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旧伊勢屋質店台帳プロジェクト その1

 神奈川大学国際日本学部歴史民俗学科の学生が、跡見学園女子大学の学生と共に、文京区指定有形文化財である旧伊勢屋質店の展示コーナーの制作に取り組んでいます。展示は2024年2月から公開予定です。実施にあたっては跡見学園女子大学地域交流センター、テイケイトレード株式会社埋蔵文化財事業部、地元の地域の方々などが連携して取り組む計画です。
 跡見学園女子大学の学生には、文学やまちづくり等を専攻する学生たちもおり、歴史民俗学科の学生たちには歴史学、民俗学、学芸員課程で学んだ知識をもとに翻刻や展示制作や展示会運営の主力となることが期待されています。
 この展示を作っていく過程を、「旧伊勢屋質店台帳プロジェクト」として紹介していきます。


質屋から見える庶民の生活

 質屋さんをご存知でしょうか?
 現在では馴染みが薄くなりましたが、質屋さんは着物など身近な物を担保にしてお金を借りることができるお店です。日本では中世から質屋さんが存在していたと言われており、質屋さんは歴史的に庶民の生活に寄り添ってきた存在です。ですが、質屋さんについての歴史学的、民俗学的な研究はあまりないというのが現状で、実際に質屋さんがどのように経営され、人々の生活と関わっていたのか詳細は明らかではありません。

旧伊勢屋質店

 私たちは今回、東京都文京区にある文京区指定有形文化財「旧伊勢屋質店」(跡見学園所蔵)が所蔵する『質物台帳』を分析し展示を制作する旧伊勢屋質店台帳プロジェクトに参加することになりました。
 プロジェクトは、旧伊勢屋質店を管理する跡見学園女子大学と、旧伊勢屋質店の調査、活用を行う跡見学園女子大学の学生グループ跡見「学芸員」in菊坂と連携して行っています。現在は、1937年~1938年の『質物台帳』の翻刻に取り組んでいますが、今後は旧伊勢屋質店における展示の企画・開催、資料の防災、パンフレットの作成、資料の修復などにも取り組み学んでいく予定です。

旧伊勢屋質店に残された『質物台帳』

 また、地域との関わりということで、旧伊勢屋質店の地元の菊坂町会の企画にも携わっています。例えば勉強会や街歩き、夏祭りなどを通して、子どもたちや地域の人々に地域の歴史を知ってもらう活動をしています。学芸員を志望する学生たちが、文化財を活用しつつ実際に経験を積む場として、このプロジェクトが意義あるものになることを期待しています。

地元町会の皆さんとの2023年度活動についての打ち合わせ

(歴史民俗学科2年 大屋恵実子)


台帳撮影作業

 旧伊勢屋質店台帳プロジェクトで分析の対象となる『質物台帳』の撮影作業が、埋蔵文化財や史料調査の専門企業であるテイケイトレード株式会社埋蔵文化財事業部において8月1日~4日の4日間の日程で行われました。私は今回、この撮影作業に撮影補助として参加しました。
 具体的には、写真の写し込みを変え、撮影後に、画像を確認する業務を担当し、専門家の指導のもと、資料を撮影しました。
 写真は一つの見開きページにつき2枚撮りました。これには綺麗に見られるようにという意味と、紛失の際の保険の意味があるとの説明がありました。また、史料には劣化も見られたので、一枚一枚を素手ではなく、手袋を着用して触れ、ページをめくる際も細心の注意を払って撮影が行われます。撮影の際は、なるべく史料が水平になるようにし、光が均等になるようにして撮らなければ綺麗ならないので、ページに応じて高さを出す置物を敷くという工夫がなされていました。他にも、ページとページの間の「のど」の部分の文章が、場合によっては見えにくくなるので、その際も、道具で細心の注意を払って押さえたりしながら随時調節して撮影が行われました。
 また、テイケイトレード株式会社埋蔵文化財事業部さまのご厚意により、8月4日には歴史民俗学科1年生向けに撮影作業、その他の文化財調査作業現場の見学会が開催されました。見学会では、古文書の撮影技術の紹介、都内で発掘された縄文時代から現代までの文化財の紹介や調査方法・技術について紹介していただき、文化財調査の最前線、実際の技術について知ることができる貴重な機会となりました。

台帳の撮影
東京都内で発掘された近世遺物についてのレクチャーを受ける
東京都内で発掘された近代遺物についてのレクチャーを受ける

(歴史民俗学科2年 中川大資)


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