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かわいい子には「旅」をさせよ-入学生へのメッセージ

新入生のみなさん、入学おめでとうございます。国際日本学部を代表して、みなさんの入学を心より歓迎します。

国際日本学部は2023年度で4年目を迎え、みなさんの先輩がはじめて卒業を迎える年度となりました。みなとみらいキャンパスに国際日本学部生が、1年生から4年生までそろうことになり、いわば国際日本学部が完成する年度を迎えることになります。みなさんは、コロナ期においても勉強を続け、さまざまな試練をへてきた先輩たちから、授業や大学生活についてアドバイスを受けることができるのです。

コロナに振り回された3年を過ぎて、神奈川大学は原則、対面授業を行っていきますが、みなさんには、これまで困難な状況の中でも互いに交流し、積極的に対話を続けようとしてきた先輩たちの想いを引き継いでもらいたい。それが、「文化交流-多文化共生-コミュニケーション」を大事にする国際日本学部の願いです。

とはいえ、「こんなキラキラした生き方はまぶしすぎて、自分には無理!」と思ってしまうかもしれません。また、ロシアによるウクライナ侵攻など、国際情勢は先が見えず、身近なところを見てもコロナなどの影響で、私たちは今までと別の環境で、他者に向かって言葉をかけることに臆病になっている――、そんな空気を感じます。この4月はとくに、新しい環境、新しく出会う人、新しい経験……と、新しいことに心揺れ動くことが多いと思います。

このように不安な心を早く安定させたい、というのが正直なところだと思います。でも待ってください! 不安定であること、カルチャーショックを受けること、今までの価値観を揺り動かされることこそ、交流の魅力ではないでしょうか。

ここで、日本でいう戦国時代と同じくらい昔のフランスに生きた、モンテーニュの言葉を紹介したいと思います。この時代のフランスも、宗教戦争で混乱した「定めなき」世だったのです。

旅の喜びというのは、まさに自分が、落ち着かず、定まらない状況の証人になれることにある。

モンテーニュ『エセー』(宮下志朗訳)

ここでの旅は広い意味で考えてください。これまでいた場所からの移動と考えれば、実家を離れて一人暮らしを始めることも「旅」ですし、新しい経験をすることも、新しい考え方をするようになることも「旅」です。

旅には不安がつきものです。列車は本当に来るのか、これから会おうとする人は待ち合わせの場所に来てくれるのか――、ひとり途方に暮れるときの、胸を締めつけられるような思いは一方で、何かわくわくするような感覚も与えてくれるのではないでしょうか。

このような不安と期待の入りまじった感覚こそ、国際日本学部の出発点です。安定した心ではむしろ感じとりにくくなってしまう、さまざまな生き方、多様な価値観を、柔らかい心で受け入れること、それは「主体性がない」とか、「ぶれている」ということを意味しません。自分の意見をきちんと持ちながらも、それに固執せず、しなやかに変えていく勇気をもつことが、大学での研究でも、これからの生活においても求められることなのです。

先ほどのモンテーニュは、こうした「旅」を、未知のものや、新奇なものによる精神の絶えざる「実習(エクササイズ)」とし、「最高の学校」とも呼んでいます。このような学校にこそ、神奈川大学国際日本学部はなりたい――、これから4年間、みなさんと厳しくも楽しい「旅」をするのを楽しみにしています!

国際日本学部 学部長 熊谷謙介


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