君達、スピーナスピーナやないですか
ダウンタウンのまっちゃんに、そう言われたよね。2000年にデビューして、2nd シングル「スピーナ」でHEY!HEY!HEY! MUSIC CHAMPという伝説の歌番組に出演させていただいた時に。「speenaが歌う歌はスピーナ!」ツッコミどころはここだと思われたんだろうな、他に大してないしな、どんな返しが正解なんだろうか、こんな時パッとうまいこと言い返せるセンス欲しいな、まあそこはショーコ担当だしいっか、結局「あはは〜、ほんっとすいませーん」みたいなことしか言えなかったような。天下のダウンタウン・喋りのプロフェッショナルを相手に、隣に立たせていただきながら内心 ”まっちゃん顔ちっちゃいなー” と、バレないように見つめていた記憶。TVに出る側になった自分はもう前のように ”まっちゃん” とは呼べなくなった。はまちゃんもそうだ。松本さんと浜田さんって呼ばなくちゃいけない。へんなの、なんだかなーなんて思ってたあの頃を思い出して、今日も華麗に振り返る20年前の煌き、mmm bop。
デビューシングル ”calm soul” リリース後、わりとすぐスピーナもリリースしたような。この頃のアーティスト活動は制作、先を見据えていい曲はどんどんレコーディングしていこう作戦と宣伝、主要な音楽雑誌のインタビューとTVショウ。ライブ?誰も知らない今やってもしょうがないじゃん、ってプロデューサー言ってた。だから自分達が世間でどういう存在になっているのか、まるで見えなかった。HPはあった気がする。でも言ってはいけない、書いてはいけないことだらけで、はて、私はアイドルか何かだったっけ?と首をかしげるも、まあいいや、伝えたいメッセージは音楽に込めるのがアーティストってもんよねと、怒涛のレコーディングしてたな。毎週2曲書くのがノルマな日々。はん、それ以上の事とうにやってきてるわ超余裕。
愛猫が甘えてきた
仰向けになって腹の上にノーパソが私の執筆スタイルです
スピーナという曲をレコーディングすることになった。私のデモは夜中の遊園地やサーカスのような愛らしいバラードだったのが、ドラマ「ただいま満室」の主題歌になったことでそちらに合わせてハネッハネのキャッピキャピなあっかるーいポップスになった。後日、芸能人御用達の歌えるバーでお会いしたTUBEの前田亘輝さんに「なんでこの歌、普通にバラードのまま出さなかったの?もったいない」って言われた。あ、わかってくれるって思ったな。すけべだけどいい人だった。なつい。その思いは消えることなく、ライブでやる時は元のバラードスタイルでやってたりする。一部、大人の事情で変えざるを得なかった歌詞も、当然元のままで。ポップスとは信念や真実や怒りや性や陰のようなものを薄めて砂糖で甘くして食べやすい大きさに均一に美しく切り分けねばならないのだろうかという疑問はこの後、長きに渡り続いてゆくこととなる。
私が8才の時、誕生日にもらったのがスピーナ。コアラのぬいぐるみの女の子だ。デパートのぬいぐるみ売り場は動物園みたいで、乗れるキリンや象のぬいぐるみにうっとりとため息とこぼしつつ、足が止まったはコアラのコーナー。棚の端から端までびっしり並んだコアラ達、女の子はピンクの花柄のワンピース、男の子はグレーの燕尾服っぽいのをきちんと着ていて、「・・・なんか。」と子供ながらに違和感を感じた。まんまるい黒いお目々、なすびみたいな形のお鼻、だのにその下にはピンクのフェルトで出来た口。半月状の、昔の漫画のにっこり笑顔の口。違和感が最高潮。
ひとり、にっこり口が取れかかった子がいた。取れないのかな、ひっぱった。周りは取れそうだけど真ん中に接着剤すごいついてて取れそうにない。家に連れて帰ってハサミで切ってあげるね。抱きしめた。本来の美しさを覆い尽くさんばかりの人間の身勝手なコラージュみたいなデコレーションに、静かに泣いているように見えた。「その子にするか?」父の問いかけに神妙な面持ちで頷いた少女は、父が名付けた名前を呼び続けて大人になり曲を書いたはスピーナ、それは後に3人娘のバンド名にもなる。
ついに愛猫にマウントを取られる。
猫がお尻を向けるのは、信頼の証らしいのでそこはうれしいけどね。邪魔にゃね笑
スピーナ
3人娘なら元気いっぱいプレイだ。ハネッハネのハネのリズムには苦戦していたようだけど、私なら余裕。ハネ大好き。好きすぎて涙が出る、というようなセンシティブで優しい温かい愛を、アップテンポな中にもどうにか込める。そして何より美しいのはストリングス。calm soul でもそうだったけど、4,50人くらいの大人数で奏でるストリングスはもう圧巻で感動した。弦が一番よく聴こえるってことで、コンソールの上のロフトみたいな場所で聴いてた。私のただの無垢な思いを形作るのに、こんなにもたくさんの人達が集まって音を鳴らしてくれる、その場を作ってくれたプロデューサーやavexなスタッフの愛にまた感動して泣くという、もう、涙なみだのレコーディングだったな。
PVは夜の遊園地、今はなきドリームランドのメリーゴーラウンド前。最高だよね、夜の遊園地って。茄子黒髪の色をした夜空に、子供に夢を見せようと優しく光る電飾。大人になった私をそのままに、8つの頃に帰してくれた魔法のかかったあの夜。ラブい。でもこの頃の私、痩せすぎ。デビッドボウイもびっくり。ちゃんと食べてと言いたくなるけど、普通の女の子以上に食べていることは周りのみんなは知ってたよね。ハードゲイナー?食べてもすぐ出るの、1日3回くらいのペースで。え、聞きたくない?うっそ、そんなこと言わないで、おならもよく出るよ。
”あなたに服は似合わない 脱がして捨ててしまいましょう
裸になったあなたを抱くと ひとつになれた気がしたわ”
動物の何が美しいかって、そのままで完璧な美であるというところ。被毛なんてまさにそれなのに、なんでそれを隠すようにお洋服なんて着なくちゃいけないの?意味がないどころかマイナスじゃんか。誰がハッピー?着せた人。コアラな彼女は絶対にそれを望んでない。脱がして捨てた。人工的カマボコ(フェルトの口)も取った。口がなくなった。でも時すでに遅し、長く嘘っぱちの口を付けられていたせいで、本来のそれがほぼなくなってた、口のきけない女の子、それでもあなたは美しい。誰にも見せない私をずっと側で見守っていてくれてありがとう。涙の夜を支えてくれたあなたの優しさを、誰かにも与えてあげてほしい。私が死ぬ時は、一緒にいた日々を思い出して、二人で見上げた夜空、あなたの膝に顔をうずめて泣いた日、「すぴー!大好きーーー!!」と叫んで抱きしめた、8つの頃の私を、世界にはまるでふたりだけだった、小さなあの部屋を。
LOVE POTION NO.69
プロデューサーが選ぶ曲はどれもシングル張れる曲ばかりだったから、スピーナのカップリングにこれが選ばれた時は正直「わかってんじゃん」とほくそ笑んだ。次はこの曲にするよ、と発表する時、3人娘を並ばせて、司会さながら口で「ドゥルルルルルルー、デン!」とドラムロールを歌うプロデューサー。ウケる。緊張するんだかしないんだか笑。で、曲名を言うんじゃなくてそのデモ曲をかけるの。私はだいたいいつも自分の曲だろうなと思っていたんだけど、いざ選ばれたらやっぱりうれしくて、イントロのドラムが流れた瞬間「いえーーーあ」と両手をあげたものだ。
作曲スタイルがメロディと歌詞の同時進行フルサイズからの楽器入れな私には珍しく、曲先で作った歌。それまでバンドサウンドというものを知らなかった私なりに、バンドっぽい曲っていうのを意識して作った。これほんと最高クール。ミュウジシャン仲間にも絶賛されるわ、悪いけど♡ベースはRubiiの頃からお世話になってる美久月千晴さん。やだもうほんとに素敵なプレイしてくれるぅ。サビのフレーズ、さり気なくメロディに寄ってくるところとか最高じゃない?ギリギリのとこ突いてくるよね。ドラムならこの頃のショーコのタイトでジャストなプレイスタイルが大好き。迷いなく振り下ろすコンパクトなスネアがほんとに好き。
コーラスガールスタイルも大好きな私は、せっかく女の子バンドだしコーラスはガシガシやってもらうぞと思っていたので、演奏しながらコーラスするのは大変だろうなと思いつつ「んー、そこはもっとこういう感じで歌ってほしいな」と要望をきっちりお伝えしていた。だからライブでやると最高にカッコよかったよね、ラブポ。いえいいえい、いえい、いえー。
歌詞なら当時の恋人の浮気に勘づいてのもの。あーあ、長く付き合ってるとやっぱりこうなっちゃうのかな、もう私の服を脱がす時に昔ほどあちこち熱くならないのかな、私の体がもっと肉感的でエロティックであればよかったのかな、男ってみんなそうなのかな、新鮮味と興奮と狩猟本能な生き物なのかな、私なら一度好きになると深く愛するし日々愛おしくなるしいつもの景色が時を重ねて老いる様まで愛でることが好きなんだけど。
あなたは違うのね、だってもう見ちゃったもん、エロサイトをブックマークしてるのを。そのサイトも見たよ、ナイスなバディ子の大きな胸を下から撮ったなんとも淫靡な写真とかあった。ついでにケータイのメールも見たよ、土日のあなたに会いたいって言われてたね、もういいよ知らない、そっちいけばいいじゃんって正面切って言えば泣きすがるその無様な姿に98ぱーくらい一気に冷めた愛情はその後2,3年程のらりくらりと停滞しつつもその実確実に下がっていき、家族ぐるみの付き合いなんていうものも華麗に蹴散らして終わることとなる。男なんかいらんわ、音楽の方が好きだわ、しょうもない嘘つかねえもんって歌。
” いつでもあたしだけ 見ててほしいだけなのに
それはそんなにも 無理なことですか?
あいにくだけど そうゆうの燃えちゃうの”
燃えねえよ、アホか。そんなマゾヒストでもメンヘラでもないわ、むしろただの一途な女の子じゃボケ。だけどあなたのあまりにもなデリカシーのなさと、私とはをまるでわかってくれていないことが悲しくて悔しくて、あなたにとっての私とは代えのきく女ってことに虚しさが怒涛で、そんなことでつまづくような女じゃないから!って気を強く持ってないと崩れ落ちるくらいだからだよ。
こうなってはもう、パソ子をどかして愛猫に腹を譲るしかない。ドヤ顔だな。
ほんっと、エメには敵わないよ。今!甘えたいの!今撫でて!はい、ただいま!!
次回は3rdシングル、ジレンマ & sixteen。週一で書いていきたい気持ちでいっぱい。ライブまでには終わらせたいよぅ。
ふぃー。今日も長かったねー。疲れたでしょう。
最後まで読んでくれてありがとう。好き。