪えているよりは幾分かマシである。

吐き気が少し収まるくらいに落ち着いてから夫の元へ戻ると、診察室へ呼ばれた。

採精結果はまずまず、採卵数は予告通り4個であった。

気持ち悪いながらも心の中でガッツポーズをして、今後のスケジュールの説明を受ける。

採卵した卵たちは全て凍結することにした。
しかしこの時どこまで育てて凍結するのかということを確認するのを忘れていた。「初期胚でお願いします」と確認のうえ念押ししておけばよかったと後になって後悔することをこの頃の私は知る由もなかった。

とりあえず終わった。
オエオエ言いながら無事家へたどり着き、布団へダイブ。
後のことはさておき、再度泥のように眠るのであった。

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