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自分たちで企画・運営した講演会を振り返って~「コース演習」講演会(文化交流コース)

国際文化交流学科・文化交流コースの「コース演習」という授業では、学生たちが講演会を企画・実施したり、JICAなどへの校外研修などを行っています。

2021年度、中島朋子さんをお招きして実施した講演会について、企画に携わった学生たちのレポートをお送りします。

自分たちで企画・運営した講演会を振り返って

国際日本学部国際文化交流学科 二年
文化交流コース 林 結愛
  下谷 梓

1 「みんなで選ぶ」講演会に向けて

 10月22日(金)、世界銀行やUNICEFの教育コンサルタントとしてご活躍される中島朋子さんの特別講演会が本学で行われました。

 この講演会は国際日本学部国際文化交流学科の「コース演習」(文化交流)という授業において「みんなで選ぶ」講演会として企画されました。文化交流あるいは多文化共生というテーマのもと、自分たちが興味を持って主体的に参加できるような講演会を考え、グループごとにプレゼンを行いました。私たちのチームでは現地の実際の声や実体験に基づくお話、またコロナ禍での交流の仕方についてアドバイスをお聞きしたいと思い、フィリピンやウガンダのユニセフ事務所での勤務経験をお持ちの中島さんを講演者に推薦しました。そして企画コンペでは、15の企画の中から私たちのチームが優勝し、「UNICEFコンサルタントに聞く!多文化共生の姿」と題し、講演をしていただくことになったのです。

 本企画は前学期から準備を重ね、講演者とのメールでのやり取りに加え、夏休みにはzoomで打ち合わせを行い、講演内容を決定していきました。講演内容は二本立てで、一つ目はウガンダとフィリピンの教育とジェンダー問題について、二つ目はコロナ禍における異文化交流の仕方についてお話いただくことにしました。一つ目のテーマでは、中島さんのご経歴に基づき、私たちと同年代の海外の子たちはどのような教育を、どのような環境で受けているのか、またその背景にある何かを学びたいと思ったからです。二つ目のテーマではコロナ禍で行動が制限されている中でも、海外とのつながりを維持したい、交流がしたいとの思いから、現在はオンラインで教育支援をされている中島さんから貴重なアドバイスを頂ければと考えました。

2 講演内容

 はじめに、ウガンダとフィリピンにおける教育の現状と課題について、ジェンダー問題に注目して、お話をしていただきました。

 ウガンダは、経済成長とともに教育支援が拡大し、小学校に入学はできる一方で、進級率やその後の進学率は、近隣のアフリカ諸国と比較しても非常に厳しいといいます。この背景を知るために、子どもたちが学校に行く一日を、写真を用いて紹介していただきました。まず、水汲みや薪拾いは子どもの仕事とされており、朝食を食べる前に毎日行わなければなりません。また、学校の数が少なく、公共交通機関も未整備のため、徒歩で片道1~2時間程、通学にかかるそうです。そして、学校に着いても、校舎がない場合や、人材不足や給料の未払い等から、教師がいないことも多いそうです。さらに、生理用品・知識不足、児童婚、暴力などは、女子生徒が学校に通い続けることを困難にし、進学率の男女差の原因となっているといいます。

講演者の中島朋子さん

 一方、フィリピンは、男性よりも女性が出稼ぎ労働者として活躍することが多く、管理職に就くことも一般的であるため、都市部を中心に女子教育に力が入れられているといいます。しかしながら、課題も多く残されています。まず、7000以上の島々からなり、約140語以上の言語が存在するため、普遍的な教育を届けることが難しいそうです。また、キリスト教徒が大多数を占めるフィリピンでは、少数派のムスリム向け教育との価値観や教育方針の調整が課題となっています。そして、南部の紛争地帯(ミンダナオ島)では、貧困や災害の影響も相まって、国内難民の子どもたちへの教育支援が急務となっているとのことでした。

ノートをとりながら熱心に聞く学生たち

 次に、多文化共生を目指す上で、中島さんが日々大切にされている、コミュニケーションの姿勢についてお話をお聴きしました。中島さんは、途上国支援を行うにあたり、「北風より太陽」という言葉をモットーにされているそうです。北風のように「先進国」が「途上国」に上から言葉を言うのではなく、常にリスペクトの心を持ち、その国の人に「教えていただく」という姿勢が重要だといいます。また、お互いの文化間で大切なものが時に異なるからこそ、そうした姿勢が信頼関係の構築や、多文化共生の実現につながるそうです。

【質疑応答】

 最後に、学生からの質問に答えていただきました。ウガンダの教育支援に関わる質問からは、教員の雇用問題や政府による指導体制、日本の授業科目との違いなどについてお答えいただきました。フィリピンの話題については、日本とは異なるジェンダーギャップに注目した質問があり、より学びを深めることができました。

質疑応答の様子

3 企画・運営を終えて感じたこと

 講演会当日は中島さんに現在お住まいの青森からお越しいただき、また文化交流コースの学生の他に他学科の先生や学生も数名参加するため、zoomで中継しながら講演を行いました。途中、接続がうまくいかないこともありましたが、様々な観点の質問が飛び交うなど積極的な議論が行われ、無事に講演を終えることができました。

 私たちは文化交流コース一期生で、前例がない初めての企画を前に、期待半分、不安半分でしたが、何とか講演会を無事終えることができました。何かと不慣れな私たち学生に丁寧なご対応をいただいた中島さんをはじめ、多大なるご協力をいただいた先生方に感謝の気持ちでいっぱいです。

 私たち文化交流コースの学生は、企画から運営まで学生主体で行うという文化交流コース最大のミッションを乗り越えたことを糧に、また中島さんの貴重なお話を拝聴したことも今後に生かしていきます。

(本記事は神奈川大学人文学会が発行する学生部会誌『PLUSi』18号(2022年3月刊行)にも掲載されます。)


 


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