「橋渡し」の前に-入学生へのメッセージ
新入生のみなさん、入学おめでとうございます。国際日本学部を代表して、みなさんの入学を心より歓迎します。
国際日本学部は2022年で3年目を迎えました。2020年4月に学部がスタート、2021年4月にみなとみらいキャンパスがスタート、そして今、2022年4月です。三段跳びでいうなら、ホップ、ステップのあとのジャンプにあたるのがみなさんの学年となる、と教員の立場では期待しています。
この2年間、新型コロナウイルス感染症の波が寄せては返すなかで、あるときはオンラインの授業で、あるときは感染を気をつけながらの対面の活動で、先輩たちは懸命に勉強そして大学生活の日常を保ち続けてきました。みなさんもまた、なかなか見通しがつかない状況のなかで、友人との「ふれあい」――オンラインでも、マスク越しでも――を何とか実現させてきたと思います。こうした想いこそ、国際日本学部が大事にしたい考え、「文化交流-多文化共生-コミュニケーション」に通じるものだと思います。
一方、予測不能な事態は国際政治にも起こりました。ロシアによるウクライナ侵攻のニュースを見るとき、ある種の無力感にさいなまれた人も多いように思います。人類が多くの戦争を経験した20世紀を過ぎてなお、国際協調という考えが軽視されるのを見るとき、私自身、大きな不安を感じたことは否定できません。
現在世界に漂っている不安と無力感に対して、どのように立ち向かうべきか? このように問うことは重要です。しかし、ここで国際日本学部の一員としてみなさんに助言したいのは、まずは足元を踏み固めよう、ということです。世界情勢の最初の一歩は、人間どうしの、一人ひとりの交渉からはじまります。ウクライナの文化や歴史を学んだり、ロシアの文学作品を読んで、国とはまた別の、普通の人々の多様な思いを知ることもまた、相互理解や「橋渡し」を進める上で重要なことなのです。
(表紙の写真の橋は、日本三古橋のうちの一つで、古典にも多く登場するのですが、分かりますか?)
わたしたちはどうしても、現在の不安な状態を脱するために、前へ前へと進もうとし、急いで答えを求めがちです。受験を終えて大学に入ったら次は就活の準備、就職したら次は転職、婚活…。人間はいつも何か「活動」していないと落ち着かないのかもしれません。とくに4月は決意したり、新しいことを始める季節ですが、そんなときも周りの風景にゆっくり目を留め、深呼吸をしてみることを忘れないでいてもらいたいのです。
国際日本学部が大事にしている言葉として、We all need roots and wings ! という言葉を、入学したみなさんに贈ります。足元にある「roots(根)」と広い世界に羽ばたく「wings(翼)」――、この二つはどちらとも必要なのです。みなさんと過ごす国際日本学部の4年間を楽しみにしています!
国際日本学部 学部長 熊谷謙介