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誰かは誰かの神様だ
一年が過ぎ去るのが早くて、大掃除に普通の掃除くらいが精一杯。あっと言う間に新しい年が来て、何なら次の年、その次の年も渋滞してるんじゃないかというらいあっという間に来るので、一年の区切りって必要? って思うくらいだ。
でも、やっぱり区切りって必要なんだな。
区切りがあって、終わりと始まりがあると、人って何となく次に向けてって考えるんだなと。
淡路島に大好きな宿があって、大好きすぎて片道4時間かけて時々泊まりに行くのだけど、今年はなかなか長い休みが確保できなくて、年越しの日程になった。
その宿には酵素風呂があってその宿に泊まる時には毎日欠かさず入るんだけど、そこのお姉さんと話してたときのこと。
お姉さんは、私の話が今の自分に刺さったらしい。
お姉さんは、「新しい年が来るから何かを始めないといけない」と半ば焦り気味に、でもなんとなく周りに急かされているだけで、自分は何をしたらいいんだろうという戸惑いを漂わせながら私に呟いた。
周りがネガティブすぎると前向きなことに足を引っ張られるけど、周りがポジティブすぎると後ろ向きなことはいけないことのように感じてしまうのだろう。どちらかというと後者のような雰囲気の中で漂うお姉さんはこの年の区切りという時期がなんだか居心地の悪いものだったのかもしれない。
私は旅行者で彼女達の生活の中にはいないから、つい本音をもらしたのかもしれない。
いつもここの宿に来るといらないものが削ぎ落とされた気がするのは、住んでいる場所にまとわりつく家や家にある余計なものだったり、子どもたちの母、とか夫の妻という肩書き的なものを地元に下ろして来ているからなのだろう。
旅先にいると、今のままの自分で控えめに言っても最高だと思うし、自分のしたい全てがもう自分の中にある、と思う。
そんな素軽さで、彼女に、
「本当に新しいものってこれから探さなきゃいけないんですかね?」と投げかけた。
「え」
私の頭の上あたりで作業をしていた気配が止まった。
「実は、自分がやりたいことって、これから探すものじゃなくて自分で実は持っているけど、たまたま今はお金が稼げるものじゃなかったり、ビジネスとしてない形態だから気づいてないだけど、そういうものの中からお金をもらえるものが沢山生まれてますよね。今からやらなきゃいけないものって、必要に差し迫られてやりたくないけど目の前に来てる、みたいなもので、それ以上はわざわざ見つけるものじゃない気がするんです」
自分がやりたいことでも一見お金が入らないものは無駄ということになってしまうのかもしれない。
お姉さんは、しばらく沈黙したあとで、
「ささるわー」と苦笑いしていた。
「今日、朝、かなえさんが入るって知らずに来たけど、こういうことってあるんだねえ」
「誰かは、誰かの神様なんでしょうねー。というか、神様が私の口を使って必要な言葉や必要なことを伝えてくれるんでしょうね」
年末じゃなければ、私が客じゃなきゃ、彼女には響かなかっただろうから、年末や年度末という区切りは、全員のもとに等しく訪れる変化のチャンスなのかもしれない。
私はと言えば今まで逃げ回ってきたことをいよいよしなければいけない状況になって、自分のモチベーションをどうやって持ち上げるか考えているところ。人生一度きりしかないし、絶対やらなきゃいけないことなら、こじれた強制執行みたいなものよりは、笑顔でワクワク飛び込んで行きたいなあ。
割り箸メッセージも今の私にGOを出してくれている。