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calmなsoulでさよならを

人生振り返り月(?)間、過去をきちんと真正面から受け入れるぞ作戦は続いている。歌を歌っていた私の最初のユニット、Rubiiな季節は前回で終わったので次はspeenaな季節をふりふり振り返りましょうよ。Rubiiがアルバム1枚とシングル3枚であれだけかかって疲労困憊だったのに、speena・・・倍以上あるよね、余裕で・・・とめげそうな心をりんっ!と律して、あの日の音に会いにゆく私の今日は至極穏やかな空気に睡魔が常に隣で喉を鳴らすサマーデイ、with 愛猫エメ。


Rubiiの作曲家・鈴木大輔が鮮やかに立ち去って、その頃深夜テレビ (クーミーターチャイ with 東野幸治さん) で司会アシスタントをやらせて頂いていたのも華麗に終わり、突如ぽつんとした22の春頃。SONYな契約も切れ、マネジ愛子に問われるは「何やりたい?」、いやそんなもん歌だよ、歌以外何やんの、何ができんの、でも曲書けないじゃんね、じゃあ作るよ、やってみるよ、歌いたい歌やりたい音楽形にして聴かせるよって買ったは中古のシーケンサー内蔵キーボード。KORGだった記憶。

"作曲なんて要はメロディだよ" と言っていた大輔に、このやろう私を捨てたくせにと思いながらこんな時でも助けられる事になるとはね、なんとなくメロディが浮かんできて、景色を言葉にして乗せる、知らぬ間にうつむいて歩く あたしは出来てる こんな日も・・・呆然としてたって歩けるし腹は減るんだ、コードが鳴る、打ち込んでみる、ドラムがどう鳴るのかわからない、晋也に入れてもらう、こんな感じじゃない?へえ、なるほどね、じゃあギター入れてよ、いいよ、ベースってどんなんだろ、ポーン、1小節に4分音符をひとつ鳴らす、まあいいやなんとなくで、できた。なんか曲、できた。

晋也はこれからどうするの?俺は自分のやりたい音楽がある、そうか、がんばってね、音楽というものにメンバーいち疎かった私は何もかもがあやふやで、晋也と加奈子は何が何でも一緒に音を奏でたいという強い絆はどうやらなかった、ここでもまた別れがあった。私一人で何が出来るだろう?歌うために。

高校生の時、カッチカチの型通りに作った曲を除けば、これが私の初めての作曲、処女作だ。その後みんなに聴かすもなんだか進まず、歌いたいのに歌えない日々に鬱々とする私をずっと側で見てきた当時の恋人に問われるは「一人でやりたい?」いや想像つかないよ、出来る気もしないし誰かとやりたい、おもしろい子達いるよ、えっ会ってみたい、金髪のロン毛 (後のspeenaのギター・シホ) と赤毛のアン (後のspeenaのドラム・ショーコ) に会ってリハスタで戯れる、なにこれすげー楽しい、事前にみんなでやってみたい曲リスト・私セレクションなVeruca SaltやButter 08や椎名林檎そして、calm soulと名付けた処女作を合わせてみる、うおーすげーいい、これがバンドってやつかおもしろいやりたい、やることになった。

新しい事務所に移った。男気とはこのことを言うのかと腹落ちする程男らしいプロデューサー・周防彰悟さんの元、新しいレーベルはavexな仲間と共に、3人娘は程なくしてデビューを迎える。散々悩んだバンド名は私のコアラのぬいぐるみの名前 "スピーナ" に決まり (既存の言葉や単語はどうにもダサくて嫌だった)、カタカナが可愛いと言う私の意見は周防さんの「ない」の一言に散り、英語表記にするならダブルeが可愛いと言う私の意見はすんなり通ってspeena、デビュー曲はcalm soulに決まった。

渋谷パルコ1館のcafe bongoでアルバイトをしながら作った曲はこの頃10曲くらい?あって、calm soul、スピーナ、ジレンマ、まかないのおそうめん4輪をかっこみながら頭の中で作ったガーリーロック、もしPVを撮るなら頭のドラムで、仰向けになって持ち上げた両足が2拍カウントで開いていき、あいぇいワン、で広げた足の間にショーコがフレームインしてくるっていうアホなのよくやって遊んでたLOVE POTION NO 69、シホとショーコがやってた可愛いカッコいいバンド "much-yo" から派生したチュロリーズリングやエゴロック、ヒルキラーもあったかな、デビューが決まってお店を辞めて、calm soulでミュージックステーションに出演することが決まった時は、cafe bongoの仲間をご招待したな。なつい。


calm soul

群青に近い青い空間を、シホのギターが重めにノックするように切り開いていく。ショーコのハットが静かに、メッケンさんのベースが確かに、少しずつ明るく、うつむいて歩くあたしの足先を照らす。THE BEATLESのI am the walrusみたいな不可思議にうねるストリングスが新しい世界の訪れを告げれば、クラッシュを鳴らせ、もう歩くしかない、顔を上げて、前を向いて、胸を張って、振り返らずに。

歌、そして歌詞、かたっ!堅い、カチカチや、いい意味で。この歌はキーが高い。誰もがそう言い、実際私にも高い。けど、このメロディが生まれた時にこの音だったんだから仕方ない。Rubiiが終わって、speenaが始まる。私にしてみれば、終わった恋にけじめをつけて次へ向かいますという所信表明のようなものだ。周防プロデューサーがspeenaのデビュー曲にこの曲を持ってきたのは、そんな私の気持ちを理解し、汲み取ってくれたからではないか、と思う。きちんとさよならしてから200ぱー純粋な気持ちで新しい場所へ、新しい人と向かいたいという、真面目な私を。でもどうだろう、いい曲だな、溢れ出る才能だなって言ってくれてたし、曲が最高だっただけかな、なんてほんと身内で褒めあって世話ないけど、大事じゃね?


" どこへゆくの? あたしが言った 空の国へ あたしが答える

   ほどいた手が慣れずに泣いた 指の間、君のあたたかさ。"


ねぇ大輔、ねぇ晋也、ねぇ私、あなたはこれから、どこへ向かうのだろう。私達は音楽と共にある同志だった、まるで恋人同士だった、友達ではなく。だから音を失ってしまえば一緒にはいられない、いる意味がない。ありがとうとすら思わない私の胸はきっと今あなたと同じように、背伸びして見えた道の向こうにあるものを知りたくて、うずいているのでしょう。いくつもに別れ伸びる道のそれぞれを、私達はさよならして進んでゆくのでしょう、前へ、前へ。



ヒルキラー

ロックとはこういう事を言うね。周防プロデューサーのレコーディングは厳しいの一言に尽きるので、カッチカチだった3人娘のプレイはこういう曲で羽根を伸ばすことを知る。たーのしーい!カナコの作るフレーズはギタリストには思い浮かばないからおもしろいと言ってくれたシホも、ヘンテコフレーズをクールに弾き倒す。この曲、このギターフレーズと歌みたいなもんだから。間奏には当時の私のケータイの留守電をそのまま再現したものをレコーディングした。「ハーイ!お電話ありがとう、カナコローズ (ボツにした芸名) は只今、お花畑でお昼寝中です。御用の方はメッセージをどうぞ、ごきげんよう♡」急用で連絡してきた人がこれを聞くと、イラッとすること間違いなし。

ヒルキラーってなんか作っちゃったんだけど、ヒルの様な気持ち悪い男を殺す私ってこと。当時恋人がいた私に「それでもいい」なんて言って恋をしていた男、その実私にではなく、自分に。叶わない恋に悶え苦しむ、自分に。おおう、思い出したらゾクゾクしてきた。可愛いかも、と思っていた人が、さむいかも、に切り替わった瞬間、声も顔も話し方も髪も腕もなにもかもがもう気持ち悪くて仕方なくて、退治せねばならんって歌。終わった恋を "後悔したくないから" なんて甘ったるいセンチメンタルでその時の自分を否定しないそのスタイル、私なら迷わずこっぱみじんにしてやんよ。君といた私なんてもんは全部くれてやる、時々思い出しては可愛がって、いい思い出とやらに変えればいい、私は君を消去するのに後悔はない。


" すべて忘れましょう 二人が出会ったことも存在も

  なかったことにしよう あたしのお願いなら聞いてくれるでしょ?"


ほんとにどうでもいいの、あなたのことなんて。ごめんなさいと思うくらいにどうでもいいから、今すぐ消えてくれ。ほら、どうせこれでまた悲劇に酔いしれることができるでしょう?ほんと好きね、ご自分が。



久しぶりに真剣に聴いたわ。いい曲だね、みんなが一丸となって前を見据えてる、凛としたデビューシングルでした。余談だけど、speenaのデビュー前とデビュー後でやってたの、エゴサーチ。どんなふうに変わっていくのかなって思って、自分とは、が、世間で。ミュージックステーションの後にしたら出てきた。記念すべきspeenaの初のネットでのざわめきは、かの有名な2ちゃんねるだったの。タイトルも鮮烈、" 椎名林檎の完全コピーバンド、speena!" だって。りんごちゃん大好きだけど、コピー?サウンドまるで違うと思うけど。好きだからこそ寄せるわけないじゃんか。巻き舌で歌うボーカル、え、ちゃんと聴いて、それ空耳の域じゃない?でもそれを聞いた人はおもしろおかしくざわめいてて、あー、こんな感じかぁ、これはやられるな、噂に聞いてた以上にメンタルやられるなって正直PCの前で呆然としてた。

そしたらさ、"このボーカル、Rubiiじゃね?" って出てきた。なんだかにわかにルビーな発言が増えてって、" Rubiiの方がデビュー先だよ" なんで知ってくれてんの、すげーうれしいんだけど。" じゃあ林檎がまねしてる!" うん、そういうんじゃなくない?そこどうでもいいよね。" このタイトル恥ずかしくない?" " 作った人が無知だから仕方ない" ・・・もうね、その全てが、Rubiiの私を知っている人に思えてね、うれしくてうれしくて、泣いたんだよ。やってきたことが無駄じゃなかったって、誰かにちゃんと届いてたんだって実感した夜だった。今でも忘れないや。余談にしては長いわね、失礼。

もういっこ余談ついでに、林檎ちゃんにお会いした時「大好きです、CD聴いてますよ」って言ったら、「それはそれは、申し訳ございません」って言われて。うん、やっぱりこの人大好きだって思った夜もあった。ふふ、素敵な人でした。


思い出が怒涛、もれなく煌いてる、忘れちゃいけない、忘れてもいない。いいね。

次回はspeenaのセカンドシングル、スピーナ。

んー、今日は長かったねー。疲れたでしょ。

最後まで読んでくれてありがとう。好き。

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