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タナトス、彼女を殺して。
慈愛200ぱーの微笑みを浮かべたその優しい唇から小さな小さな星の粒と花の種を乗せた透明な息吹でどうか、夢とヒカリにさんざめいていた彼女の聖域に汚らわしいことこの上ないもので不躾に押し入り草花を踏みにじり陽の光を遮り可憐な唇を手荒く塞ぎ心を凍らせたものによって永く、あまりにも永く壊れたままで止まってしまったあの日の彼女をどうか殺してくれ今すぐに、もしもし神よどこにいるんだい、あぁ私が神をも召喚できる魔法使いだったならば、もしくは私自身が神であれば彼女を救えるのにちくしょうめ、いかんせん私はただの人間だ。
でもならば人間らしく無様に足掻いてみるの、神々が見たら滑稽だと笑うかもしれない、でもどうでもいい、今すぐしたいことが出来なければ私でいる(生まれてきた)意味などないのだから、今、私こそがタナトスだ、泣くことも忘れて暗闇で聞き耳だけを立て、眠ることも出来ずにいるあなたの元へとやってきた。
抱いてあげよう、撫でてあげよう、愛のキスをそして、一緒に眠ろう。
23、4の小娘は大人の女への階段を1000段抜かしで駆け上がり、妹のようなものを守るべく戦士になった夜、タナトスという曲が生まれたあの部屋へトリップする私の今日は秋の長雨、隣では衣替えで出したブランケットの上にまあるく丸まって眠る愛猫エメ、ランチは北海道物産店で買った毛ガニらーめんという至福な休日。
speenaをデビューからプロデュースしてくれた周防さんとお別れして(事務所を辞めて)、家を失った3人娘。avexなスタッフが新しい事務所を探してくれるも、なんだかんだで見つからないまま結果、avex預かりというなんとも特殊な扱いになる。レーベルも事務所もavex、ということ。早速これから的会議。
「今までの周防さんみたいに総合プロデューサーはつけずに、音だけ、サウンドプロデューサーを付ける形でやっていくのはどうだろう?」
「マネージャーを付けます(今までも時々仕事を共にしていたavexスタッフを)。」
「ただ、僕達はレーベルの人間だから、意見もそこからの見方になってしまうし、これから色んな場面で君達とぶつかったり、言いにくいこともお互い出てくると思うけどよろしくお願いします。」
今までの世界が一変する、つまりはこういうことで。
事務所とはアーティストにとって家族、家みたいなもので、音楽に集中するために他一切のすべき事と精神面のケアをしてくれる所っていうのが当時の私の概念で、だいたい合ってる。じゃあプロデューサーがいなくなる、とはどういうこと?
speenaの3人を商品として、客観的視点で整えていく人がいなくなる、ということ。私達が自分達をそういう目で見ていかなくては、セルフプロデュースしていかなくては、ということ。オーケストラで言うところのコンダクターか。
それくらいできるでしょ、今までだって私はその視点でやってきたし(自分の見せ方を迷った時には相談していたけれど、公の場でうんこと言ってもいいものか等)、なんなら今までよりも自由にできるんじゃない?くらいにしか思っていなかった、それがとんでもなく見当違いな考え方だった事に気づくのは、この後1stアルバムを作るその、最中だ。そんなに甘いもんじゃねえんだよな、自由とは。
実家とは、子供の作品の宝庫よね。
幼稚園の時に描いた絵や、よくわからない創作物の中に、きちんとspeenaのCDがもれなくいてくれることに、家族の愛をひしひしと感じる。
買ってから開けてないじゃないか・・・観賞用か、オタクか。
CDショップのお姉さんのポップがうれしいね。
シングルを1枚リリースしたら、アルバムを出そう。
そんな流れが決まってから、停滞していた音楽制作がまた始まった。新しいspeenaの、1枚目のシングル。好きなのやっていいよ、ずっと私達を側で見ていてくれたラブスタッフが言う。やりたいこと、出来なかったこと、我慢していたこと、音楽でたくさんあるでしょう、それ全部出していいよ、みんなで決めた5枚目のシングルはタナトス、カナコ、絵、描く?うん描く!ラブスタッフのシモーンは2人の女児のパパン、パパ起きて〜!と、かけたばかりのメガネの柄を破壊されがち、だのに毎晩夜遅くまで、イメージの止まない私に付き合ってはカフェで話を聞いてくれたり、外で絵を描き始めたら没頭してしまう私をまるで一人の世界かのようにさせてくれる魔法のような力を持った素敵セニョール、ペリエがお好き、これからのspeenaはどうあるべきか、どう舵取りしていくべきか、そんな相談事にも人生の先輩としてのってくれる、あぁあなたがいなければこの頃の私はアーティストとしても人としても迷子になっていたでしょう、誰よりもすぐ側で支えてくれてありがとう。
なつい。またショートにしようかな。
タナトス / speena
レコーディングをした。サウンドプロデューサーに上田ケンジさんをお迎えした。初めてお会いした時、なんとも優しい、穏やかな笑顔と声に安心感を覚えた記憶。タナトスのデモは当時Bメロがなく(私はAメロとCメロに重きを置きがち)、上田さん(早々についたあだ名はおケンジ)に作ってと言われ、えーもうこれ以上言いたいことないんだよなぁと思ったのでそのまま ”言いたい事はそう多くはないんだ” って歌詞にした。
それまでのレコーディングで、ギターフレーズ2小節を録るのに1日かけたり、スネアの音にムラがある、と何度も何度もムラのないプレイをすることで頭をいっぱいにさせたりと最高厳しかったspeenaのそれは、おケンジの ”リラックスして楽しく音楽しよう” モードに(私個人的にはこっちの方が難しかったけどね)。
いつも家で歌入れする時はしゃがんで歌っていた私は、タナトスという歌は、歌うというよりも話しかける、いや歌いかける、そんなイメージなので、本番の歌録りではしゃがんでみてもいいでしょうかと尋ぬれば難なく「うんいいよ〜」、おケンジはベーシストでもあるのでリハスタみたいにみんなでオケ録り、お夕飯してから曲始まりのピアニカを録る時にはスタジオを薄暗くしてお部屋感を出してくれて、ギターのミッキーさん(平間幹央さん)と二人きり、私のブレスでアルペジオ始まる、見てるめっちゃ見てる私の口めっちゃ見られてる恥ずかしいと思ってたらコンソールからおケンジ「なんかいいね〜、恥ずかしいね〜」・・・!!ちょ笑
笑顔が溢れるレコーディング現場だったなぁ、そのままの雰囲気の、温かくて優しい音楽ができた、可愛いあの子をみんなで抱いてあげられるね。
PVを撮った。八若道洋監督、お初。絵を描いてる時に、ジャケットだけじゃなくてPVも絵を使おうって事になっていて、八若監督は白い世界と敷き詰めた真っ赤なお花、楽器も白なら服も白、そこに色とりどりの絵達が踊るという素敵ワールドを構築、ドレスは高島屋で一目惚れしたネグリジェ、歌っていない時のカメラが苦手の極みなシャイガールカナコはカメラが近づくと逃げるように後ろを向くとそこにはドラムのショーコが ”大丈夫よ〜♡” と微笑んでくれる、ネグリジェなんだからブラジャーおかしくない?ってノンノンブラだった私が前かがみになる度に、”カナコ、胸!胸気をつけて!” と、サイレントヴォイスとジェスチャーでカメラの隣から指示してくるシモーン、八若監督が私に「はい。」と手渡してくれたマイクは真っ白なお星様、耳たぶが半分ちぎれた重くてでっかいピアスはペールトーンの宇宙、あの日あの夜あの部屋で彼女の悲しい話に憤怒と涙して戦士になった私の愛は、ハッカキャンディのように甘く優しく透明な世界をみんなで作り上げることが出来た喜びに今一度、震えた。
”ココロごとゆらしてやまない あなたといる日々
すこしくらい まちがえても大丈夫 なおそう。”
今のあなたを絶望から救うためなら、嘘をつくことも厭わない、その罪ならばあとできちんと償うから。投げられた石でもって付いた傷を、自分のせいだなんてもう思わなくていいよ、生きていてくれさえすれば、あとは私が、あの日のあなたを殺すから、ゆっくりおやすみ。
ハイアガレディー / speena
この頃ショーコと観に行ったライブで、THE JERRY LEE PHANTOMに惚れる、故にシンプルなバンドサウンドに影響され、作る、そしてゲストミュージシャンにピアノの細萱あゆ子さんをお迎えする、故に最高クールな曲になる、に決まっている。
” 暗闇と静寂を 時間と少しのアイを
与えてほしい・・・どっちだ?”
うるっせえな、放っておいてくれよ帰れ。行かないで、もう少し一緒にいてよ。
欲しがりにも程があるよね、どっちなんだと問われても、どっちもなんだしかたない、ぐるぐる回って答えが出ないならそれは、どれも答えだということ。選ぶのは自分なんだよ。
大迷惑 / 奥田民生(UNICORN)
周防さん時代に録り溜めていた、大先輩バンドの超絶有名曲のカバー。楽しかった。
肉をくれ / speena
マッチョな二人のマッチョな曲、かっこいい、ライブでやるのも楽しかった。
周防さん時代、デビューの時にみんなで考えたspeenaのロゴは、ほんとはコアラなんだけどデザイナーさんが描いたらクマっぽくて、でもなんだかいい感じだからってことで。このロゴすぴ、少し首を傾げて、いつもいつも私達の側にいてくれた、愛おしいったらありゃしない、誰かの想いに気づいたのなら、尚の事。
前回からしばし、間が空きました。人生の岐路に立ち、選んだ道を歩くにあたって、しばし英気を養う時間が必要だったあの日の私がリンクして、今の私まで。
当時はじっくり感傷に浸る間もなかった分、今の私がってとこあるかもね。そんなに簡単に次、いけねえよ。そして、いけねえ私でよろしいよ。
次回はspeenaの1st アルバム、much much more!! の予定で。
最後まで読んでくれてありがとう、好きー。