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ただいま、歌。

2020年12月20日サンデーナイト、LOFT9 Sibuya。
坂口喜咲ちゃんのイベントにお呼ばれして、歌ってきた。
8年ぶりに、自分の曲を、みんなの前で。

リハった、ちょっと緊張した。
ライトが眩しくて、マイクを通した自分の声がふぁーっとして
懐かしさを憶えた。

本番、やっぱりちょっと緊張した。
目の前にお客さんがいる、めっちゃ私のこと見てる、あ、あの子泣いてる。
きれいに歌うと上手に聞こえる自分の歌が変わるのは、こういう瞬間。
心が揺れると想いが膨らんで、歌う、が、歌いかける、に変わる。

会いに来てくれてありがとうね、そんな想いをたくさん込めた。
会いに来られないけど見ててくれてありがとうね、カメラの向こうにも。
楽しい、歌ってやっぱり最高に楽しいな。

ちょっとロックしちゃおう、おや、なんかしっくりくるな。
しんちゃん(佐藤信二)の横顔に熱を感じた、いいね、あがる。
舞台袖できさぴよ(坂口喜咲)がピョンピョンしながら踊ってた、なにそれ可愛い。
みんなが1曲、最初から最後までラブハンドクラップスしてくれた。

なにこれ、最高。最高に幸せ。

歌い終わった、爽快だった、暑くて汗かいた、喉がっさーなった。
きさぴよが、カナコさんおかえり、歌ってくれてありがとうって言ってくれた。
私はただの私なのに、歌わせてくれてありがとうなのに。

マリエ(ムラタマリエ)が配信のベイビーズコメントを読んでくれた。
おかえりって、待ってたよって、生きててくれてありがとうって言ってくれてた。

生きててくれてありがとう?

8年間の水底の記憶が一瞬でなだれ込んだ、死のうとした部分だけ、火花を散らして。
もうあんまり痛みを感じなくなった腕に立てた刃とシャワーの音。
心臓に突き立てたキリを釘みたいに打ち込んだ金属の音。
オーバーなドーズの翌朝に来た母が見た、嘔吐物だらけの部屋のベッドで死に損なってた私は夜中、この体が死なないように薬を吐き出していた事を覚えていない。

うつ病が治って今度は脳腫瘍がやってきた。
人がせっかく生きようと思った矢先になんだよ神、生きる意志を試しているのか?
生きたいと思っている人間に、死とはこんなにも恐ろしい。
生と引き換えに右耳の聴力を持ってった、右顔面と右声帯の麻痺を置いて。

でも、それでも、生きていられてうれしい。
生きていてくれてありがとう、の答えみたいな気がした。

マリエが続けた、私も生きる。
ただの私が、もう一度歌いたいだけの私が、誰かの生きる理由になる。
脳腫瘍の後に、家族や友人達が言ってくれたおかえり。
また歌うよって言ってから今日まで、みんなが言ってくれたおかえり。

待っててくれたんだ、私を。
涙の塊が、腹の底から一気に鼻の奥に駆け上がった。
あ、これダメなやつ。
一回泣いてしまったら、子供みたいな鳴き声と嗚咽出ちゃうやつ。
ビールで流し込んじゃおう、クピクピ飲んだ、おいしかった。

ベアトリーチェ(新しいマイク)が向いているのは私の口、ここから流れ出る音を拾うよっていうそのまあるいヘッドが、おかえりって言った気がした。

ただいま、歌。ただいま、音楽。
大好き、会いたかったよ。

ここまで来れた、みんなみんな大好きです、ありがとう。

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