麦殿大明神、みなとみらいキャンパスに降臨!
歴史民俗学科の学生たちを中心とした有志ゼミができ、大きな麦殿大明神が製作されました! 麦殿大明神とは何か? 学生たちが解説をしてくれました。(国際日本学部note編集部)
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こんにちは。国際日本学部歴史民俗学科2年の八木です。今回は、「神大民俗」の活動をご紹介します。
有志ゼミ「神大民俗」始動
2020年4月に新設された歴史民俗学科は、一学年70人と他学部他学科に比較して小規模な学科です。これは、「学生同士の関係性が深まりやすい」とも捉えることができますが、昨年から続くコロナ禍によって同学年や他学年との交流はあまり見られませんでした。
大学での学びを充実させるために、学生同士の交流は欠かせないものです。知識のインプットとアウトプットの場が無いということは、学びの発展を妨げてしまう可能性があると思います。
そこで、コロナ禍においても意欲的に学業に向き合い、講義以外の場でも学びを求める学生が集う有志ゼミ「神大民俗」を1年生2名、2年生2名で立ち上げました。「神大民俗」はサークル活動ではなくゼミ形式で、歴史民俗に関する調査や活動を行います。その活動の成果として年に一回雑誌を刊行する予定です。
「神大民俗」では、神奈川大学国際日本学部歴史民俗学科ならではの活動を行いたいと考えています。活動の一つとして、神奈川大学人文学会が主催する「文化奨励賞」に、それぞれが論文を応募します。今年は2年生2名の参加ですが、1年生2名も来年の応募に向けて着実に準備を進めています。調査や執筆を行う際に、歴史民俗学科の先生方からアドバイスを受けることで、様々な視点を得ることができます。また、メンバー間でもアドバイスや意見を出し合うことで、お互いを高め合うことができます。1年生にとっては高い壁である論文も、先生方や2年生の言葉を通して少しずつ形の見えるものになってきているようです。これは、卒業論文に取り組む際の大きな糧になるでしょう。
また、歴史民俗学科は「この分野ならこの先生」と言える第一人者の先生や、博物館での実務経験のある先生が多く、他大学では得られない学びの場が用意されています。さらに、日本常民文化研究所の知的資産を活かした学びを行えることも非常に貴重な機会として与えられています。「神大民俗」は、「神奈川大学と言えば歴史民俗学科」「歴史民俗学科と言えば神奈川大学」と呼ばれるような道を切り拓いていきたいです。
さて「神大民俗」では、2021年9月21日(火)、初の共同作業を行いました。「麦殿大明神御降臨プロジェクト」です。プロジェクトの紹介に入る前に、簡単ではありますが麦殿大明神について説明します。
写真1 麦殿大明神の全部品がこちら。これが一体どのように組み立てられるのでしょうか…。
麦殿大明神とは何か
1862年(文久2)に江戸で麻疹が大流行した際、
麦殿は
生まれぬ先から
麻疹して
かせたる後は
我身なりけり
という歌が添えられた麦殿大明神の錦絵が出回りました。麦という植物には「芒(はしか)」と呼ばれる部分があります。この特徴を以って「麦は麻疹を最初から持っている」という解釈が生まれ、麦は「麻疹に打ち勝つ」「一旦かかった麻疹を軽くしてくれる」と信仰されていました。このような信仰が人の姿へと転じたものが、麦殿大明神です。
麦殿大明神については、学科専攻科目「歴史民俗資料入門」「日本の美術」の講義内で、木下直之先生(歴史民俗学科)によって紹介されました。私はどちらの講義も受講しており、麦殿大明神の姿に一目惚れし、個人的に全長20cm程の麦殿大明神を2柱を製作しました。しかし、その後も長期化するコロナ禍によって思うような大学生活や学びが行えず、それに対する悔しさもあり、コロナと闘う私達を支える心強い麦殿大明神をキャンパスにも迎え入れたいと、今回のプロジェクトを立ち上げました。
当日は午前10時に集合し、メンバー全員で材料(籠細工)を調達しました。みなとみらいキャンパス15階の講義室で麦殿大明神の製作に取り掛かり、約4時間後、無事麦殿大明神を迎え入れることに成功しました。
メイキング動画はこちらです!
https://youtu.be/4j935F8r8DU
写真2 麦殿大明神の足と胴体を製作中。足は麦殿大明神のバランスを左右する要です。
製作中は麦殿大明神の話はもちろんのこと、他愛のない会話をすることもできました。麦殿大明神の製作を通じて、「神大民俗」のメンバーは「共に学び、共に考え、自分自身の意見を率直に言える関係」となりました。この関係が、学びの発展にも繋がっていくことは間違いありません。これこそが大学で得られる「学友」なのではないでしょうか。
本記事では、他の3名も「神大民俗」や「麦殿大明神御降臨プロジェクト」に関する感想や考えを書きました。学友の生の声を感じて下さい。
山野辺(1年)
私は高校生まで性格上、受け身なところがあり、あまり自発的に行動するタイプではありませんでした。しかし大学生になったからには自分のそういった部分を変えていきたいと考えるようになりました。そんなときに先輩方からこの「神大民俗」に入らないかとお誘いをいただき、こういった機会はもう来ないと思い参加することを決めました。
今回の麦殿大明神の製作は「神大民俗」に加入してから初めての大きな活動でした。この令和という時代に工具や接着剤を使わずに籠細工と麻紐のみを使い作り上げていく過程に携われた事は非常に貴重な経験でした。またこの麦殿大明神を見ていると自然と笑顔になれる気がします。笑顔は人の心を穏やかにする一番の薬です。この麦殿大明神を多くの方々に見ていただき、少しでも笑顔が生まれ世の中が明るくなると嬉しいです。
田中(1年)
コロナウイルスで遠隔授業が続き、実際に“モノ”に触れて学ぶという歴史民俗学科ならではの授業スタイルが前期にはできませんでした。そんな状況の中で、前期にはできなかったこの学びのスタイルを前面に押し出した今回のプロジェクトには、非常に興味をひかれたため参加を決意しました。
制作当日一週間前、自分で完成予想図をスケッチしてみましたが、籠をどのように使えば人型になるのか正直見当がつきませんでした。しかし、当日籠細工店で材料調達をしたときには、メンバー同士のアイディアで麦殿大明神の原型を作ることができました。制作時、私は腕と武器部分を担当しましたが、麻紐を籠の小さくて細い隙間に通すのが思ったよりも難しく神経を使いました。他のメンバーも非常に苦労している様子でした。しかし、その甲斐あって、自分たちの予想を大きく上回る立派な麦殿大明神を作ることができ、とてもうれしかったです。今回のプロジェクトは自分にとって貴重な体験となりました。
原(2年)
こんにちは。国際日本学部歴史民俗学科2年の原です。私が「神大民俗」への加入を決めた理由は、自分の歴史民俗の学びをより多様な視点から深めたいと感じていたからです。
ただ、私はこの有志ゼミを私自身の中でプラスαの位置付けと考えています。それは、歴史民俗学科の友人達が毎日多くの見方や考え方を私に教えてくれるからです。例え興味の種類や関心の強さは違えど友人達は皆、歴史民俗を愛する人々です。私は学科の友人をかけがえのない存在と考えているし、彼ら彼女らは同じ学問を学ぶ学友です。それぞれ、私が取り入れる事ができるものを両方の関係から得たいと考えています。
麦殿大明神の制作において特に苦労した事は、麦殿降臨の為の材料集めです。麦殿の制作では私自身の麦殿の姿、有志メンバーそれぞれの麦殿の姿を総合した形で作らなければなりません。私が思い描いた麦殿の姿は「勇ましい」の一言に限るものであり、その要素は完成した麦殿の各所に見られるかと思います。ただ、他のメンバーの意見で、腰にはヒョウタンを携えていたり、顔には愛らしいまん丸の目を持っていたりします。一見調和しないように感じる「勇ましさ」と「愛らしさ」。しかし、見事にその両方を超越した麦殿大明神が製作工程4時間を経て神大に降臨しました。
写真3 麦殿大明神の腕を製作中。もう少しで完成です。
3人の考えを聞いて、私は「神大民俗」の可能性は無限に広がっていると思いました。しかし、歴史民俗学科を基盤にしたゼミであるからこそ、「継承」が重要な鍵となります。歴史学も民俗学も、後世へと伝えていかなければ価値を失ってしまいます。「神大民俗」も我々4名で途絶えさせてはいけません
本記事を通して、「講義以外の学びの場が欲しい!」「学びを充実させたい!」「学生同士で学びを深めたい!」と思われたのであれば、ぜひ声を掛けて下さい。歴史民俗学科の学生以外も大歓迎です。一緒に、歴史民俗学科を、国際日本学部を、神奈川大学を盛り上げていきましょう。
写真4 麦殿大明神が完成しました。勇ましい武士のようです。
写真1~4 2021年9月21日「神大民俗」撮影
動画編集:八木