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太陽、あたしはここだ。

表裏一体だ全部、自分で選んでいいんだ、それを信じていこう、いける。超えなくてはならない壁が立ちはだかった時、人は己に向き合い、内なる生命力に問いかける。超えられるか?いやどうだろう、かなりキツイな、いける気もするね?いやでも恐らくは何度もこけて傷だらけになるだろな、でも超えたい。でも超えたいんだ、ああ、この想いには抗えない。私の人生はいつだって、その繰り返しだった。やって後悔、やんないで後悔の二者択一。ふっ、そんなもん、どっちがいいなんてわかるでしょう?って、青い舌をちらつかせて歌うあの子は今も、この胸に生きてんだ。


(目を閉じて)


いけないことをした。だから手首を切った。死ぬ気はなかった。きちんと消毒して包帯を巻いた。ひとつ、孤独になった。

また、いけないことをした。だから前よりも深く手首を切った。死ぬ気はなかった。もうひとつ、孤独になった。

何かがあった。なぜか錐と金槌で心臓に穴を開けた。死んでもいいかなと思った。孤独が近づいていた。それとも私が向かっていったのだろうか。

何かがあったのかどうか思い出せない一人の夜、一番好きなドレスを着て遺書を書いた。エメのお世話の仕方を書いて、ケージの上に置いた。処方されていた薬をお酒で飲み込んだ。死ぬかもしれないなと思った。でももう、眠りたかった。ベッドに入って、エメを見ていた。エメも私を見ていた。私の可愛い子、ごめんね。明日になれば、ママのママが来るから大丈夫だよ。可愛いなぁ。あくびしたの、そう。眠いね。ママも眠くなってきた。寝ましょ。おやすみ。

久しぶりに深く眠れたはずのその日からの記憶は曖昧で断片的で、半分になった視界に見えたものは東京での最後の家。引越し業者のお兄さん達と、ゴミの山。CDとキーボードとギターとベースとピアノとタンバリンとマイクと、ローラアシュレイのシャンデリア。キラキラ光るゴミの山を、抱っこしたエメとただ見ていた記憶だけが鮮明に残ってる。少し肌寒かった気がする。煙草がおいしかった。

ワンダーなトリップに出た日あとにした、あの日の家に帰ってきた。眠った、とにかく眠る日々だったと思う。エメがいた、ずっとそばにエメがいた。窓から見える外の世界は明るくて、さながらシャボン玉の中で息をしていた私の目に映る虹色の膜越しのそれは明るくて、眩しすぎて、長い間直視できなかったように思う。

それから色んな事があって、色んな人に助けられながら生きてきた私はいつしか、もう一度あなたに会いたいと思った。私に会いたくない人もたくさんいるだろう、病気したんだ?そのまま死ねばよかったのにと思う人もいるだろうでも、この想いには抗えない。私まだ生きているから、生きているうちにあなたに会いたい。いつか死ぬ時が来るそれまでは、世界は私のものだから。太陽が眩しいぜこのやろう、いいよ、すごくいいと思う。君はそうじゃなきゃ。

時間にしてだいたい5,6年(だと思うけどちょっとあやしい、まあいっか)、シャボン玉の中から世界を見つめるだけだった私の胸の中には、手鞠の様に弾みながら生きたあの頃の私がいる。万華鏡のようにキラキラと笑って泣いたあの日の私がいる。それは、今これを書いている今の私を笑顔にさせる、愛おしい私自身だ。この手で私を傷つけた、怖かったでしょうにごめんね、でももう一度愛させてくれ、大事にするよ。シャボン玉をつん、と指で触れれば、流れ出す時間と風。


(目を開けて)


世界は美しい。あなたがいるこの世界は、美しい。Hello, hi!会いに来たよ。

おしまい。



読んでくれてありがとう。長かったねー、疲れたよ。ビールで乾杯しよう。






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