「Think globally, Act locally」 地域の福祉を実践するために (理事長講話#2)
私たちかなふくでは、毎月月初に、瀬戸理事長による講話の時間を設けています。この時間は、私たちの使命や大切にしている想いを改めて共有し、心をひとつにする機会となっています。私たちのストーリーを語る上では避けられない理事長講話。2回目の今回は、神奈川で活動する私たちの土台となる考え方についてです。
目標年度だった2025年
介護保険制度が2000年にスタートして、 2006年に大きな制度改正が行われました。このときに情報公表制度、地域密着型サービス、そして、地域包括支援センターが生まれました。地域包括支援センターを中核機関として、地域包括ケアシステムを作っていこうという政策が展開されたわけです。そのとき目標としていたのが2025年。2025年を目標に、地域で認知症高齢者を含めた要介護の高齢者を支えていくという、「点」ではない「面」での支援への取組みが始まりました。地域の社会資源を総動員して 事業所がネットワークを組み、市民連携の仕組みの中で(必要に応じて地域住民の支え合いにも十分考慮して)、地域包括ケアシステムを作っていこうという政策です。
もう20年以上が経ち、来年は目標に掲げていた2025年になります。いかがでしょうか。実感として、住民の方々が積極的に地域包括ケアに参加している姿勢をご覧になれていますでしょうか。事業者同士が医療と介護の連携を行い、介護予防や生活支援といった色々なサービスが切れ目なく適切に届けられているという理想の姿が、地域の中でご覧になれていますでしょうか。
地域包括ケアシステムの進化系
地域包括ケアシステムを制度の縦割りの中で終わらせず、さらに障がい者や子育て世帯も含め支え合っていくために、共生社会という言葉が生まれました。地域共生社会づくりというのは、地域包括ケアシステムの進化系と考えても良いと思います。もともと、地域包括ケアシステムは、介護システムの発展系として推進されてきました。そこから、介護のシステムだけではなく、障がい者ケアや子育て支援全般の政策を含めて、地域共生社会づくりを進めていこうという流れができてきたわけです。
地域の中のキーパーソンはだれ?
私たちが地域共生社会づくりを進めるというとき、キーパーソンとなるのは誰でしょうか。地域共生社会をつくっていくとき、地域における重要なキーパーソンとなる人が思い浮かびますか。「この人だったら大丈夫」というイメージが湧いてきますでしょうか。皆さん一人ひとりがその重要な役割を担ってほしいと思っています。そして、私たちは地域の中にその役割を担う人たちを育成していくために、かながわ福祉大学校の設立を考えました。 私たちは神奈川県を良くしていきたい。もっと言えば、市町村や市町村の中の小さなコミュニティをつくる皆さんが、住んでる地域をより良くしていってほしい。自分事として皆さんが住んでいる地域を良くしていくとき、どういう取組みが必要か、どういう役割を担えるか、その地域がどういう社会であってほしいか、自分が生活する上でどういう人たちと一緒に暮らしていきたいか。今や、そういうことを真剣に考える重要な時期に来ていると私は思っています。
福祉と政治、福祉と経済
福祉というのは、政治や経済と無関係ではありません。非常に関連があります。福祉を良くするためには、政治を良くしなければいけません。経済を良くするにも、政治を良くしなければいけませんね。政治というのは、非常に重要なことです。皆さん、ぜひ政治に関心を持っていただき、本当に地域を良くしてくれる人、日本という国を守ってくれる人を選んでください。政治と自分は関係ないよと考えていると、今のような現実が待っているわけです。日本国民が、もっと言うと、地域に住む人々が、幸せに生きられるような政治を実現してほしい。そのために私たちに何ができるのかということを考える。これは、未来を考えるということです。未来の自分たちの生活、あるいは地域社会がどうあるべきかを考え、今できることをすることが重要です。
予測不可能な時代に必要な心構え
これから何が起きるかは誰にもわかりません。今年も色んな災害が起きました。1月1日の能登半島地震から始まり、各地で豪雨があったり。「備えあれば患いなし」という考え方のもと、泰然として、慌てず騒がず、やるべきことをきちんとやる。将来に向けて、今何が必要かをしっかり考えて行動する、という心構えが重要だと私は思います。命を守るにはどうしたら良いか。備蓄も必要かもしれません。日本人は米があればなんとか生きていけます。水も火もあればお米を炊くことができます。私たちに今何が必要かということを考えて、行動しましょう。
そして、何より重要なことは視野を広く持つということです。「Think globally, Act rocally」という言葉をご存知の方は多いと思います。視野を広くし、その視野をもって地域で活動をする。視野を広くして日本の政治、世界の政治、日本の経済、世界の経済もしっかりと学びながら、そして地域の中で福祉をどう実践していくか。福祉というのは、みんなが幸せになるための行動です。みんなが幸せに生きるためにはどうしたらいいのかを考え、行動することが一番重要なことだと思います。皆さん一人ひとりがご自身の未来と地域社会のために、今何ができるのか、是非考えていただきたいです。
瀬戸 恒彦
※本文は職員に向けた講話を編集の上、公開しています。